199 召喚魔法でカレーライスを!
エミリアが私のカバンを見つめているのに気付いたのはユダナ国にいる時だった。
「ハンバーガーまだあるの? ハンバーガー次第でクリリにジャンプ教えてあげるわよ」
なんとエミリアはハンバーガーに魅せられてしまったらしい。トリプルアクセルを教えてくれるのはとってもお得だが、どうせならもっと頑張っていただこうと考えた私は悪くないと思う。
まさかその結果、エミリアを預かることになろうとは....。ちょっとだけクリリとスケートを滑ってもらうつもりだっただけなのに。エミリアは私の部屋の隣の部屋を自分のものでいっぱいにして
「気に入ったからしばらくここで暮らすわ」
と勝手に決めた。見かけはともかく自分よりずっと年上の女性を追い出す事は出来なかった。
エミリアは『マジックショプナナミ』の商品を一つ一つ手にとって、ほ〜っと息を吐く。
「私もいろんな国を旅したけど、見たことのないものばかり。このオールド眼鏡って新聞に載ってたけど、まだユダナ国には数人しか持ってないそうよ。私も買っておこうかしら」
いくら何でもオールド眼鏡はまだ早いよ。年齢的には必要だけど、幼児体型のエミリアには当分オールド眼鏡の出番はなさそうだ。
「タケル、このカレーってアレだよね」
「ああ、エミリアが召喚できそうだって言うから任せたのに、あんなものを召喚して....。思い出しただけでも吐き気がしてくるよ」
「タケルの絵に問題があったのよ。私は悪くないわ」
カレーを召喚したらしい。召喚魔法って奥が深い。異世界の物でも召喚できるなんてすごいですねって言うと、勇者だって異世界から召喚するんだからやろうと思えば出来るのよって言われた。
「じゃあ、エミリアさんにラーメンとか召喚してもらったらよかったのに」
タケルはふーっと息を吐いてから口を開いた。
「さっきも言っただろ。カレーを召喚してもらったら◯◯を召喚したんだよ! どうやら見たことのないものは召喚しにくいらしい。絵とか説明で分かるものならって言ってたが.....」
うっ、それは勘弁だね。よりにもよってカレーだったのがまずかった。カレーを知らない人に絵や説明で分かるわけないよ。
「って事は、今なら召喚出来るの?」
「出来なくはないけど、異世界の物は一年に一回くらいしか召喚するのは無理。とにかく大変なんだから。カレーだってタケルが鬱鬱して鬱陶しいから仕方なく召喚してやろうって思っただけで、今はここで食べれるんだから、わざわざ召喚しなくていいでしょ」
確かにわざわざ召喚してもらうほどカレーが欲しいわけじゃない。でも電子レンジとか欲しいよ。あっ、ダメか。電子レンジって電気がいる。よく考えたら欲しいものって電気が必須な物が多い。炬燵も電気がいるし。今なら家賃代って言ったら何か召喚してもらえそうなのに、何も思いつかないよ。何かないかな〜。