194 前方空中回転?
ユダナ国のスケートリンクはとにかく広くて一周するのにも5分かかる。滑ってこれだから歩いたら何分かかるのか.....。
クリリは初めは転んでたけどコツをつかんだようでスイスイと滑っている。
私たちが滑っているとチラホラと滑る人が増えて来たけどスケートリンクが広いからぶつかる事もない。身体もあったまってきたしそろそろあれでもしてみるか。
「ナナミさん本当に滑れたんだね〜。くるくる回って目が回らないの?」
クリリが言ってるのはスピンだ。回るだけだからまあ慣れればそんなに難しくないし目も回らない。
「クリリもやってみるといいよ」
クリリは直ぐにスピンが出来るようになった。ジャンプもきっと簡単に真似してくれる。ただ私のは明らかに失敗作の一回転だから、クリリにはトリプルアクセルができるようになって欲しいな。
「クリリ、そのスピンを空中で出来る? 回転は三回位にして」
「それって全然違うんじゃないの? 跳んで回ったらいいのかな?」
「そうそう、回転したらいいの」
クリリは回った。着地も転ぶこともなく見事だった。うん、凄いよ。見たこともない回転だったけどね。前方空中回転。それも三回も回ってくれた。もしかして私の説明に問題があったのかな?
「ナナミさ〜ん、出来たよ〜三回転!」
クリリが手を上げて喜んでいる。
あんなに喜んでるのに違うって言えないよ。周りで滑ってた人も手を叩いてクリリを褒めているし、まあこれでもいいか。とにかくプリーモさんのホテルではクリリに頑張って貰おう。
「クリリはなんでもできるなぁ。トリプルアクセルも教えたら出来そうだな」
「だよね〜。本当になんでも出来るから羨ましいよ」
タケルもスケートは滑れるみたいだけどジャンプはしたことがないそうだ。どうせならクリリには音楽に合わせて滑ってもうのもいよね〜とか言ってるとドンっとタケルにぶつかって来る物体があった。
「タケル! タケルでしょう? やっと来てくれたのね〜待ってたわ〜」
とても綺麗なエルフのような耳をした女の子がタケルに抱きついてきた。滑って来たから体重がもろにかかったみたいでタケルは彼女を支えきれなくて二人とも見事に転んだ。
「った〜! 何するんだ。その抱きつく癖はなんとかしろって言っただろう?」
「へへへ、ゴメンねタケル。久しぶりに見たから懐かしくてつい抱きついちゃった。その人は彼女なの? 誤解しないでね、タケルとはなんでもないから」
「えっ? 彼女じゃないから、全然気にしてないから」
なんか見たこともないほど可愛いんだけど。色も雪のように白く、黄色い髪の毛は軽くウェーブがかかって青い瞳は宝石みたいにキラキラと輝いてる。
残念だったねタケル。恋愛感情はないってよ。