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熱くてこっちまでやる元気が無い…
今回はグロ表記ありです
ご注意ください。
殴られた『吹っ飛ばされた』『誰に』『何に』『どうして』『何で』
思考がまとまらない、自分の中にもう一人別の自分がいる『子狼は無事』『手を離していたから巻き込まれていない』『あの程度が上級冒険者』『どれだけすごいかと思えば期待はずれ』『別の自分、他にもいる』
あれがオークかまんま豚の二足歩行…ちょっと人よりだな『あんなのに殴られた』『何で殴られた?』『形状から何か大型動物の足の骨』『棍棒程度の長さと太さ』『そう言えばオークはモンスター?魔物?』
吹っ飛ばされ回転する視界の中、いろんな思考が出てきては消えていく。おかしい、スキルの中に思考を複数に分けるものはなかったはず。
「くそっ!おい、大丈夫か!!」
ジョーが叫びながら弓を放つ、矢はオークの太股に刺さるが貫通まではしていない『威力が低い』『役に立たない』『待て、短弓ならあんなもの』『準備不足』
「グウゥゥ……グアァァァ!」
何にせよいい加減、切れていいよな?『問題なし』『ぶちコロセ』
「な、なんだ!?」
俺の咆哮に驚くジョーは無視する。
体をひねり仰向けの状態からうつ伏せに、さらに手足を地面について勢いを殺す。
指先を地面にめり込ませ、そのまま飛びかかり武器を持っていない方の腕に噛みつく。
オークは噛みつかれた痛みから振り払おうと腕を振り回すが顎に力を入れて離れないよう喰らいつく。
『マズイ』『そらオークだしな』『棍棒来るぞ』『動きにくい』『すこしいじるか』
なんか知らんがお前らうるさい!すこし黙ってろ。
かじりついた部分を喰いちぎりそのまま距離を離して棍棒を避ける。
さてどうするか…つっても本能大暴走な上こいつら?が勝手に体動かしてるに近い状態だしな。
「くそっ、本当に勇者なのかよ!まるで魔物じゃねーか!!」
ジョーの放つ矢が先ほど刺さった足とは反対側の足に刺さる。まずは足を潰して距離をとって仕留めるつもりのようだ。
「文句を言うなら仕事しろ似非上級冒険者、聞いてた強さと違うじゃねーか」と言ったつもりだが口から出るのは唸り声のみ。
本能で動く体は次に武器を持つ腕に狙いをつけているようだった。
何度も飛び掛るが棍棒で逸らされたり、吹っ飛ばされたりしている。オークも傷が増え出血し足は矢がたくさん刺さり立っているだけの状態だが、まだ余裕があるようだ。
こいつオークじゃなくて上位種のハイオークかオークロードだったりして。
いい加減くたばって欲しいものだ、だんだんとこっちの動きになれてきている。骨しかないこの体では瞬発力が足らない、コレがもし飛行の魔法とかを使えるのであれば体の軽さは有利なのだが。
車にたとえるなら軽すぎてタイヤが空回りし前に進めないような状態か、さすがに指先だけでは地面をつかみきれない。地面を蹴るというより地面に指先を引っ掛けて引き寄せるが今の走り方だ。
ジョーはとっくに矢を使い切って後方で様子見の状態だし…さて、どうしたものやら…とか考えながら戦っていたのが悪かったのか、噛み付こうとした飛び掛りに棍棒をあわせられてしまった。
回避できずまた吹っ飛ばされる、と思ったがとっさに口を閉じてしまう、その中に骨の棍棒を残したまま。
サクッ
一瞬何が起こったのかわからずすべての動きが止まる。俺もオークも後ろで様子を見ていたジョーも、棍棒としてオークが振り回していた骨に視線を集めていた。
大きく齧り取られもはや棍棒としては使えないであろう骨を呆然と見ていた。
『補充完了』『まずは足か』『関節はどうする逆関節にするか?』『正確には爪先立ち』『逆になってる部分は足首』『どちらかと言うと武器が必要』『さっさと武器用の骨も補充しろ』
さっきまで黙ってた奴らが急に騒ぎ出す。
『再構成』『足から生やす』『残りが微妙』『やつの棍棒を喰らえ』『オレガヤル』
先ほどまでと違い瞬間的に近寄り、最初に齧った場所の反対側に再度齧りつきその場所から先端部を抱えて後ろに下がる。
とっさにオークが残った部分を投げつけてくる、避けようかと思ったところで体が動かず投げられた骨を体で受け止める。
『向こうからくれた』『素材ゲット』『避けるなんてもったいない』『それよりも…』
またこいつらかいい加減に…『喰らえ』『食え』『食い尽くせ』『貪れ』『食べるのです!』
ふと視線を下に向けると、足の指先から先ほどまで無かった鋭い爪が生えている。自分の骨の色とは違う、今まさに抱えている黄色がかった骨の色をした爪が。
そういうスキルか…そういえば昔見た漫画でも同じようなことをするキャラがいたもんだ。
鉄を食らいネジを食らい、弾を火薬を食らい、腹の中で組み上げて手から銃を取り出す冒険屋。
自分の思うように生き、好きなように生き、世界を廻り、何者にもとらわれない。
大きく口を開け抱えていた骨を喰らい飲み込む。取り込んだ骨を薄く鋭く加工し刃とする、さらにスキルを発動し能力を付加。左の手のひらから柄から取り出していく。余った分も鋭い爪にし左手の指先から生やす。
「クカッ、カカカカカ」
つい笑ってしまう、さっきまで自分は何をしていたんだろうと。最初からスキルを使えばよかったと。
笑う際に骨同士がぶつかり合い音を立てる。普通に笑うことも出来ないこの体、あぁ認めようすでにこの身は人外であると、人でありながら人から外れた存在であると。
無理に人であろうとする必要も無い。それらしく生きていこう。そしていずれあの方の元に。
「さて…おっさん。暇なら先に帰ってな、邪魔になる」
「お、おぅ」
「さてと、待たせたなクソオーク…とっとと喰い殺してやんよ!」
ジョーが脅えて数歩下がるが関係ない。すばやくオークに駆け寄る、先ほどまでと違い地面に爪を立て走り寄る。
こちらの得物を見てニヤリと笑うオーク、どうせこんな薄い刃で何が出来るとでも、簡単に砕けるとでも思っているのだろう。
振り下ろしてくるオークの拳に合わせ強引に切り裂く。
痛みと砕けなかった刃という結果に混乱し、見せた隙を突いてその腹を横に切り裂く。
切り裂いた腹に左の爪を腕ごと突き刺し、腸を引きずり出す。
激痛と零れ落ちる内臓にとっさに手を添えてしまうオーク、追撃としてその顔に刃を走らせ爪を叩き込む。左腕に伝わる眼球を潰すくちゅりとした感触。
蹴り飛ばし後ろに倒れたオークをまたぐ様に立ちその胸に刃を当て肋骨を切り飛ばし、傷口に強引に腕を突っ込んで胸を開く。
バキバキバキ
肋骨の折れる音が響き渡り、喉が裂けるような悲鳴をあげるオークを無視し、その心臓を握りつぶす。
さすがに心臓を破壊すれば死んだだろうと思うが、念のため剣を拾い首を切り落とす。
「さすがに疲れるわコレ」
近くの木に背を預け座り込む。周りを見るとジョーの姿は無い、村に応援を呼びに言ったのだろうか。
少し離れた場所の茂みから小さな狼が現れてこちらに駆け寄ってくる。
駆け寄ってきた子狼はその勢いのまま足に齧りつき遊んでいる。
その様子を見ながら、体から力を抜き眠りに着いた。
「さて本編と関係なくおまけコーナーいっくよー」
どことでもいけ
「さて今回は馬鹿な勇者の能力紹介です」
ほう
「その中で王の…で一番面白かったのを紹介です」
そいつ容量足りなかったヤツだよな
「そう。本編でも書いたけどアイテムボックスに射出機能つけただけなんだよね」
中身無いのか
「もちろん、そんなものまで用意しません。つーか別世界にあると思うなバカめって感じ」
あぁー確か有名な英雄のが強いというか対策採りやすいとかあったな設定が
「あの辺の武器は神秘がないと意味ないしそれに連なる神話っつーか英雄譚があって始めて意味持つからね、概念的に」
その前提が無いこっちの世界では力が無いと。
「その通り、でもさすがに空っぽだと生き残れないから練習用に割り箸入れといた」
は?
「射出の練習用にたくさん割り箸入れたんだけど…」
けど?どうなったんだ?
「いきなりゴブリンの群れに突っ込んで割り箸射出してた」
ぶっ
「もちろんそんなんでゴブリンを狩れるわけも無く逆に集られて死亡」
なんだかなー
「割り箸で練習して、武器を買い集めればソコソコの冒険者にはなれたかもね。
でも射出って弓の狙撃に近いけどそれより弱いから相手による」
…いや待て。ふと思ったんだが大岩とか入れといて射出すれば対軍で行けんじゃないの?
「あ…」
弓より弱くても結構な勢いで飛ばすならそのほうが破壊力高いよな。
「おー次の勇者が来る時は試してみるか、お勧めってことで」
まぁいいんじゃないかな
「さて次回は無限の…を希望した勇者の話にしようかな」
はいはい、お疲れ様でした
「お疲れーまたねー」