第三話 動き出す虹・3人目
3話目を担当させていただくことになりました、玖龍です。
私のキャラクターは「サージャ・エリナシス」です。
駄文しか書けませんが、末永くお付き合いいただけたらと思います。
それではよろしくお願いしますm(--)m
所変わって南国カディム。
この大陸のどこよりも早く夏を迎えた明るい国。
活気づいた街、涼を取り入れた街。
人々はそんな国の様子を具現したかのように陽気で、観光客は皆一様に言う――カディムはいいところだ、と。
そんな国の片隅。
暗く、魔獣が住んでいそうな森で一人の少女が大柄の男2人に絡まれていた。
男たちが好色な目で見ている、少女の姿は異様だった。なんというか……人間のそれではなかった。
髪は緋色、合わせたような灼眼。肌は褐色……この国でもあまり見ない(特に髪と眼の色)組み合わせだった。
「兄貴、こいつどうします?」
狐のような顔をした男が言った。
するともう一人の野獣を思わせる姿の方は笑った。
「こらこらザレス。淑女には優しくするものだよ。……お嬢さん、こんな暗い所を一人で歩いてはいけないよ。お困りでしたら俺等が助けますぜ?」
にやにやとした笑いを顔に張り付かせ、問題の少女を見下ろす。
しかし少女の方は全く相手にしていなかった。寧ろ、男2人を空気以下の存在として見ていた。
慌てる様子もなく、ただ邪魔な壁を避けて歩こうとした……が、止められた。
「この先に進もうってかい?なら俺ん家寄っていけよ……悪いようにはしないからさぁ!!」
「!」
突然野獣の方が少女の手首を掴むと、開いた方の手で口を塞いでしまった。
「あっはっは!俺様が大切にかわいがってやるよ!!あっはっは!!」
『呑み込め』
少女が手のひらの下でそう呟くと、男の手が火に包まれた。
「あっつ!!な、なんだ!?」
喚きながら男が急いで手を離した隙に少女は男たちから逃れた。
そのまま通りすぎようとすると、狐男が叫んだ。
「おい、女!!なにしてんだ!!早くこの火を消せっ!!」
しかし無視。
それにムカついたのか、狐男が追ってきた。
「テメー、女だからって容赦はし……いぃぃぃ!?」
自分の肩にかけられたその手を掴み、自分より3倍はあろうかという巨躯を思いっきり背負い投げをする。
信じられない力で投げ飛ばされた男は、呻くのも忘れ、ただぽかんとしたまま地面に横たわっていた。
それを見て、指をパチンと鳴らす。
すると野獣の手を蹂躙していた火が姿を消した。
もちろん火傷の跡はない。
「な、なんだ……?」
「魔法よ」
初めて少女は口を開いた。
「ま、魔法ってことは……そうか。そうだっ!!これならお前の変な見た目も、あの馬鹿力も説明できるっ!!お前は……人間じゃねぇなっ!!」
得意そうな顔をすると、ビシッと人差し指を少女の方へ立てた。
「お前は……」
「その先を言ったら……こうよ」
長い指で首の前の空気を切る……つまり首がなくなる、ということだ。
それをこけおどしと取ったのか、男はせせら笑った。
「はっ、バカも休み休み言いやがれ!お前にゃ無理だ!……ザレスごときを倒したぐらいで図に乗るなよ」
「……」
男を飽きれたように見る、無言で。そして前屈姿勢を取ると、そのまま飛びかかろうとした。
しかし飛びかかることはなかった。
はっとしたように横の森を見ると、そのまま臨戦態勢を解き、足早に立ち去ろうとした。
「ま、待てっ!」
「そうね……骨ぐらいもらっていこうかしら」
「へ?」
そう言うと少女は男の方に肉薄すると、ぶっとい腕を掴んで少し力を加えた。
すると鈍い音を立てて、腕は変な方向に曲がってしまった。
「な、なにするっ……痛い!」
その声を聞くと、何か汚らわしいものを触ってしまったというように腕を離すと、男の耳元に囁いた。
「あなたたちは喧嘩したのよ……私のことを言えば、あなた、ほんとに首取れるわよ」
そう言うと男を突き飛ばして、その場から走り去った。
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「誰かが私を見てた」
憎々しげにそう呟くと、先ほどの少女は森へと入って行く。
気配と辿ればいずれ見つかるだろう。
先ほどのことを口止めさせなければ……自分の存在は危ういものとなるだろう。
ぎゅっと手のひらを握り、ずんずんとおくびもなく森を進む。
「サージャ……あなたにはまだやることがあるわ……見つかるわけにはいかないの」
目の色をさらに強い紅に変え、少女――サージャは名も知らぬ、顔も見ぬ目撃者を探すこととなった。
〜サージャの魔法メモ〜
①「呑み込め」
そのまんまです。
サージャは人物紹介でも書きました通り炎系魔法行使者です。
今回は「呑み込め」でしたが、炎を行使し敵を攻撃します。
「呑み込め」は所謂コード、ルーンみたいなものです。
私以外は素晴らしい筆力を持っていらっしゃるので、よろしくお願いしますm(--)m