167 ヴィジャイナ学院で出店 3
「ではナナミさん昼ごはんを食べに行きましょう。ここの学食はまあまあ美味しいですよ」
鐘の音が三回なると、クリス様が学食に案内してくれると言う。お昼はいつものように100円コンビニの弁当にする予定だったけど、異世界の学食に興味があったのでついて行く事にした。クリリやコレットさんも順番で学食に連れて行くと言われた。
「あのルーズリーフというのは、店では売ってなかったですよね」
「はい。店には学生の方は来ないですから。あれは学生に売れる商品だと思うんです。私も使ってたんですよ」
「そうですか。では私も使ってみます」
タケルも学食に興味があるようで一緒に並んで歩いている。
ヴィジャイナ学院の学生食堂は広かった。だがお昼時にしてはまばらだ。
「あまり食べに来てないんですね」
「今日はナナミさんのように売りに来てる業者があるから特に少ないんだと思います」
そういえば屋台みたいに食べ物も売られてたね。
「あっ。ホットケーキの匂い」
どうやら厨房でホットケーキを焼いてるようだ。
「甘い匂いですね」
学食のメニューは二種類だけだった。私はコッコウ鳥の塩焼きでタケルとクリス様はマルギー魚のスープ煮込み。セルフサービスなので厨房の所のカウンターで人の良さそうなおばちゃんから料理をもらう。メイン料理が違うだけでパンとサラダは同じものだ。
「おばさん、いい匂いだけどホットケーキを作ってるの?」
クリス様がホットケーキの匂いが気になるのかおばさんに尋ねる。
「おや、クリス様はホットケーキを知ってるのかい? さっきピーラー目当てで『マジックショップナナミ』に買いにいったらピーラーが見つからなくてね。仕方ないのでガイアで評判だって言うホットケーキミックスを買ったんだ。誰も買う人がいないみたいだから全部買ったよ。美味しかったら明日にでも学食に出す予定さ。最近は寮の方の食堂に客を取られてるからこっちも考えないとね」
ピーラーは学生相手だから用意してなかった。次があったら学生以外が買うものも用意したほうがいいみたい。
「バターとケーキシロップをかけるとさらに美味しいですよ」
「袋の絵もそんな感じだけど、ケーキシロップってなんだい?」
そういえばここでは売ってなかった。私は百均からピーラーとケーキシロップを買った。
「これですよ。これはサービスしときます。気に入ったら昼から店では売るので買いにきてください」
「これピーラーもあるじゃないか! いいのかい?こんなにもらって」
「損して得取れですよ〜商売の基本です」
「ありがとうよ。今からみんなで食べて、気に入ったら買いに行くよ」
テーブルに着くと
「良かったんですか?」
とクリス様が聞いてくる。
「食べたら絶対欲しくなりますよ。ピーラーも一本じゃ足らないから絶対に売れます」
コッコウ鳥の塩焼きは肉が柔らかいし、貴族様も食べるものだからか、街の食堂に比べて味が濃い。文句なく美味しいね。
「結構美味しいのに寮に客を取られてるんですか?」
「ここは無料で提供してるから予算に限りがあるんです。寮で食べる分はお金を取りますからどうしても種類も豊富で食材も良いものが使えます」
なるほどね。きっと寮の方が料理の種類も多いのだろう。
この学生食堂のパンも柔らかくて美味しい。きっとクリリはこの学生食堂の方で食べることになる。だったら改革が必要だよね。このままでも美味しいしきっとクリリは喜んで食べるだろうけど、せめて種類を増やしたい。
「ねえ、タケル。やっぱり学食にはカレーやラーメンやうどんが定番だよね」