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114 閑話 冒険者たち


「まだか?」


「はぁ。5分ってみんなが言ってたんですけど...」


「うむ。聞き間違いだったんだろう。もう少し待つか」


ーーというか待つしかない。マジックショップナナミで買ったのはカップ麺と焼き鳥の缶詰めのみ。缶詰めはもう食べ終わっている。なんとも言えないくらい美味しかった。もっと早く買いに行けばよかったと後悔した。


冒険者たちの間でマジックショップナナミの噂がではじめた頃無視していた。新しいものになびくのを是としない自分の考えに固執した。惜しいことをしたものだ。このカップラーメンは酒場での話題にもなってる。とにかく簡単に作れる保存食で美味しいと。早くできないものか。


「あれー。シシリーさん今日はカップ麺ですか?シシリーさんがカップ麺食べるなんて珍しいですね」


ダンジョンの中にある休憩できる場所で昼食を取っているのだから、他の人と相席状態になることも珍しくはない。が、ここはランクAかBにならないと来れない場所。あまり他の冒険者とは出会うことはない。


「ん? キリアお前か。まさか1人で来たのか?」


「どうしても欲しい魔石があったからね。でも大丈夫。この辺までは私でも倒せる魔物しか出ないから」


「だといいが。油断してると死ぬことになるぞ」


「はいはい。で、なんで食べないの?」


「5分って聞いてたんですけどなかなかできなくて......」


マースが答えてる。さすがにおかしいと思っているのだろう。


「あれ? これ水じゃない! お湯入れないとできないよ」


「「え?」」


「作り方書いてるのに読まなかった......ああ、読めないんだっけ」


俺もマースも字が読めない。識字率が低いこの国では字が読めないのは珍しくない。だから恥じることはないのだが2人してつい俯く。


「そんな顔しないの。読めない人の方が多いんだから。でもマジックショップナナミで買ったんでしょう? 作り方聞けばよかったのに」


キリアは不思議そうに聞く。そう買いに行った時に食べ方を聞くはずだったんだ。だが憧れのコレットさんにいつも食べてるフリをしたせいでこんなことになっている。彼女は冒険者として素晴らしい活躍をした。


「はぁ。そういえばコレットさんが店番してたよね。だいたい分かってきたわ。あれだけカップ麺は食べないって言ってたのに買いに行ったのもコレットさんに会うためだったのね」


「やましい気持ちではない。1度組んだことがあるから挨拶も兼ねて.....」


「はいはい。でこれはどうする? この水をお湯にしようか?」


「......頼む」


俺たちの魔法では無理なのでお願いした。


「キリアさんすみません。俺が誰かに聞いとけばよかったんです」


マースが謝っている。


「いいのよ。私もこの間、焼きそばのカップ麺で失敗したの」


「え? キリアさんは字が読めるのに?」


「作り方なんてだいたい同じものだと思ってたのよ。全部入れてお湯入れて5分経ったから食べたら、味が変なのよ〜びっくりしたわ〜ふふふ」


「何がいけなかったんですか?」


「ソースは最後に入れるのよ。五分たったらお湯を捨ててソースを入れる。そういう食べ物だったの。字が読めても読まないと意味がないってことね。ソース入れてるからもうどうしようもなくてそのまま食べたわ。最低な味だった」


その時の味を思い出したのかすっぱい顔をしてる。焼きそばを食べるときは気をつけよう。


「5分経ったから食べたら?」


キリアに言われて恐る恐る蓋を開けた。湯気が出て美味しそうな匂いが漂ってくる。


「ズズーッ。これは.....美味い。...ゴクッ。スープの味も抜群だ!」


「ズズーッズー。ほんとです。あーもっと早く食べれば良かった〜」


キリアがニコニコと俺たちを見てる。彼女が来てくれなかったらこのラーメンを食べれなかった。そしてまたラーメンから遠ざかってただろう。彼女にも感謝だな。そしてこの美味しいカップ麺を買うためにマジックショップナナミにはまた行かねば。え? コレットさん目当てだろうって? .....まあ、それもある。














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