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181 国一番のパン屋さん


 パン屋のゴングさんは目の前に並べられた袋に入ったパンを見て戸惑っているようだ。


「これ全部パンなのか?」


 ゴングの前にはいろいろな形のパンが並べられている。私が百均で買ったパンたちだ。


「そうですよ。菓子パンと呼ばれるものが多く、このまま何もつけなくても美味しいですね。こっちの食パンは焼いたり、ジャムや蜂蜜を挟んで食べるのもいいし使い勝手が良いです」


 私はパンを指差しながら一つ一つ説明する。イーストを買いに来たゴングさんに使い方を説明し、出来ればこういうものを作ったらどうかと提案したのだ。


「も、もしかしてこのパンをこれから売っていくのか?」


 焦ったような声でゴングさんは私に詰め寄る。


「いえ、そんな予定はないです。売るつもりならはじめに売ってますよ」


 私は手を振って否定する。パンが主食のこの世界でパンを売る予定はない。そんな勇気も気概も私にはないよ。


「本当だろうな」


 ゴングさんは疑い深い目で私を見る。


「本当ですよ。信じられませんか?」


 少しの間、二人で睨めっこだ。私は本当にパンを売る気はないので負けないよ。ゴングさんはしばらくすると目を閉じて息を吐いた。


「あんたは本当の事を言ってるようだが......。いつ気が変わるか分からないだろう? これだけの商品だ。商売人だったら絶対に売る」


 確かにね。パンだけしか買えないんだったら、売ってたよ。稼がないと生きていけないんだからね。 でも他にも売れる商品がいっぱいあるんだから、わざわざパン屋さんとケンカしてまで売らない。


「ふふ、売るほど在庫が無いからですよ。それに焼きたてのパンには勝てないと思います」


 いくらでも百均で買えるけどゴングさんに納得して貰うために在庫が売るほどはないことにした。それを聞いてもゴングさんは難しい顔だで頷くだけだった。


「まあ、焼きたての方がパンは美味しいと言うのはわかる。だが、この『いーすときん』で本当にこんなに柔らかいパンが出来るのか?」


「出来ますよ! 私が作った事があるパンはロールパンとクロワッサンと食パンとメロンパンくらいなので、他のパンは自分で研究してくださいね」


 作り方はさっき教えたから大丈夫だろう。素人なら無理だろうけど、ゴングさんはパン職人になって二十年だって言ってたからね。


「どうしてこんなに教えてくれるんだ? 俺はこの店の常連でもないし、あんたの得にはならないだろう」


「昨日アンパンを作って思ったんですけど、パン作るのって重労働なんですよ。昨日はこれからは自分で作るとか思ってたけど、柔らかくて美味しいパンが買えるんだったらそっちの方がいいでしょう?」


 日本だったらパン焼き器があるから、楽に作れたのに本当に残念だ。ゴングさんには是非頑張って欲しい。


「俺は、このレシピでガイア一のパン屋になるぜ!」


 ゴングさんが握り拳を上げて宣言した。でもガイア一って......。


「ゴングさん、ガイアにある三つしかないパン屋って全部ゴングさんの親族じゃなかった?」


 コレットさんが呆れたような顔で指摘する。

 やっぱり〜。もう、目標が低すぎるよ。せめて国一番のパン屋を目指して欲しいよね。


 










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