175 冒険者たち
「うわ〜。結構、依頼ってあるんだね」
「こっちはパーティー希望のボードだ」
ギルドカードの手続きに時間がかかったせいか冒険者たちは少なくなっていた。
「あっ! ゴブリン討伐依頼がある。ゴブリンって本当にいるんだ」
「何言ってるのナナミさん。ゴブリンってどこにでもいるでしょう。退治しても退治してもどこからかわいてくるんだから」
なんか退治しても退治してもわいてくるってゴキブリみたいな.....。ゴブリン.....嫌だなあ。
「薬草依頼は....あった。いやし草って常時依頼なんだ」
「常時依頼?」
「いつでも買い取ってくれるってこと。このいやし草の依頼主は冒険者ギルドになってる」
初心者の為にあるのかな。依頼を達成できないといつまでもランクが上がらないもんね。私とクリリも最低ランクのEから始まる。これは魔法がどれだけ使えても、剣が恐ろしいほど強くても関係ない。冒険者ギルドに登録した時は誰でもEランクからだ。
「魔物の肉の買取りって高いね。カンガー鳥って何? 売ってるの見たことないよ。いつもコッコウ鳥なのに.....美味しいのかな?」
「カンガー鳥は美味しいって聞いたことはあるけど、食べたことはないなあ。金持ちだけだよ食べれるのは」
カンガー鳥食べてみたいから私も依頼しようかな。クリリによると魔物の肉は美味しいものが多いそうだ。だがゴブリンは臭くて食べれないと言ってた。ゴブリンって最悪だね〜。
「ナナミさん、早速薬草を売ってくるよ」
「うん。私はここでもう少し依頼を見てるよ」
「大丈夫かなぁ。絶対に動かないでね」
なんかクリリが過保護になってる気がする。大人なんだから一人でも大丈夫だよ。
「お嬢さん、俺らと一緒にパーティー組まない?」
「へ?」
気づけば三人の冒険者に囲まれてた。
「わ、私はまだ今日冒険者になったばかり.....」
「いいよ、いいよ。俺らそんなの気にしないから」
「そうそう、俺ら強いから、君は見てるだけでいいよ。パーティー組んでたら君は見てるだけでランクが上がるよ」
楽して上がっても実力じゃないんならダメだよね。
「今からゴブリン退治に行く予定なんだよ」
「ゴブリン? どうせならカンガー鳥にしたら?」
ゴブリンってなんか小物のイメージなんだけど。この人たち自分で強いって言ってるけど怪しい。
「カンガー? あんな気性の荒い鳥はダメさ」
「そうそう、鳥は空に逃げるからね〜ゴブリンが一番さ」
冒険者ってこういう人たちの集まりなんだろうか? 困ったなあ〜話が通じる人たちじゃなさそうだし。
「ナナミさん、終わったよ。ん? この人たち誰?」
クリリが冒険者と私の間に入ってきた。お〜助かったよ。
「ナナミって、まさか『マジックショップナナミ』のナナミ......さん?」
「そうだよ。ナナミさんに何か用なの?」
三人はクリリの返事を聞くと集まって話し出した。
「『マジックショップナナミ』って勇者さまが働いている店だろう? やばいんじゃないか?」
「ガシャが声をかけようって言うからだぞ」
「まあまあ、まだ何もしてないから大丈夫さ」
三人の声が大きいのでまる聞こえだ。
「「「では、しつれいしまーす」」」
三人は棒読みで頭を下げるといなくなった。あまりに素早い動きだったので声をかける間もなかった。
「う〜ん。タケルってうちで働いてないんだけど...」
「いいんじゃない? タケルさんのおかげで騒ぎにならずにこの場がおさまったんだから」
「そうよね〜。働いてないけど入り浸ってるんだから、名前くらい使わせてもらってもいいよね」