プロローグ
電飾の様なきらびやかな音が私の耳で鳴り響く。
今回で五回目のそれはもはやどこか馴染み深い。
私の意思とは関係なく眉間には皺が寄り、唇は噛み締められ、両手は痛いくらい握られている。きっと周りから見ると今の私は屈辱と悲しみに打ちのめされているのだろう。
実際は悲しみなんて微塵も無く、感想はただただ終わったんだなーってだけなんだけどね。
「どうして……どうしてなんですの!!」
思考とは真逆にヒステリックに叫ぶ。いやー自分でも凄い癇癪持ちだと思う。意思に反して動く口は何度もどうしてだと呟いているが、幸せに満ちた空間では不気味でしない。ホラーだホラー。
「……マリアベル」
マリアベル。それは私の名前。
プラチナブロンドの少し長い髪に黄金色の瞳をした美男がこちらを見つめ、口を開いた。
「マリアベル、すまない。俺は……カレンが好きだ」
「っ……!!」
衝撃に打ちのめされた私がこの場を走り去るまで後三秒。
そして視界が暗転するまで後、七秒。
+ + + +
『LinaLia』──剣と魔法の世界で様々な困難を乗り越え愛を育む、王道恋愛ファンタジー乙女ゲームのタイトルだ。
舞台はアヴァントール魔法学園。王族貴族の華麗なる血脈から芸術家の子息まで、財ある者達が通う超セレブ学園に、稀なる才能を見込まれた田舎の平民であるヒロインが転入して来るところからゲームは始まる。
攻略対象は五人。一人は教員、残りは先輩二人同輩一人後輩一人とバランス良く様々な年代の恋愛が楽しめるようになっている。勿論皆、容姿端麗家柄良好。二次元スペックのえげつなさ半端ない。
そしてそんなえげつないほどハイスペックな王子様達と恋愛を繰り広げるヒロインはカレン・フロウ。
金糸のストレートボブ、深海を思わせる碧眼、透き通る様な白い肌。愛らしさの化身と言わざるを得ない美少女。
性格は優しくて穏やか、明るく前向きで恋愛には天然記念物並みに鈍い。そしてこの世界では類稀なる才能『強化魔法』を備えた、安心安定のヒロインスペック保持者。
ここまでが簡単な『LinaLia』の舞台とキャラクターの設定となるが、このゲームにはどの攻略対象にも共通する恋愛のテーマがある。
それは、題名にもなっているリナリアの花言葉。
『この恋に気付いて』
少し分かり辛いかもしれないのできちんと明記しておくと、このゲームの絶対的恋愛テーマは『許されぬ片思い』だ。
攻略対象五人には個別ルートに入ると親公認の許嫁が出来る。
許嫁の名はマリアベル・テンペスト。
菫色のふわふわ波打つロングヘア。パステルパープルの瞳は黒目がちで、エクステみたいな睫毛がびっちり縁取っている。白磁を思わせる白く滑らかな肌も、小さな顔も、華奢ながら美しい曲線を描くシルエットも、これまたヒロイン同様二次元の権利を余すこと無く使った超絶美女……なのたが。
ヒロインの甘い愛されフェイスとは真逆に位置する悪役120%仕様フェイスである事が彼女のポジションを物語っているのではないだろうか。
さて、長々語らせていただいた所で本題に入ろう。恐らく大多数の方が予想しているかと思うが。
私は今その『LinaLia』の世界にいる。
悪役令嬢、マリアベル・テンペストとして。