170 王都の屋台で食べよう
王都の街はやっぱり活気がある。九時過ぎなのにもう屋台がいくつも出てる。朝ごはんをそこで済ませるものもいるようだ。
「美味しそうな匂い!」
朝ごはんは済ませたけどまた食べたくなるよ。それにこの匂いって.....。
「マヨネーズ焼きの匂いだ!」
タケルって食べ物の匂いにはすごく敏感だよね。近くの屋台でコッコウ鳥のマヨネーズ焼きが売ってた。あの屋台のおじさんって時々マヨネーズを買いに来るおじさんだよね。いつも大量に買ってると思ってたら、屋台でマヨネーズ焼きを売るためだったんだ。
「ねえ、あっちのモウモウの七味焼のおじさんも見たことあるよ」
クリリが指差す方向には確かに《辛みがクセになるモウモウの七味焼き》と書かれた屋台があった。
「どっちも食べてみたいね~」
初めにマヨネーズ焼きの方へ行く。マヨネーズの匂いは強烈だからね。何人か並んでいるので最後尾にみんなで並ぶ。
「おー、『マジックショップナナミ』の店員じゃあねえか。わざわざガイアから買いにきてくれたのか。ありがとうよ」
わざわざ買いにきたわけではないけど、そこは笑っておく。
「マヨネーズ焼きを四本ください」
「おう、俺のおごりだ。いくらでも食べてってくれ。マヨネーズのおかげで売り上げが倍増してるからな」
おじさん、そんなこと言ったら全部平らげるのがうちにいるんだからね~。
「朝ごはん食べたから四本でいいですよ」
私がそう言うとタケルが口を開きかけたけど目で黙らせた。
「遠慮するなよ~」
おじさんは袋に8本入れてくれた。私が悪いからとお金を払おうとすると、
「お金はいいんだが、マヨネーズ持ってきてねえか? もうあまりないんだが、買いに行くとなると何日か休まねえといけねえからよ」
と言った。確かに私たちはタケルの転移魔法で王都までひとっ飛びだけど、普通は2日はかかるから大変だよね。
「何個要りますか?」
「そうだなあ。五十個くらい買っとくか」
私は百均からマヨネーズを買って渡す。おじさんは本当に五十個あるとは思ってなかったらしく目を見張ってた。
「大きいのはないんだろうな」
百均のマヨネーズは百円で買えるものだから小さい。確かに業務用が欲しいだろうな。
「すみません。このサイズのものしかないんですよ」
「そうか。でも買いに行く手間が省けて助かったよ。ありがとうよ~」
おじさんからお金をもらい、オマケにケチャップを三本渡した。ケチャップ焼きもいつか食べてみたいからね。
「炭火で焼いてるから美味しいね~」
「うん。家で食べるのも美味しいけど、こっちも香ばしくて美味しい!」
クリリは少し熱いのかハフハフと言いながら食べてる。タケルはいつものように無言であっという間に食べ終わった。じっと見ていて鬱陶しいので、私の分の一本を渡す。
クリリはそれを見て自分のも盗られたら大変だと思ったのか「あちっ!」と言いながら食べ急ぐ。
次の七味焼きでも同じような事があり、今日はお金を使いにきたはずなのに何故か儲けちゃったなあ~。