表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/110

第四十二話 お久しぶりです。

 結論を申しますと、サーシアとは同じクラスでした。

 それだけならまだ許容範囲だった。確かに良い悪いであれば『悪い方』の展開だが、元々確率は三分の一。仕方がないと諦められる数字だと思う。

 ただ何で、わざわざ隣の席になるかな!

 出席番号どうなってんの? マリアベルのMとサーシアのSってそんな近くない……あぁ、だから隣なのね納得だちくしょう!


「……疲れた」


 入学式を終え、ホームルームも終わって教室を出る頃には私のHPはほとんどゼロになっていた。何で初日でこんなに疲れなきゃならんのだ。

 疲労を背負ってとぼとぼと廊下を歩き向かう先は学園の食堂、昼食時以外は閉校時まではカフェとしても利用できる。内装は学園内とは思えないほど綺麗で、お金持ち学園のお金のかけ方がよく分かる作りだ。絢爛豪華な成金趣味じゃないだけマシだけど。

 ここでケイトと待ち合わせをして、お昼を食べたら学園内を見て回ることになっている。

 扉のすぐそばに立っていた給仕さんにミルクティーを頼んで入り口から一番近い窓際の席に座った。

 少しすればまるっこいティーカップが運ばれてきて、亜麻色の液体が入っている。うん、甘くて良い匂い。

 あぁ、癒される……。


「マリア」


「っ……え?」


 温かな甘さに味覚だけでなく癒されていたら、突然コンコンとテーブルを叩く音がして、一緒に聞こえてきた声にびくついてカップの中身を溢すところだった。ついでにちょっと吹き出す所だった。

 焦った。何よりその声に驚いた。

 慌てて声の方を向けば、そこにいたのは声の通りの人物だった。


「グ、グレイ先生?」


「お久しぶりです」


「は、はい、お久しぶりです」


 にっこりと笑ったその人は記憶よりも随分成長しているけど、間違いなくグレイ先生だ。

 最後に会った時はまだ子供だったけどもうすっかり大人の男性になっている。顔立ちも少年らしさはなくなって、幼さの中の可愛らしさはもう何処にも見当たらない。

 と言うか、身長伸びすぎじゃない? 私の記憶ではこんなに見上げていなかったはずなんだけど……多分180cm位あるよね、首が痛い。

 本当に久しぶりだなー……でも、何でいるの?


「グレイ先生、どうしてここに?」


「マリアが入学するとキルア様から聞きまして」


「お父様から?」


 お父様とグレイ先生が連絡を取っているのは知っていた。グレイ先生のお母さんの入院を手続きする際、病弱なお母さんに代わって保護者の役割も担ったらしい。

 高等部を卒業したって言うのを聞いてからはお父様からグレイ先生の話題を出されなくなったけど……まだ連絡取り合ってたんだ。


「俺は今年から高等部の研修に入ったんですが、折角なのでお祝いをと思いまして」


「研修?」


「アヴァントール学園の教師になる為の研修を」


 うん、それは知ってるけど……え、教師になるのってそんな感じなの?教員免許とかいらないの?

 不思議に思ってグレイ先生に質問したら、逆に『教員免許』に引っ掛かられて焦った。

 どうやらこの世界には教員免許と言うものはないらしい。と言うよりも、物事に対して『免許』と言う概念が存在しない。

 免許ではなく、現場に放り込んで実地で学ぶ『研修』が主流らしい。そのため研修で飲み込みがよければその分早くプロとして活躍出来るし、逆に飲み込みが悪ければ何年かかるか……下手をすれば研修中ながらクビになるかもしれない。

 免許よりヘビーだな。


「俺は中等部を二年やって、高等部も順調に行けば二年ほどで終えられるそうです。それからは自分の希望が通るそうで、多分そのまま高等部の聖属性魔法教員になると思います」


 はい、そこは知ってます。ってことは、やっぱり私が高等部に上がる時にはいらっしゃる訳ですね。

 原作通りの流れって事か。覚悟はしてたから驚きはしないけど。


「それでは……入学おめでとうございます、マリア」


「あ、ありがとうございます!」


 お祝いの言葉と同時に渡されたのは、可愛らしいピンクの袋をゴールドのリボンで塞いだプレゼント。

 受け取ってみると袋越しに固い感触がした。でもそこまでずっしりした感じではない。

 早速開けさせてもらうと、中から出てきたのは可愛らしいバレッタ。


「うわぁ……可愛い!」


 金属で模されたリボンの上に色とりどりのストーンで花があしらわれたそれは、可愛らしいけど上品なデザイン。 物凄く私好みだ。


「気に入ってもらえましたか?」


「はい!本当に貰ってしまって良いんですか?」


「勿論。俺が持ってても使えませんし」


 そりゃそうだ。ではありがたく頂こう。

 丁度毎日髪を纏める装飾品が欲しかったんだよね。家にいたときは毎日アンにヘアアイロンでストレートにしてもらってたけど、寮に入ってしまったからもう頼めないし……自分では出来る気がしない、めんどくさくて。

 ただ天然パーマで広がりやすいから、ハーフアップにしたかったんだよ。グレイ先生ナイスタイミング。


「丁度こういったのが欲しかったんです。大事に使わせて頂きますね!」


「良かった。マリアの趣味に合わなかったらどうしようかと思ってました」


 本当に安心したのか、グレイ先生は少しだけ肩を撫で下ろした。原作の先生は女好きで軟派な雰囲気だから女の子の好きなものくらい簡単に予想できると思ってたけど……原作との差違かそれともこれからそうなっていくのか。

 どちらになるかは分からないが、私にはそれ以上に気になる点がある。


「あの、グレイ先生」


「はい?」


「……敬語、やめませんか?」


「え……?」


 折角マリアと呼んでもらえるようになったのに、さっきから敬語が物凄く浮いている。呼び捨てなのに敬語って違和感しかない。

 私としてはマリアって呼んでください、って頼んだ時点で敬語も無しって意味だったんだけど、伝わってなかったみたいだ。


「もうグレイ先生は私の家庭教師じゃなくて本当の先生になるんですから」


「俺はまだ研修中の身ですし」

「でもその後は高等部の教師になるんですよね?」


 アヴァントール学園はお金持ち学園だが、教師が生徒に気を使う……主に敬語などは強制されていない。個々の性格もあるので禁止とまではいかないが。

 身分や財力が一切通用しない。もちろん、表向きはだけど。

 いくら平等を唱った所で、現実問題、王子や上位貴族の子供に気を使わずにいられる大人はそういない。歳を重ねていると言う事はそれだけ『身分』の重さを理解していると言うことだ。

 だからマリアベルのいじめも犯罪まで膨らんだ訳ですし。

 良い先生もいるんだけどねー……グレイ先生も含めて。

 なので、早く敬語をやめさせておかないと!って言う建前の元違和感に耐えられなくなっただけです。


「今の内からなれておきましょ?」


「……はぁ、わかった。これで良いか?」


「はい!」


 敬語なくすと一気に攻略キャラのグレイアスって感じが増すな……今更だけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ