表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/314

212 留守番クリリークリリside


 一人での店番は初めてではなかったが、タケルさんにも内緒となるとドキドキが止まらない。

 

「ナナミさん大丈夫かなぁ」


 エミリアのやつ強引だから心配だよ。一緒について行きたかったけど女子だけとか言って店番を押し付けられてしまった。まあ、エミリアもコレットさんも強いからナナミさんに危険はないとは思うけど。


『カランコロン』


「いらっしゃいませ〜」


「クリリ、ナナミさんはいるか?」


 商業ギルドのショルトさんだ。今日来ることは聞いていない。


「三日くらい留守になります」


 俺が言うとショルトさんは困った顔になった。


「何かあったんですか?」


「デンタクのことで話があったんだがまた三日後に来るよ」


 デンタクとは電子計算機のことだ。ショルトさんの許可が出ないのでまだ店では売ってない。いつでも売りに出せるように在庫は完璧なんだけどな。


「えっ? 売って良いのなら今日からでも売りたいですよ。ナナミさんも自分がいない時に許可が出たら売ってくれって言われてます」


 ナナミさんもまさかダンジョンに行く事を予想してデンタクを沢山用意していたわけではない。ただタケルさんが突然どこかに連れ出すことが(転移魔法が使えるから本当に突然なんだよね)あるから、その時のための保険だって言ってた。

 でもこれは言い訳だって知ってる。この間くじが引けるって言って沢山商品を買ってたから多分それでデンタクをいっぱい買っちゃったんじゃないかなぁ。ナナミさんは在庫が沢山あるのが気になるのか早く売りたくて仕方がないみたいだった。


「もしかしてデンタクの在庫があるのか? それは良かった。二百、いや三百ほど城の方で使う事になったんだが在庫はどのくらいある?」


「三百ですか? 全く同じものでなければ揃います」


「それで良い。ダメだったら商業ギルドの方で買い取ろう。あと店で売るのはもう少し待ってくれ」


 ショルトさんに急かされたので倉庫になっている隣の家に取りに行く。去年ナナミさんが買った隣の家はいずれはティーグルの部屋にするそうだが今は倉庫になっている。

 いわゆる可愛い系のデンタクもあるが城で使うのならそれは避けた方が良いだろう。三百ほど黒い色のデンタクを選んで袋に入れた。


「それにしてもナナミさんは三日もタケルさんとどこに行ってるんだ?」


 城宛に請求書を書いているとショルトさんにナナミさんの行き先を聞かれた。どうもタケルさんと旅行に行ってると勘違いしているようだ。黙っていようかと思ったが何かあった時の為に、ショルトさんには本当のことを話した。


「はぁ? ダンジョンに行っただと! それもタケルさん抜きとは......大丈夫なのか? コレットのやつ反対されると思って何も言わずに行ったな」


 コレットさんはショルトさんからナナミさんの事を守るようにと頼まれて働いているようで、普通の従業員とは違う存在だというのはナナミさん以外の人はみんな知っている。

 今回のダンジョン行きはやっぱりコレットさんの独断だったようだ。『ダイエット茶の種』がそんなに欲しかったのだろうか。女の人って太ってもいないのになんで痩せたがるのだろうか。まあナナミさんは出会った頃より少しポッチャリしてきたような気もしないでもないけど.....。


「それにしても『ダイエット茶の種』とはな。あれはなかなか手に入らないから貴重なんだ」


「そんなにすごい魔物を倒さないといけないんですか?」


「いや、アブラブラーはそんなに強くはない。ただ数が多い。一匹見つけたら何百匹いるかわからないと言われている。それを全滅させないと手に入らないんだ。ダンジョンでアブラブラーに出会っても大抵何匹か倒したら、次に進むのは簡単なんだ。そういうわけでわざわざ全滅にしないから手に入らないんだ」


 アブラブラーかぁ。前に冒険者の人が黒くてテカテカ光ってる不気味な虫の魔物だって言ってたっけ。ナナミさん虫が嫌いだって言ってたけど大丈夫かな。そうだ! くじで貰えたって言ってた殺虫剤を試してみたらいいのに。あれは結構効くんじゃないかなあ。でもナナミさんって案外抜けてるから、殺虫剤持ってる事忘れてるかもしれないな。


「じゃあ、今日は急ぐから帰るけどナナミさんが帰ってきたら知らせてくれ」


 ショルトさんが帰るとまた一人になった。ティーグルは寝てるし静かだ。昼からは孤児院から手伝いが入るからそれまでは一人で頑張ろう。

 

「クリリくん、この赤い口紅とこのピンクの口紅どっちが似合う?」


 最近は化粧品も売るようになったんだけど、こういう質問は俺に聞かれてもさっぱりわからないから聞かないでほしい。俺が困るのをみたくてわざと質問してるんじゃないかと被害妄想になるくらいだ。コレットさんだったら「どちらもお似合いですよ。用途に合わせて使われたらどうですか」とか言って二つとも売ってしまうが俺には無理だ。だって口紅をなぜつけるのかがわからない。そんなものつけない方が良いに決まってる。口にあんなのつけてたら食事するときに困るじゃないか。女の人って本当にわからないよ。


「クリリくん、じゃあこっちのアイシャドウはどっちが良い?」


 はぁ〜。ナナミさんたち早く帰ってきてくれないかなぁ〜。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ