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イニティウム王国 新創世記  作者: FukuJu
第壱章 ADEVENTURE -冒険編-
3/5

第二話 Fear -恐怖-



ネシスが村までの道を半分ほど来た時だった。村の方角から黒色の煙がもくもくと上がっているのが見えた。


明らかにき木では出ない量の煙に”村が燃えている”という思想が頭を駆け巡る。それ以上にデアの事が心配になり、ネシスは走るスピードを速めた。


*****


村に着いたネシスが立ち止まり見た光景は壮絶なものだった。

ありとあらゆる民家は真っ赤な炎に包まれ、いつもは賑やかな村は火花の散る音や火力に耐えられなくなった木材が倒れる音で満ちていた。

.”地獄”。

その言葉が一番当てはまる状況だった。


ここで一つ不可解な事に気づいた。

村に住んでいた人々はおろか、家畜の動物達でさえ何処にも居ないのだ。

ネシスの頭の中にある思想が頭をよぎった。


”もしかしたら、村の人々はいち早く山賊に気づき、何処かに避難したのではないか”


だが、それはただの妄想でしかなく、心配の念は少しも無くなることはなかった。

ネシスはまたデアの居るであろう家へと走り出した。


家の近くにまで来ると家は燃えておらず、煙突から煙が出ていた。そこでネシスは心のそこから安堵あんどした。


-良かった。どうやら山賊達はこの家に気づかなかったんだな-


ネシスに再び笑顔が戻った。


家の前まで来たネシスがドアノブに手を掛けた時、異変に気づいた。


家の中に一人、いや三、四人、もしかするとそれ以上の人間の気配がしたのだ。家に入る手を止め、窓側へと向かいこっそりと家の中を見た。

そこに居たのは武装をした五人の男達だった。


椅子に腰を掛け、いつもはデアと二人で食事をしているテーブルに足を乗せ、気荒に食事をしている。

耳を澄ますと男達は楽しそうに交互に話をし始めた。


-全く、今回は簡単な仕事だったぜ-


-全くだ。しかし、今回の仕事を依頼してきた依頼主は、何故こんな何も無い農村を襲わせたんだろうな-


男達はテーブルの上の肉をむさぼり、酒を呑みながら話を続けた。


-そんな事は俺たちが考えることじゃない。だが、こんな事で三十万カルもの報酬だ。美味しい依頼だったぜ-


テーブルの真ん中に居る一番体格が大きく、明らかに山賊の頭を張っているボスが豪語した。

男達は汚らしい笑みを顔に浮かばせ、大笑いをしている。

そんな中、そんな男達の仲間にはあまり似合わない気弱そうな男がか細い声で話出した。


-だけどよ、今回の依頼はあのデアっていう女の子だけだろ?村の連中まで手にかけなくてもよかったんじゃ‥‥.-


-何 言ってんだ。年寄りなんかは使い道はねえが、若い奴らは奴隷として売れば良い金になんだろうが-


-そ、そっか-



また男達は汚らしく大笑いをしだした。

ネシスは口から血が出るほどに、歯を噛み締めた。これほどまで怒りという感情が出たのは初めてだった。

両手を握り締め、怒りで身体は小刻みに震えていた。


”こいつらだけは‥絶対に許さない!”


ブランの店から持ってきた剣を右手でもう一度強く握り締めた。


ドアの前に戻り、覚悟を決めた。


『うおぉぉぉぉ!!』


怒声の声を荒げドアを蹴破り、男達のそれぞれの居場所を窓から把握していたネシスはドアに一番近い男に斬り掛かった。

突然の事に動けないでいた男はネシスの一太刀を避けることも出来ず、浴びるようにその会心の一撃を食らった。

だが、斬れたのは男ではなくネシスの剣だった。

真っ二つに折られた剣の刃は空を舞い、テーブルの上に突き刺さった。

しかし、そうとも知らずドア際の男は斬られたと思い込み、床に倒れ気絶していた。


剣を折られ武器も無くなり、一人は倒せたが、それでも武装をした男が四人。

圧倒的戦力の差に恐れを抱きつつも、荒い呼吸や汗が頬を伝うのを無視し、折られた半分の剣を男達に向けていた。


呆気あっけにとられている男達の中でただ一人。


冷静にネシスの事を見ている男がいた。

テーブルの真ん中に居る一番体格の大きい男だった。


-はっはっはっはっ!-


突然男は笑い出した。


-中々勇ましい小僧じゃねえか。なんだ?この村の生き残りか?-


微笑を浮かべ問いかけてきた。


-あぁそうだ。-


荒く息を吐きながら答えた。

いつでも戦闘を行えるように態勢を崩さないまま。


-そうかそうか。-


頭を縦に振りながら微笑を浮かべたまま話を続けた。


-どうだ?小僧。仲間にならねえか?若いのにお前のその勇ましさ。俺は惚れたよ-


ふざけた事を言っているその男により強い怒りがこみ上げ、口びるを強く噛み締めた。


-ふざけんじゃねえ!誰がお前らの仲間になるか!!ぶっ殺してやる!!!-


半分の剣を振り上げ斬り掛かろうとした。

次の瞬間。

男はテーブルの上に突き刺ったネシスの剣の刃を引き抜き、人差し指と中指の間に挟み、手慣れたようにこちらに投げ飛ばした。


刃はネシスの頬をかすめ背後の壁に刺った。

頬からは真っ赤な血が流れ出ていた。こみ上げていた怒りは血と共に流れ、頬の痛みと共に正常に戻り、ネシスに恐怖が植えられた。


”この男は今、俺を殺せた”


その力の差の現実がネシスを包み込み、身体は震え、身動き一つとれなかった。


すると男は椅子を立ち、ゆっくりと‥だが着々と‥近づいてきた‥‥



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