174 初めての冒険者ギルド
「ここが冒険者ギルド!」
この世界に来て一年になるのに冒険者ギルドに来たのは初めてだ。商業ギルドと同じような建物なのに中に入れば全く違う。ここはなんと言うかガラが悪い? 冒険者たちの格好が商業ギルドで見かける人たちと違うからそんな気がするのだろう。
「おう。クリリとナナミさんじゃないか。ここに用があるのか?」
知らない男に声をかけられた。
「ガレットさん。最近見かけなかったけど依頼か何かで出掛けてたの?」
どうやら店の常連客のようだ。
「おう。王都までの護衛依頼だ。それだけだったら早く帰れたんだけど、王都のギルドでも依頼を引き受けたから遅くなってな。コレットさんは元気か?」
ここにもコレットさんファンが.....。本当に冒険者たちの間でコレットさんは超人気者だ。旦那がいるってみんな知ってるのに、ファンクラブまであるようだ。
「元気ですよ。最近ガレットさんを見かけないねって昨日も言ってたんですよ」
「そうか! 昼過ぎに行くって伝えておいてくれ。そうと決まったら用事を済ませとかないとな」
ガレットさんはスキップでもしそうな勢いでギルドを出て行った。
「コレットさん言ってたかなあ〜」
「あれ? 違う人だったかなあ。まあ、いっかあ」
コレットさんのファンは沢山いるし、みんな似たような名前だから誰が誰やらだね。
「何かご用ですか?」
「依頼したいんですが、ギルドカードいりますか?」
「ギルドカードをはじめに作っていただくことになります。保護者の方がいますか?」
もしかして未成年と思われてるの?
「未成年じゃないですよ。それにギルドカードって子供でも作れるって聞いてますよ」
「依頼される場合は保証金とかあるので......」
どうやらお金がかかるので保護者がいた方が良いと思われたらしい。
ギルドカードは渡された紙に記入するとすぐに作ることができた。クリリのも一緒に作ってもらった。本の世界だと水晶玉みたいなもので能力を測ったりするけど、そういうのは一切ない。ちょっとガッカリした。
「はい。こちらがギルドカードです。何か質問がありますか?」
だいたいのことはギルドカードできるまでに教えてもらったのでない。
「依頼してもいいですか?」
「はい。受付します。ただ引き受けてくれるかどうかは提示金額次第ですよ」
私は相場がわからないのでクリリに任せてある。
「ああ、ユウダケですね。え? 二十本も?」
「はい。一本でも構わないのですが二十本までは買い取りするので、これでお願いします」
ユウダケは日本でいうマツタケのことである。この世界でも貴重らしく幻のキノコと呼ばれている。去年はこちらに来て間も無い時が旬だったのであまり食べられなかった。今年はいっぱい買ってアイテム鞄に入れておけば、食べたい時に食べる事が出来る。
「では受け付けます。ユウダケですと大きさも変わってくるので大きさによって金額も変わると一筆入れておきましょう」
「そこまでは考えてなかったです」
「後々揉めることになりますからね」
さすが受け付けのプロですね。こうして冒険者ギルドでの手続きは終わった。商業ギルドの時と違ってたいして時間はかからなかった。
クリリは真新しいギルドカードを見て嬉しそうだ。クリリもやっとギルドカードを作れる年齢になっていたのだ。ギルドカードを持っていなくてもギルドへ来れば買取をしてくれるが、同じものでもやはり値段が変わるらしい。
「クリリは何か売れるものがあるの?」
「うん。タケルさんからもらったアイテム鞄に採集した草を入れてるんだ。カードを作ってから売ろうと思って。タケルさんからもらったアイテム鞄って普通のより高性能で腐らないから助かるよ」
クリリは掲示板に依頼がないか見に行った。依頼がある方が高くなるそうだ。今日は店も休みだし私も付き合うことにした。
どんな依頼があるのか気になるしね〜。