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140 ベリートリア国 ②

   

「この肉美味しい!」


 ガグア肉の串焼きというのがタケルのオススメだった。特にこの店が一番だと言う。転移もこの近くの人通りの少ない空き地だったから、わざわざこの肉を食べる為にここに来てるに違いない。

 タケルって食のためなら何でもやりそうだよね。


「そうだろう? 普通は塩をまぶして焼くだけなんだけど、この店は色々と工夫してるみたいだな。何をしてるかは企業秘密だって」


 それはそうだろう。どこの店でもこの味が出せたら売れ行きにも関わってくるからおいそれとは教えられないはずだ。

 ガグア肉を食べながら歩いているとチラチラとこちらを伺うような視線が......。私もタケルもそんなに変わった服装はしていない。ちょっとよそ行き風だけどこのくらいの姿の人は私たち以外にもいくらでもいる。私たちよりもあのトカゲの人(?)の方が目立ってると思うよ。


「タケルが勇者だってバレてるのかしら?」


「いや、黒髪が珍しいんだろう。まだまだこの国には黒髪に黒い瞳の人間は少ないからな」


 タケルは両手に六本の串焼きを上手に食べながら言う。なるほど、珍しいものを見る眼だったのか。

 もともとこの国は黒髪に黒い瞳の人間は少なかったらしい。その少なかった黒髪の人間が全くいない位減ったのは、この国の王様が勇者を召喚しようとして失敗した事から、黒髪の人間を差別したため離れていったと言われている。その後この地に神の祟りがあって黒髪の人間に対する差別は無くなったと言われているが、いまだに黒髪の人は少ないみたいだね。


「なんかパンダになった気分。カホ様がお忍びで来た時にはフードを被ったって言ってたっけ」


「気にしなければいいさ。黒髪に黒い瞳の王妃が誕生すれば、この国にも黒髪の人間が増えてくるよ」


 そうだね。きっと黒髪でも黒い瞳でも気にする人がいなくなるくらい多くなるに決まってる。

 

「ここにあったんだがなぁ。肉饅頭の美味しいお店」


 タケルは沢山あったガグアのくしやきを食べ終わったらしく肉饅頭のお店を探してる。


「肉饅頭のお店ならあちこちにあるじゃない」


「匂いが違うんだよ。こうもっとジューシーな匂いが漂って....あっ、あっちだ」


 タケルの鼻は犬並みだね。始めに探してた場所から遠く離れた所にその店はあった。

 あまり流行っていないようだ。赤ん坊を背中に背負った女性が店番をしてる。


「あれ? ピナさん今日は旦那さんはいないの?」


「あら、タケルさん久しぶりね。旦那は足を骨折したから家で留守番してるわ。折れた足でここまで来るのは大変だから」


 ピナさんはタケルを見て嬉しそうに微笑んだ。


「十個包んでくれ。一個はこいつが食べるから別に包んでほしい」


「ありがとう。今日はもう売れないかと思ってたわ」


 ピナさんは肉饅頭を一つ包んで私に渡してくれた。私は早速いただいた。


「美味しい! 肉汁がすごい!」


「そうだろう? ここのが一番なんだよ」


 タケルのオススメに間違いはないわね。でもどうしてこんな隅の方で店を開いてるのかしら。大通りの方が儲かりそうなのに。


「いつの間にか場所が変わってたから驚いたよ」


「あの辺は場所代が高くて払えなくなったの。最近は肉饅頭を売る店も増えてきたから競争が激しくなってね。おまけに旦那が骨折したから治療代にお金がかかってしまって....」


 こんなに美味しいのに。まあ、夏だから売り上げが落ちてるっていうのもありそうだよね。夏に外で温かいもの食べるのは遠慮したい。今日は比較的涼しいから気にならないけど。


「骨折ってポーションとかであっという間に治せないの?」


 小声でタケルに聞く。ファンタジーの本だと怪我だったらポーションですぐ治るよね。


「小さい怪我だったら治せるけど複雑骨折だと難しいな。上級ポーションはそれこそ手が出ないだろう。多分ピナさんが言ってる治療は教会で治癒魔法を使ってもらってるんだろうけど一発では治らないから結構お金がかかるんだよ」


 教会って無料で治してくれないの? 無料は無理でも貧乏人からは寸志でとかしてくれたらいいのに。


「そうだ! お前、確か治癒魔法使えたよな。どの位使えるか試させてもらったらどうだ? ピナさんたちも助かるし一石二鳥だよ」


 え? 一度も使ったことないのに大丈夫かなあ〜。今度タケルが怪我した時に人体実験させてもらおうと思ってたんだけど、まさか見も知らぬ人に使う事になるなんて無理だよ。

 タケルから話を聞いたピナさんは私の手を握って涙目でお礼を言ってくる。これもう断れないよね。











 








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