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 俺の名はジョージ・アルカレウス。

 冒険者仲間からは親しみを込めてこう呼ばれている、中年親父おやじのジョーと。


 いや、まぁ悪くはないんだ。他のひどい呼び名のヤツと比べたらましな方なんだ…

 確かに中年と呼ばれる年齢層で、もう少しで老人と言われても間違いではない歳なんだが…

 もっとこうカッコいい呼び名は無かったものかと考えてしまう。


 しかしひどい呼び名の知り合いがいるため、コレと言った特徴の無い身としては妥当なのかもしれない。


 酷い呼び名の代表格である冒険者<オークのアル>とは古くからの知り合いだ。

 アルは小さい頃、それこそ赤子の時に鼻が潰れてしまったそうだ、いじめや虐待ではなく寝返りをしたさいうつぶせになり潰れてしまったらしい。

 最初この話を聞いたときに「よく生きてたな」と口に出してしまった。赤子が鼻が潰れる位の時間うつ伏せだったとか、布団に埋もれて窒息するだろと。

 まぁ詳しく聞いて、さらによく生きていたなこいつと思った。ベッドから落ちて気絶って…呼吸できても普通死ぬだろ。


 しかし顔だけならオークなんて呼び名は普通付かない。彼は父親譲りのムキムキな筋肉ボディ…だったそうだ。腹筋は割れ大胸筋をピクピク動かせたと。高齢のギルド支部長が本当だと証言するまで誰も信じなかったが。

 そして初めて出会ったときにはすでに腹回りがたるみ初めていて最後に合った数年前はかなりデップリとした体型になっていた。


 そんな彼、ハーフエルフのアルフォンスほど酷い呼び名の冒険者とは未だに出会った事はなかった。アイツと出会うまでは。




「さてと、いつもどおりお仕事しますかね、っと」


 ギルドに入りながらつい独り言を口に出してしまった。

 仕事と言っても定期依頼の見回りだ。結界の確認も含まれるが今まで破られたこともない。

 ここギルド支部第…何号店かまでは覚えてないが通称『結界の森』は辺境と言ってもいい位置にある。

 王都と開拓地最前線の真ん中当たりになるが大街道からは外れている。簡単に言うと辺鄙な村だ。


「あ、ジョーさん。おはようございます。

 いつものでいいですか?」


「あぁ、ソレくらいでしょ?ここの仕事って。

 常時依頼は別としてほとんど仕事ないじゃん」


「食用魔獣の狩りもたまにあるじゃないですか」


「月に数回じゃ無いのと同じだよミリーちゃん」


 受付にいるギルド職員見習いのミリーにギルドカードを渡しながら雑談する。


「そんなの王都にいたことあるジョーさん以外は分かりませんよ。

 私も早く転勤で王都や他の国に行ってみたいです」


「おやじさんの許可が第一だろ。次に職員試験の合格もだ。

 ついでに言っとくと王都なんて行っても楽しいことなんて無いぞ?

 人が多すぎるから治安もそんなに良くないし、見所なんて城位だ」


「住んでた人の言うことは信用出来ません。

 ここと似たような村から行った人に話を聞きなさいってマリーナさんに言われました!」


「へいへい、信用の無いおじさんはお仕事に行ってきますよ」


 ここまでが何時もの会話である、最初の頃と違いなれた手つきで依頼の処理をしてカードを返してくる。

 時が経つのは早いもんだ…ミリーが見習いの仕事を初めてもう5年か。

 王都や他の国に行きたがるのは俺の話を聞いてからだから責任を感じてる。やはり子守りの依頼ので王都の話は不味かったか…


「あっそうだジョーさん手紙届いてましたよ」


「…あんまり見たくねえなぁ…」


「帰りに渡しましょうか今金庫にしまってますし」


「ギルド本部か神殿か…王城はないよな……

 帰りに受けとるわ。それまでに覚悟決めるかぁ」


「本当に昔何してたんです?

 ギルドの記録たどっても登録前のこと分かりませんし」


「昔ね…騎士だったって言ったら信じるかい?」


「その嘘は聞きあきましたよ。ジョーさんギルド登録してからずっと弓使い《アーチャー》じゃないですか。

 しかも長弓、短弓、滑車付きや弩までなんでも使えるとか。

 騎士として剣の訓練してたらこんなに弓がうまいわけないでしょうし」


「なんでそこまで知ってるかねぇ。

 って、もしかしてギルド支部専属の時の書類かよ。

 おっと、そろそろ回らねえと遅くなるな

 そんじゃお仕事してくらぁ」


「いってらっしゃいませ、無事のご帰還お待ちしております。

 帰ってきたら本当のこと教えてよねー」


 面倒臭いので教えてやらん。

 心のなかで思いながらギルドを出て村の外に向かって歩いていく。

 のんびりとしたゆっくり流れる村の時間、若いとき日に無茶した分ひどく好ましい。

 上級冒険者の俺が何故この村を拠点とするのか、それは老後のためってのが大きな理由だ。




 20分ほど歩き森の入口に到着、ここまではいつもと一緒だった。


「……なんだこりゃ、魔力が感じられねぇ」


 いつも来ている森とは別の場所に来てるみたいだ。

 依頼の時や暇なときに来ては少しずつ造っていった小路があるから間違いないし、生えてる木もいつも通りだ。つい最近枝を切った跡も残ってる。


「くそっ、結界が消えたか?もしくは魔力喰いか?

 いや、儀式魔法で根こそぎ持ってったってこた無いよな……」


 とにかく確認しないと報告出来ねえし、奥に進むか。

 歩きなれた道が魔力を感じないせいで全くの別物に感じられる。


 ヤバい、結界がなくなってたらマジでヤバい。

 結界があるから見回り依頼が出てるし、その場所が森の奥だから中級以上の依頼になって独占出来てるのに。

 それにこのタイミングで届いた手紙、先に受け取った方が良かったか?


「っと、ミスったな…

 魔力もそうだが森が静かすぎるモンスター(・・・・・)でも沸いたか?

 それなら魔力が感じられないのも納得だが、今の装備で殺しきれるかどうか……」


 魔獣や魔物ならまだいい、奴らは場合によって戦闘を回避できる。

 だがモンスターはダメだ奴らは何にでも襲いかかる上に、周囲の魔力を取り込んで己を強化する。

 最下級なら種類によっては倒せる…かもしれない。


 そんなことを考えながら多少曲がりくねった道を歩いていくとT字路になった開けた場所にたどり着いた。

 大きめの広場をぐるっと囲む俺の造った小路と、その真ん中には小さな…と言っても5メート四方の祠がある。

 いつも通りの光景に少しホッとする。まぁ結界が透明なタイプで見えて無いだけなんだが。


「ふぅ…まずは結界の確認を、っと」


 ここまで来る途中で拾った小石を結界のある場所へ投げつける。

 いつもなら弾かれて転がり落ちるはずの小石がそのまま通りすぎてしまった。

 念のため結界の範囲が縮んだかもしれないともう一つ、今度は強めに、祠まで届くように投げつける。

 変に力が入ったのか小石は祠のすぐ横を通りすぎて地面におちた。


「くっそ。可能性としては考えてはいたが、何も俺がくたばる前に消えなくてもいいじゃないか。

 あぁ、安定した老後を送る計画がパーだ……」


 無駄口を叩きつつ周囲を警戒しながら真ん中の祠にゆっくり近づいていく。

 何のための封印なのか全くの情報が無かったための監視観察

 だし、基本遺跡等の宝物ほうもつは発見者に所有権があるため確認せずに帰るのはもったいない。


「それに、封印されてたのがモンスターなら起きてこないうちに、そのまま止めを刺せるかもだしな」


 たどり着いた祠を外から観察する。高さが3メート、幅と奥行きが5メート位でそれぞれの面に入口があるが除き込めないように壁から1メールほど外に石板が目隠し状態に立っている。


「モンスターの気配はないが…なんだこの気配は?人…なのか?」


 しばらく様子を伺うが動きそうにない。

 武器を構え、思いきって中に入り込むと思っていたほど暗くなく祠の真ん中には彫刻の彫り込まれた台座が一つ。

 そしてその上に白骨化した遺体が……いや、本当に遺体なのか?

 先ほど感じていた気配の主が隠れられるような物もない。

 台座に見えるが中に何か入れる棺…って訳でもないか、それなら上に白骨を置くわけないしな。




 グーーーキュルキュル




 唐突に腹がなった、自分の物ではなく目の前の白骨から。

 反射的に弓を引き狙いを定めるが、混乱して考えがまとまらない。

 アンデット、スケルトンか!?いや空腹を感じるスケルトンとか…

 それ以前にアンデットならここまで明るいと普通は崩れるだろ、太陽に耐性持ってるとか……下級のアンデットのスケルトンがそんなの持ってる分けねぇよな。



 カタリ



 ゆっくりと動き上体を起こすスケルトン。

 自分の手を動かしながら見ている。開いたり閉じたりするたび指の骨がこすれ音を立てている。

 まるで初めて動かしているように、動かしかたを確認するように。


 しばらく動かしか納得したのか室内を見回すが、こちらに気付きビクリと体を震わせた。

 自分一人かと思っていたらそりゃ驚くか。と、思考に余裕ができるが…


「おはようございます。お腹が空きました」


 スケルトンが喋ったことで…いや、喋った内容で警戒心をさらに高める。

 アンデットのゾンビは人を喰らう、もしかしてコイツモも人喰い……


「肉でも野菜でも何でもいいです。お金は後で働いて返すので、何か持ってたら譲ってくれません?」


「はぁ!?」


「できればサンドイッチとかがいいですねー久しぶりに食べたい」


「訳わかんねーよ!なんなんだよお前は!!」


 つい大声で叫んでしまったが俺は悪くない…と、思いたい。

 だってうるさかったのかスケルトンが耳であろう部分を手で塞いでいたから。


「さて、今回のオマケですが。

ゲストとしてジョーさんを呼んでまーす」


のんびりいなか暮らしを目指す上級冒険者とか。


「悪いか?こちとら普通の人間で50越えてんだよ」


「ねぇ恋人は?その年までいないとかはないでしょ?」


「ノーコメントだ」


個人的には知り合いの話が聞きたい、アルさんとか。


「本人に聞けよ、ここに呼んでさぁ」


「もしかしてギルド職員見習いのミリーちゃんと恋愛関係なのかしら!?きゃー年の差カップル♪」


「あほか、ミリーちゃんは15だぞ。あり得んわ」


「分かんないわよ、あの年頃だと恋に恋するお年頃♪禁断の恋に揺れ動いていたりして…キャー♪」


あー話聞いてないやこりゃ。


「帰っていいか、老後の計画見直さないといけないんだが…誰かさんのせいで」


そーゆー文句は作者に言え。


「そして二人は愛の逃避行に走るのよ、そう他の国 ぐへぇ」


「お母様が失礼しました。連れて帰るのでごゆっくりどうぞ」


あ、ご苦労様です。


「こんなんが創造神で大丈夫かねぇ」


管理神多めに創ってるみたいだから…


「つーかあの棍棒、石で出来てなかったか?」


気にしたら負け、ちょっと早いけどこっちも帰ろっか。


「そうだな」


お疲れ様でしたー

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