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128 吾輩は翼猫であるーティーグルside

 

 吾輩は猫である。名前はティーグル。人は吾輩の事をウイングドキャット(翼猫)と言うが、吾輩は猫である。普通の猫より大きく、空を飛べるが、猫であって特別な生き物ではない。


 吾輩の飼い主はナナミと言って可愛い女の子だ。ホッとした。迎えに来たのが勇者タケルだったのでこれからむさ苦しい男と、ゴホゴホ、オーラが人間とは思えないほど強い危険な男と暮らしていくのかと思って不安だったのだ。

 その点ナナミは優しいオーラをしてる。これなら安心だ。名前も必死に考えてくれた。タケルにもポンポン文句を言ってるから、吾輩の事も守ってくれるだろう。


 吾輩は猫なので一日のほとんどは寝て過ごす。


『吾輩の眠りを妨げるものは何人たりとも許さん』


 起こされる度にこのセリフを言って脅しているのだが人間どもには通じないようで、


「にゃんですか? ご飯ですか?」


と問い返してくる。にゃんですかとはにゃんじゃ! 吾輩を子猫と勘違いしてるとしか思えん!


「ニャ、ニャ、ニャー!」


 文句を言っていると餌箱に餌が......。別に餌に釣られてるわけではない! 食べ終わったらまた抗議するからにゃ!


「やっぱりお腹が空いてたのね〜〜」


 空いてたわけではないぞ!


「さすがナナミさん、ティーグルの言葉がわかるんだね〜〜」


 クリリ、貴様わかってて言ってるな! 獣人であるクリリとはなんとなく分かり合える。よって吾輩が何を言ってるかわかっていて言ってるのだ。許せん! きちんと通訳するのだ!


「ニャニャニャー!」


「あっ、ミルクが欲しいのかな」


 今度はミルクが注がれた。


「ニャ.......」


 うむ、まあよかろう。決してミルクに釣られたわけではないぞ!



 一緒に暮らし出してしばらく経った頃、社員旅行に行くとナナミが吾輩に言った。吾輩は留守番させられ、番犬ならぬ番猫にされると思っていた。


 出発当日は部屋の隅にあるベッドで不貞腐れていた。


『何してるの? 早く用意しないとタケルさんに置いてかれちゃうよ』


 クリリが話しかけてきた。


『吾輩はお留守番なのだ』


『え? ティーグルも招待されてるって聞いたよ。ティーグルを置いてナナミさんが旅行に行くわけないでしょ』


 どうやら吾輩の勘違いだったようだ。


『寝てばかりいるから肝心な所を話を聞き逃すんだよ』


むっ、寝るのは猫の仕事なのだ。ただ眠ってるだけではないぞ。



 社員旅行というのは素晴らしい。スライムのウォータースライダーには乗りたくなかったのだが、タケルに抱きつかれたまま乗せられた。吾輩には勇者タケルを追い払う事は不可能だった。無念である。ーー思うにタケルはウォータースライダーが怖くて1人で乗りたくなかったのではなかろうか? 怖がってると思われたくないのか、何度も挑戦していた。その度に抱きつかれて良い迷惑だ。


 抱きついてくるタケルには辟易したが、可愛いカホとマリーに撫でてもらえて役得な社員旅行だった。


 そういえばルイスが時々話しかけてきた。アイツは動物と話せる指輪を持っているからな。


『ナナミさんはどうやって商品を仕入れてる? 何か変わったことはないか?』


 吾輩をスパイとでも思っているのだろうか? まあ、その度に高そうな餌もくれるのでクリリには黙っておいてやろう。だがその位では情報はやれんな。え? 寝ちゃあ食ってるだけだから何も知らないんだろうって? .......そんなことはにゃいにゃ。





 




 


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