218 マスクは世界を救う⁈
「ナナミさんこのマスクって冒険者には売れるけど一般の人はあまり買わないよね」
冬になった頃からマスクの売り場を広げてるけど売り上げ的には場所を取り過ぎてるかもしれない。
「なんで冒険者にだけ売れるんだろうね」
そうなんだよね。日本だと冬になると急に売れるようになるマスクだけど、ここでは売り上げは一定している。
「粉塵よけになるって言ってたよ」
「そっかぁ。どうせならウイルス対策に使って欲しいんだけどね」
「ういるす?」
クリリがよくわからないみたいで首を傾げてる。ウイルスはこの世界では認知されてないから仕方ない。
「そう冬になると風邪とか多いでしょ。うつらないためにもうつさないためにもマスクが必要だってこと」
「それってマスクしたらうつらないってこと?」
「まあ、うつりにくくなるからクリリも咳とかする人がいたらマスク着用した方が良いよ。マスク、手洗い、うがい。これを気をつけてたら風邪にはならないから」
「毎年、孤児院で風邪が流行るんだよ。一人なるとばっと広がって、ほんと大変なんだ」
「集団で暮らしてるとうつり易いから、マスクして外出したら手洗いとうがいを徹底して、あとは空気が乾燥してるのもダメだからね。そういう時は濡れたタオルとか部屋の中に干したりすると良いよ。あと風邪になってる人もマスク着用させてね。うつさないって事が大事だからね」
一応の風邪対策は教えた。多分クリリなら今の話を孤児院に広めてくれるだろう。風邪が全部なくなることは無理だけどうつらないように対策するのは悪くないと思う。
『マスク世界を救う』って広告で売りたいくらいだよ。
「マスクが風邪予防に良いのは知ってるけどマスクって息がしにくくなるからあんまり好きじゃないな」
タケルの言うこともわかる。私も正直マスクはあまり好きではない。偉そうに言ってたがもといた世界では化粧をしてない時に顔を隠すのに使ってたくらいで風邪予防に使ったことはない。タケルと同じで息苦しいから好きじゃなかったのだ。
でもそれは日本の医療は風邪で死ぬことはないって知っていたからで、この世界とは違う。この世界では風邪で死んでしまうこともあるのだから予防は必須だ。その予防によって風邪による死亡者数が減ってくれれば万々歳だ。去年もマスクは売ってたけど、まさか風邪で死ぬ人がいるとか思ってなかったから隅の方に置いてあるだけだった。
「確かにあんまりおしゃれじゃないけど、そのうちこれが流行るかもしれないわよ。仮面舞踏会ならぬマスク舞踏会っていうのも面白そうだわ」
エミリアは今日はプリーモさんと会談をしていた。プリーモさんも前から化粧品や雑貨に興味があったらしく、エミリアが店を出すと聞いて話しに来たのだ。でもプリーモさんってどこから情報を得てるんだろう。おととい決まったのにもう現れるなんて絶対におかしい。
「そうですね。病気の予防にもなって舞踏会にも使えるって良いですよ」
プリーモさんは急にマスクに興味が出て来たみたい。さっきまではスルーしてたのに、手にとって眺めている。まさか『マスク舞踏会』を本気にしてないよね。それだけは遠慮したいんだけど......。