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141 ベリートリア国 ③

   

「ちょっと、安請け合いして大丈夫なの? 私が魔法使わなくてもタケルなら上級ポーションの一つや二つ持ってるでしょう」


 屋台の後片付けをしてピナさんの家に行く途中でタケルに声をかけた。ピナさんには聞こえないように小声で話す。丁度赤ちゃんが泣いてるのをあやしてるから聞こえないはずだ。


「確かに持ってるが、上級ポーションなんて使ったら向こうが気を使うし莫大な借金を背負ったような負担を感じさせる。それに比べて、お前の魔法の練習をさせてくれって事なら負担も感じないだろ?」


「でも失敗したらどうするの?」


「その時はこっちのミスですませんって言って上級ポーション使うから大丈夫だ。それに治癒魔法で失敗って、治らないだけで酷くなるってことはないから気にするな。いいか、魔法はイメージが大切だ。骨折ってるって言ってたがなかなか治らないところをみるとおそらく粉砕骨折だろうから、魔法を使うときは骨が治っていく過程を思い浮かべるんだ」


 最終的にはタケルが治してくれるなら安心だね。粉砕骨折かあ。確か母が腕を骨折した時にレントゲン写真を見たことあるけどあんな感じかな。骨が折れた時と治った時の両方の写真を見たことがある。まあとにかくやってみよう。


「どうした? 早かったな」


 ピナさんの旦那さんは奥さんが早く帰ってきたので驚いていた。


「タケルさんが全部買ってくれたから売るものがなくなったのよ」


 そう、タケルが全部買い占めたのだ。いつでも熱々の肉饅頭を食べれるからって全部買わなくてもいいのに.....食べたくなったらタケルから貰おう。


「いつもありがとうございます。こんな姿ですみません。安静第一と言われているのであまり動けなくて」


 ギブスとかないから本当に動けないよね。動いたら悪くなりそう。


「ハリーさんの肉饅頭は美味しいから買ってるんだから気にしないでくれ。」


 旦那さんはハリーさんって言うのね。ハリーさんは動けないけど肉饅頭の下拵えをしてたみたい。


「そう言ってくれて嬉しいです。最近は肉饅頭を売ってる所が増えてきたから、何か新しいものをと研究してるんですが.....」


 これは肉饅頭の下拵えじゃなく新しいものを作る研究だったのか。


「ここの肉饅頭はとても美味しいから全く違うものじゃなくて違う味の肉饅頭も作ってみたらどうですか?」


 新しいものも楽しみではあるけど、この肉饅頭が食べられなくなるのは惜しい。


「何を言ってるんだ。ここには胡椒と塩しかないんだから無茶なこと言うなよ」


 タケルに叱られた。そうだよね。あんまんや肉まんやカレーまんやピザまんを思い浮かべて、ついつい余計なこと言っちゃったよ。


「ごめん。ついカレーまんとかあんまんとか食べたくて余計なこと言ったよ」


「カレーまんやあんまんかあ〜。確かにこの肉饅頭の生地美味いから合いそうだなあ。調味料をあげて研究してもらったらどうだ?」


 百均の調味料はそれほど種類はないけどここよりは色々あるからいいかもしれない。

 私は百均から数種類のスパイスを探してハリーさんに渡した。


「いろいろありますがこのカレーのスパイスは結構いいですよ。ハーブ系のスパイスも肉の臭みが取れるから使ってみてください」


「しかし、高価なものではないのですか?」


「ひと瓶、銀貨1枚くらいするけど、他所の店に対抗するならこういう冒険も必要ですよ。このスパイスの料金は新しい饅頭が出来た時に食べさせてくれたらでいいですよ。気に入ってくれたら買ってもらいますから先行投資ですよ」


 ピナさんもハリーさんもとても喜んでくれた。

 これで一件落着だね。さあ、帰ろうか。


「待て、何帰ろうとしてるんだ。まだ大事なことが残ってるだろう」


 うっ、忘れてたよ。治癒魔法使うために来たんだった。なんかすごく酷い怪我みたいなんだけど治るのかなあ。私は白い布に巻かれたハリーさんの足を見て溜息をついた。





























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