213 ぜんざいを食べよう
「ティーグル! 」
「にゃ、にゃにゃん、にゃー」
何を言ってるのかサッパリわからないけど可愛い。必死で何か訴えてるみたい。
「タケルはまだ帰って来てないね」
エミリアが椅子に座りながら呟く。タケルは突然現れるからどうかな。
「そうだ! クリリお土産、今のうちに渡しとくね」
私はダンジョンで採れた魔石を数個ほどクリリに渡した。
「わー! ありがとう」
お土産を何にしようか悩んだけど、コレットさんに言われて魔石にして正解だった。
クリリは同じように見える魔石を一個一個手に取っては眺めている。クリリには違いがわかるのだろうか。
「クリリは何を持ってるんだ?」
突然タケルがクリリの後ろから現れた。別に悪い事をしたわけでもないのにクリリも私もビクッとなった。
「へ〜、魔物の魔石か。あれ、ナナミが持ってるのも魔石か? そんなにいっぱいどうしたんだ?」
「えっと、これはちょっとそこで....」
アワアワと言葉を探すがいきなりだったので上手い言い訳が思いつかない。
「ダンジョンに行ったのよ」
「そう! ダンジョンにって....エミリア! タケルには内緒じゃなかったの?」
結局エミリアが本当の事を言ってしまった。まあ、良いけどね。
「言うと着いて来そうだったから言わなかっただけよ。もう行って来たんだから話しても良いわよ」
「ダンジョンだって! なんで知らせてくれなかったんだ! 俺だって行きたかったのに」
「タケルは強いんだから一人で行けば良いでしょ」
「ダンジョンは一人で行っても楽しくないじゃないか」
どうやらタケルはみんなとダンジョンに行きたかったようだ。それならかわいそうな事しちゃったかな。
「私はタケルと一緒だと全然楽しくないのよ」
エミリアってばいくらなんでも本人に直接そんなこと言っちゃダメだよ。
「俺と一緒だったらあっという間に魔物片付けるから楽だぞ」
「それが嫌なのよ。ダンジョンに行って戦わないで、タケルの後ろにいるだけで何が楽しいのよ。もう二度とごめんだわ」
私からしたら楽してドロップ品を手にする事が出来るんだからラッキーってなるんだけど、エミリアみたいに自分で戦える人は違うんだね。
そっかぁ。それでタケルに内緒だったんだ。コレットさんも戦うの楽しそうだったからタケルに内緒だって行ったとき何も言わなかったのだろう。
「まあまあ、タケルも落ち着いて。今度はクリリも連れて行けばいいじゃない。時間がなくて途中までしか行けなかったのよ。.....そうだ! 今、ぜんざい作ってるのよ。食べるでしょ」
「食べ物さえ出せば機嫌がなおると思ってるのか?」
タケルがムッとした顔をした。
うっ、思ってたよ。困ったなぁ。
どうやらダンジョンに行けなかった恨みは食べ物ではおさまらないらしい。
「ぜんざいって何なの? この良い匂いと関係があるの? タケルが食べないんなら私が食べてあげる」
エミリアがキラキラさせた目をして私を見る。良い匂いというのは小豆を煮ている匂いだろうか。部屋中に小豆を煮る甘い匂いが漂っている。砂糖はまだ入れてないのになぜ甘く感じるのだろうか。
「誰が食べないって言った。ダンジョンに行った上にぜんざいまで盗る気か? 」
あっ、タケル食べるんだ。意地はって食べないのかと思ったよ。仕方ないなぁ。タケルには特別にお代わりを許してあげよう。