表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/113

第九十五話 不正行為も辞さないかもしれない

 衣装、化粧、髪、その三点さえ抑えれば出場者のする事は……もう無いんだなー。

 お金があるのであらゆる職人を雇えてしまう、そのおかげで生徒の肉体労働は開催出場関わらず少ない。開催側は書類上の仕事だったり会議だなんだとそれなりに忙しくはあるらしいが、出場側は、本当になんにもする事がなくて正直拍子抜け。

 コンテストってもっと……自己アピールみたいなのが過剰じゃないとダメかと思っていたから。いや多分本当はもう少し頑張るべきなんだろうけどね。たまに他の参加者が食堂とかテラスとかで沢山の人にアイドルみたいに笑顔振り撒いていたから。

 それどでも事前投票の数はクリスティン様がぶっちぎり、そして次点が、まさかの私。


「クリスティン様の言ってた事、本当だったんだ……」


 彼女は何故か私を……私の容姿をとても評価してくれていたが、そして自分でもマリアベルの容姿は素晴らしいと思っているが、他人が投票したいタイプかと言えば否だと思っていた。

 だって、全体的に派手だし豪華だし、目付きが悪くて笑顔が笑顔として機能していなかったりするし。美少女というよりは美女、正しくは悪女顔。

 綺麗ではあるけれど、人から好かれたり憧れられたりする容姿ではない、と思っていた。でもこの結果を見れば認識が間違っていたらしい。


「マリアって結構認識されてんだな」


「ぶん殴るわよ」


 ジト目で睨んだ所で、ケイトには欠片も通じていない。多分結構な迫力あると思うんだけど。プリメラとエルはまだ慣れてないらしいから、未だビビられる事がある。

 私に対して身構えずにいてくれる人は貴重なんだけど……ケイトに関しては一回くらいビビらせてみたい気もする。


「ちゃんと凄いって思ってるよ。何の宣伝もなく事前投票二位って、その顔で良かったな」


「もう少しマシな誉め方出来ないの」


「誉めて無いからね」


 こいついつか本当にぶん殴ってやろうか。令嬢だから実行してないけど、平手打ちくらいならギリギリいけるのではと思ってる。今はまだそれほど身長差もないし、良いスイングから威力有る拳が振るえると思う。


「目立たず終わりたいとか言ってたの自分だろ。事前とはいえ、二位って喜べる結果じゃないんじゃない?」


 何度も何度も思っているが、本当によく分かってんなこいつ。他の人に関してはむしろ鈍かったりするくせに、私限定エスパーか。

 でもケイトの言う通り、出来れば最下位志望なのに事前とはいえ二位とは……ほぼ写真の印象だけとはいえ、望ましい結果ではないよね。分かってるなら慰めろよ、って逆ギレしたくなる。


「これって勝手に他の人に移したらダメかな……」


「やるなら止めないけど一人でやれよ」


「バレたらケイトにさせられたって言うわね」


「その前に逃亡する」


 勿論実行はしませんけど、ただの冗談だけど、したいと思う気持ちは本気です。ちょっとずつならバレない気もするんだけどなぁ……私に投票してくれた方には申し訳ないけど、今からでも遅くないので是非別の方へ変更して頂きたい。私は全然気にしないから!


「本番で頑張れ」


「どうやってよ」


「……変顔、とか?」


「怒られるわよ」


「俺は笑う」


「絶対やらないから」


 一位を目指すより、最下位目指す方が難しいってなんなんだろ。しかも私優勝候補だからね、残念な事に。仮に変顔なんてしようものなら、どこからどんな文句が飛んでくるか……心当たりが多くて困るわ。

 

「この感じだと、優勝はこの先輩で決まりな気がするけど」


「だと良いんだけど……」


 正直、クリスティン様が上位に入るのはほぼ決まりと言って良いだろう。私と彼女の差はまぁ、追い付けなくもないかなーって感じだけど、三位からは最早諦めるしかない差がついてるので。

 という事は必然的に私と三位以下の人も結構差があるんですけどね!最終手段、不正投票移しを使いたくはない。


「あ、マリアベル様いたー!」


「っ……サラ、様」


「探したよ、今……あ、話し中だった?」


「いいえ、大丈夫よ。何かあった?」


「衣装が届いたって聞いたから、一緒に見に行きたいなと思って」


「あぁ、そういえば……」


 両親に頼んでいた私のドレスだが、つい先日控え室に届いた。オーダーメイドで作っている人はもう少しかかるらしくて、今控え室にあるのは私の分だけ。

 お父様もお母様も私に似合うものを選ぶのは上手いが、私が今回望むのは清楚系……オブラートを取っ払っていうと似合わないタイプの物。だから何度か確認があったけれど、最終的にはオルセーヌさんが選んでくれたらしい。

 そういえば私もまだ確認してないな。


「それじゃあ一緒に行きましょうか。ケイト、また後でね」


「ん」


「お話中にすみません」


「全然、気にしないで」


 私の時は手を軽く上げただけで終わりなのに、サラに対してはちゃんと受け答えしてるケイト……凄い差だなとも思うけど、表情はどっちも変わらないから社交辞令感が凄いな。

 元々愛想が良いわけではないから、今さらといってしまえばそれまでなんだけど。


「控え室は部室棟の方にあるの」


 控え室というか、当日までの荷物置きって感じだけどね。会場はオズの方だから本来控え室もその近くにあるべきなんだけど、オズの方に荷物を置いちゃうと当日までが大変だし、学園に置いちゃうと当日が大変という事で……そこで出てくる折半案が両方に作るって金持ちすげぇ。

 というわけでこれから行くのは、厳密に言うと控え室(仮)って感じかな。当日までは間違いなく控え室だけど。


「楽しみだなぁ……オズコンに関われるなんて思っても見なかったよ」


「……やっぱり。大きいイベントなのね」


 入学したばかりの一年生がこんな風に言うとは、プリメラも知っていたし、規模が規模だから知ってはいたけども。

 そんなイベントに出なければならないと思うと、胃の辺りが重くなってくる。


「え……?」


「何でもないわ。こっちよ」


 気付かれない程度にお腹を押さえながら、部室棟までの道を進んだ。足取りが重く感じたのは……気のせいって事にしておこう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ