179 あんぱんを作ろう 3
パンの焼ける香ばしい匂い。この匂いは罪だと思う。これのせいでダイエットに成功できた試しがない。口の中が渇いてくる。うーん、幸せだ。お米の炊ける匂いも好きだけど、パンの焼ける匂いも大好きだ。
「焼けてるとこが見えないのが難だな。プリーモに言ってみるか」
タケルが残念そうに呟く。私も中が見えないのは困ってたので、プリーモさんが解決してくれたらいいなあと思う。
だんだんとパンが膨らんできつね色になる所は是非クリリたちに見せてあげたい。焦げるのを防ぐこともできるしね。
「十五分たったから開けるよ」
オーブンのドアを置けると煙がモワッと立ち上がる。鍋掴みでパンを乗せてる鉄板を取り出す。
「わ〜美味しそう。見たことのないパンだね」
「パンの上に黒い粒を乗せてるのがいいわね」
日本で売ってるあんぱんと同じに黒ごまを振ってみたけど、好評のようで安心した。虫のようだって嫌がる人もいるから、少し心配だった。
「さあ、味見してみて! でも熱いから気をつけてね」
クリリはせっかちさんだからまた火傷したらいけないので注意した。
「わかってるよ。グラタンの時みたいにはならないよ」
クリリはそっと手を伸ばしてあんぱんを取る。クリルが取ったのを見てみんなも手を伸ばす。
クリリはそのままがぶりとかぶりついて
「アチッ」
と叫んだけど火傷はしなかったみたい。それを見てタケルはあんぱんを二つの割って、冷ましてから口に入れる。ベスさんとコレットさんもタケルにならった。
「美味しい! パン生地も柔らかくて最高だわ」
「このあんこっていうのも甘くて美味しいよ。これって去年食べたお餅にも入ってたよね」
「クリリはよく覚えてるね。ちなみにぜんざいにもあんこは使ってるからね」
「ぜんざいも美味しかった。また食べたいなぁ〜」
「クリリは去年、お餅が喉に詰まりそうになって大変だったじゃないの。それでもまた食べたいの?」
タケルがいたから良かったけど、死んじゃうかと思ったよ。お餅は今年も売りたいけど、食べ方に注意するように言わないと売れないね。
「よく噛まなかったから失敗したけど、今年は大丈夫だよ。きな粉餅も美味しいし、絶対今年も餅は食べるよ」
クリリは最近タケルに似てきたような気がする。
あんぱんは素人の私たちが初めて作ったにしては美味しくできた。
少し固いパンも不味くはないけどたまには柔らかいパンを食べたい。オーブンがあるからこれからは食べたい時に焼きたてパンが食べれる。
後はお米が欲しいかな。温めて食べれるお米も良い米を使ってるから美味しいけど、炊きたてには敵わない。レベルアップしたらいつかはお米が買えるといいなって思う。日本人にはやっぱり米だ。
そういえば最近レベルアップしないな。ハードルが段々高くなってるみたい。いっぱい商品を売ってレベルアップだよ〜。




