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11 損して得取れ


 隣の部屋からのざわめきで目が覚めた。


「うーん」


 手を伸ばして背伸びをする。どうやら朝が来たようだ。ベッドから起き上がると服にしわがよってるのがわかる。

 洗濯の魔法をかけるとクリーニングしたみたいに服が綺麗になった。これだとアイロンもいらない。

 でもやっぱり寝間着が欲しい。服もこれだけだと困るし、後で買い物に行こう。魔法で洗濯はできるけど、何日も同じ服は着たくないよ。


「今日はとりあえず朝ご飯食べて、商業ギルドに行こう」


 鞄と鍵をとると部屋をあとにした。



 うさぎ亭は今日も混雑している。

 今日は黒パンにしてみた。

 マヨネーズを鞄から出してサラダにかけた。黒パンは白パンより味がないのでジャムを塗って食べた。

 もちろんジャムは鞄から出した。昨夜のうちに買っておいたのだ。スープの薄味は気にしないことにした。


 うん。やっぱりイチゴジャムは美味しい。


もぐもぐ食べているとウサギの獣人の店員さんに


「それ、なんですか?」


と話しかけられた。


「え?」


「あ、すみません。ここの店員のミーザです。昨日クリス様と一緒に来てた方ですよね」


「クリス様?」


「はい。ガーディナー公爵家の長子、クリス・ガーディナー様です。ガーディナー公爵家はこの辺一帯の領主になりますから、クリス様の顔を知らない人はいませんよ。時々変装して街を歩いていますが皆さん気付いています。」


 やっぱり彼はお坊ちゃまだったよ。それも公爵家。お忍びもバレバレです。


「私はナナミ・クラタです。いろいろな物を売ってます。クリス様にも買ってもらってたんです。あとこれはマヨネーズとジャムになります。マヨネーズをサラダにかけてジャムはパンに塗って食べます」


「クリス様が買われるということは良い商品なんですね。どこで売ってるんですか?」


「まだ店は開いてませんが、今日商業ギルドから店舗を紹介してもらうことになってるので開店したら是非来てください。これは見本で差し上げます」


 私は鞄からジャムとマヨネーズを出して渡した。ギルドのショルトさんみたいに開け方がわからないといけないので教えてあげる。


「ありがとうございます」


 ミーザさんはとっても喜んでくたよ。損して得取れ。日本のことわざにある。これで少しでも店にお客を呼べるといいね。

 その後なぜかわらわらと人が集まってきたのでジャムとマヨネーズを配ります。

どんどん増えてくるよ。


「まあ、せ、宣伝だからいいよね。損して得取れだもんね…」


 結構な数の人が並んでる。どこから湧いてきたのでしょうか。





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