この声を、全てを
乾いた風、乾いた地面、むせかえるような血の匂い。そんな戦地に咲く花。
僕らの希望は、その花が抱く大きな力だけだった。凛と前を見据え、その瞳に映る世界が僕らの全てだった。
そんなこと彼は望んでないだろうが、僕らには、あなたしかいないから。
あなたに預けるしかないのだ。
この背を、この手を、この声を。
あなたと生きたいと叫ぶ細胞一つひとつを大切にしたい。
死なないでください。
誰かの血で濡れても、あなたの血で濡れないでください。
狂気だと笑われても、僕らの全てはあなたに預けたのだから、生きてもらわないと困る。
「っ、スイム……さ…」
乾いた風にむせ込んだ乾いた咳。次第に激しさを増し、やがて、ごぼ、と嫌な音がする。背中をさする手に震えが伝わり、乾いた地面に鮮血の花が散った。
「「「「「スイムさん!!!!」」」」」
重なる5人の声。
風に運ばれて戦地を巡る悲痛な生への叫び。
どこまで届くのだろう。
弱い弱い、たった一人が5人集まっただけのこの声は。
どこまで届くのだろう……
end