第四話 動き出す虹・4人目
四人目を担当します、星羅です。
私の子はルノーラ・ノア。愛称ルノです。魔法使いで、極度の寒がりです。
あんまり上手い文章は書けませんが、
これからよろしくお願いします。
南国カディム、場所を若干移動して、森の外れ―
「あれぇ?なんでサージャ帰ってこないんだろう?」
南国の夏だというのに超厚着の少女――ルノは森の入り口にある大樹の下で待ちぼうけをしていた。
まぁ、待ちぼうけとは行っても、ちょろちょろ遊びに来る小動物たちの相手をしていたので全然暇ではなかったのだが。
ルノ曰く友達(本人がどう思っているかを気にしたことはない)である、同居人、サージャ・エリナシスが「森に行ってくる」と言い残して出て行ってから早3時間。
いい加減戻っていても良い頃だと思って見に来たのだが、ちっとも帰ってこない。
ふと、小鳥が飛んできてルノの束ねた真っ白い髪を引っ張った。
「痛い痛い、なにすんのさ、ちょっとやめてー」
タンポポ色の大きな目がだんだん涙目になってくる。
それでも小鳥はパニックに陥ったように、ルノの髪を加えて森の奥へ引っ張ろうとする。
「オッケーオッケー、分かった行くよ、だから一回私の髪はなしてね。で、何があったか教えて?」
そういうと、小鳥は、まるでこちらの言葉を理解したかのようにルノの髪を放した。
「じゃあねー……あ、これがいいや“リーナ・トーラー”」
ルノが手をかざして呟くと、小鳥に淡い光が宿り……、なんとしゃべりだした。
「ルノ、タイヘン、サージャ、キツネ、ヒ、ヤジュウ、ホネオッタ。」
「あー、なになに?サージャと狐と野獣?狩りしてるのかな?」
「チガウ、サージャ、ニンゲン、タベナイヨネ?」
「え、ちょっと待って、今人間何人出てきた?」
「サン。サージャとキツネとヤジュウ。」
「あぁ、分かった!狐と野獣が、サージャを襲おうとしたんだ!盗賊かな?」
「ソコマデワカンナイ。」
小鳥は首を傾ける仕草をした。
「ま、どっちにしろ身の程知らずにもほどがあるよねー。ま、いいや、今サージャ何処にいるの?」
「ドッカイッチャッタ。ナンカ、サガシテルミタイダッタ」
「そっか、じゃあサージャはルノが捜してみるね。ありがと、ばいばーい。」
小鳥に手を振ると、ルノは森の奥へ走っていった。
「キヲツケテ」
背後から小鳥の声が聞こえる。あの小鳥もじきに元に戻るだろう。
約十五分後…
先ほどまで森の奥で、目撃者の捜索に神経を集中させていたサージャは、森のそこかしこから聞こえてくる、自分の名前の連呼に、激しい頭痛とめまいを覚えていた。
よくもまぁ、森の中をあれだけの速さで移動するものだと、若干の感心も覚えるが、今はただ迷惑なだけである。
無視して、捜索を続けるか、捕まえてやめさせるか迷ったが、結局、目撃者はサージャが自分の名前だと知らないわけだし、焦ってしっぽを出せば逆に好都合だと思ったので放っておくことに。したのだが………
「サージャはっけーん!」
底抜けに明るい声が空から振ってくる。
わざわざ上を向かなくても分かる、ルノだ。
対魔法製ケープ(自称)をふくらませながら飛び降りて来た。
「あのねサージャ、聞いてっ!」
「今忙しいわ」
「ルノね、チョコレートケーキ焼いたの!」
「いらない」
「でね、チョコレートとお砂糖が、ちょっと足りなかったの。だから、見た目似てるしいいかなって、思って、カレールーとお塩いれたのよ。良い感じにできたよ。たべて!」
「激しくいらない。有害物質は自分で処理して」
「晩ご飯いらないの?ケーキしか用意してないよ?」
「……(人の邪魔してないでとっとと帰ってまともなもん作れやという視線)」
にらまれても、ニコニコと笑っているルノを見て、サージャの苛立ちは50%増量される。
さっさと追い返そうと、口を開いたそのとき…
ガササッ
茂みが揺れ、体長三メートルはあろうかという巨大な熊が現れた。
それを見た二人は…
「ねぇサージャ、ケーキがイヤなら晩ご飯これでいい?」
「有害物質よりは。ていうかこれ、街で噂になってた“人食い”じゃない?」
「んじゃ、退治します!」
怖がるとか、なんとか、そういう感情は皆無だった…。
サージャとしては、これ以上騒ぎを起こして欲しくないという思いもあったのだが、
もしまだ目撃者が近くにいるなら、絶対にしっぽを出す。
そんな確信もあった。
結局のところ、これだけ張り切ってるルノは気絶でもさせない限り止められないので、ここは賭けるしかなかった。
「ここんとこ寒い日が続いておりますので(どこが)張り切って、景気よくいきましょー、焦げはガンのもとなので、今回は、詠唱なしでまいります」
「はやくして」
「……はい。じゃ、いっきまーす!“フィア ・レイズ・クラーム”!!」
手前に掲げたルノの手のひらから、とんでもない大きさの炎が吹き出して、一気に巨大熊とそのまわりの木々を飲み込んだ。
「そろそろ焼けたかな」
「早く火けさないと炭になるわよ」
「ちょっとそれ早く言って」
ルノが慌てて火を消すと、例の熊は黒こげに、木があったところは…
そこだけぽっかりと丸く、焼け野原になっていた。
「いやー、だいぶ暖かくなったね。ちょっと焦げすぎ…て、さ、サージャ?」
ルノは、茂みの奥を見つめたまま、硬直したように動かないサージャを見て、驚く。
―――いつもなら、ここで、「やりすぎ」とか、「…ハァ」とか言ってくれるはずなのに…
「見つけた、間違いない」
「サージャどうし…」
「ルノ、帰って」
そういってサージャは走っていってしまった。
そして、この状況で、おとなしく帰るルノではない。
「まって、サージャ、ちょっと、なに…」
走って追いかけ、すぐに追いつく。幸い、遠くへは行っていなかった。
追いついたサージャはただ、何かを冷たい目で見下ろしている。
ルノも、サージャの影から、それをのぞき込んで…
「え?」
~ルノの魔法メモ~
①リーナ・トーラー
本文を見ていただければ大体分かると思いますが、生物と話ができるようになる魔法です。あまり複雑な言葉は話せないのと、持続時間の短さが欠点。
②フィア・レイズ・クラーム
ルノの十八番。炎系の魔法です。本当は発動前に、呪文の詠唱があるのですが、魔力の量に物言わせて、飛ばしてるようです。ただし、細かいコントロールができない模様。
あ、そういえば、ルビ振ってありますが、ああいってるわけではなく、意味…って感じかな。ちゃんと、カタカナ叫んでます(笑)