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第五十三話 イケメンと騒げる幸せ!

 まず運動部は除外。

 運動神経は悪くない……はず。マリアベルは性悪悪女だが性格以外は結構高スペックだったから。天才肌ではなく『やればやっただけ伸びるタイプ』だったから、サボっただけ落ちこぼれたけど。でも元の素質は良い方だからきっと運動神経も悪くない、何よりエンディングでの逃げ足は早かった。

 運動部に入りたくないのは、簡単に私が運動を『苦手』ではないけど『好き』でもないから。

 金持ち学校の部活とは言え、欠片の興味で足を踏み入れたら痛い目に遭うだろう。運動部の体育会系はそんなもんだ。

 となると、やっぱり文化部。出来ればほんわかうふふなお嬢様の楽園希望。

 

「……文化部も結構あるんだよなぁ」


 その辺は流石魔法学校と言うべきか。

 魔法研究から始まり魔法歴史部とか無属性魔法実験部とか……高等部になったら属性別もあるからさらに増えるのか。

 魔法は好きだけど……研究とかには興味が無い。しかも私、もう自分がどの属性になるか知ってるし。ボロを出す心配も含めて避けといた方が良いかも。

 ただでさえ『属性持ちを見つけた』とか尾ひれのついた噂が出回っちゃってるし。面倒事は避けるべし!


「手芸部も……気にはなるけど」


 プリメラもいるし、楽しそう。

 ただ私は手芸が得意な訳じゃないし、正直作る行程より出来上がりの方に興味がある。

 普通の令嬢よりは上手い自信はあるけど趣味で手芸をしている令嬢には敵うまい。お母様がそうだったが金持ちの趣味と言うのは、お金も時間も惜しむ事が無い為規模の桁が違う。

 

「……どれも入れる気がしないんだけど」


 勿論初心者でも安心して入れる部活もあるんだろうけど、軒並み私の方に興味が無い。

 丁度部活見学の時期だからか、掲示板には沢山の勧誘ポスターが貼ってある。

 普通のに混じって可笑しなのもちらほら……何だよカカトレウス演劇鑑賞部って。

 カカトレウスは人名か何かだろうけど、そこまで限定する必要ないだろ。演劇鑑賞部じゃダメなの?

 鑑賞する部があればする方もあって、ちゃんと『演劇部』もあった。並んで宣伝ポスターも貼ってあって、モスグリーンのショートヘアをした綺麗な人が笑っている。


「カカトレウス・バーニー主演……あぁ、この人」


 どうやらカカトレウスと言うのは、この人の事らしい。

 マジか……偉人とかじゃないのね。『カカトレウス演劇鑑賞部』は恐らくこの人の出ている演劇を鑑賞する部なんだろう。益々興味が……いや、逆に興味出てくるわ。

 カカトレウス、さん。ちょっと見てみたい。

 宣伝ポスターの中で笑うカカトレウスさんはとても綺麗で、中性的な魅力がほとばしっている。

 私ともヒロインともタイプが違う……オルセーヌさんが一番近いかな。性別判断が難しい所とかそっくりだね。


「演劇部に興味があるのかい?」


「いえ、見ていただけで……」


 背後からの声に、すぐさま振り返り掲示板の前から体をずらした。

 掲示板のど真ん中に陣取って、邪魔だったかな……なんて思って。


「それは残念。可愛い新入部員は大歓迎なんだけどな」


 前見ても、後ろを見ても、同じ顔。あ、綺麗な五七五。

 片方は平面だけど、もう一方は立体だ。勿論私に声をかけて来た方が立体ね。

 まさかのご本人登場にビックリドッキリなんですが。


「カカトレウス、さん?」


「初めまして、三年のカカトレウス・バーニーです」


 生で見る美形は目に優しいような眩しいような。

 モスグリーンの髪に黄緑の目、目鼻立ちがはっきりしていて唇が薄い。顔立ちだけなら男の子にも女の子にも見えるタイプだ。

 身長も随分高いけど……スカートを履いてるから女性らしい。カカトレウスさんが女装趣味とかでなければ。

 真っ黒な膝丈のスカートに白シャツだけって言う着こなしが彼女の中性感を強めている気もする。自分をよく分かってる人なんだろう、よく似合ってます。


「君は新入生だよね?」


「あ……申し遅れました。私はマリアベル・テンペスト、一年です」


「もしかして噂の……?」


「噂……ですか」


 嫌な予感しかしないフレーズが出てきたな。


「ルーナ王子の婚約者──」

「違います」


 やっぱりそれか……!

 思わず食い気味に否定しちゃったよ、先輩相手に……反省はするけど後悔はない。

 ちゃんと否定しておかないとどうなる事やら、恐ろしい未来しか想像出来ないよ。

 少女漫画でお約束な噂や勘違いは、焦らず騒がず冷静に否定しないと照れてるとか迷惑な誤解が生まれかねないから注意。


「候補にあがった事はありますけど、もう無くなった話ですわ」


「そうなの?こんな可愛い子との婚約を無くすなんて、王子も勿体無い事をするね」


 そう言って柔らかく笑む姿は、まるで彼女が王子様のようだ。背後に光が見えた気さえした。

 攻略対象じゃないから素直に称賛出来る。すっごく格好いいです。


「もう入る部は決まっているの?」


「いいえ、まだ……沢山あるので迷ってしまって」


「規定人数がなくて一人でも部員がいると部活として登録されちゃうからね。ほとんど活動してなかったりする部もざらだから、体験入部は有効活用すると良いよ」


「そうなんですか……」


 貴重なアドバイス、覚えておこう。

 ただそうなると余計に入りたい部が無くなっていく気がする。

 まだ時間はあるし、じっくり考えよう……。


「引き留めちゃってごめんよ。部活、決まるといいね」


「こちらこそ、貴重なご意見をありがとうございます」


「どういたしまして」


 片手を上げて去って行く姿まで絵になるなぁ……女の人だと分かっていてもイケメンと呼びたくなる。宝塚にハマる人の気持ちが少し理解出来たよ。


 結局この日は見学では無く、どんな部活があるのかを把握するだけで終わった。

 


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