表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RAINBOW!~wanders of comet~  作者: 七須木雨人
集まる虹、揃う虹~商業都市ランギル~
27/28

第二十六話 しちてんばっとー

遅くなって申し訳ありませんでしたぁぁぁぁっ///

その割に低クオとか分かってますから、すみませんm(´・・`)m


とりあえずいってみよ~!!

「お…やめ……放せ、、よ……。。。」


などと抵抗を試みるが無駄だった。今ボクはルノに無理やり手を掴まれ、あげさせられ……引きずられている。ああ見えてルノの握力は異常だ……。というかこの間知り合った奴らは皆、非常識だ。


「ジェン~、速く行かなきゃいけないんだよ~。自分で走ってよー、ねー。」


ルノがぬけぬけと言う。いや、本人にそんな自覚は無いんだろうけど……。

それにしても、こうやって引きずられているとなんだか、不思議な気分になってくる。


強いて言うならそれは――――――――――既視感デジャビュ






何かを追いかけていた。ボクは森をひた走る。ボクの隣には、誰かがいて共に森を駆けていた。膨れ上がる焦燥、忍び寄る恐怖。「あっ。」ボクがよろめくと、その誰かはボクの手首を掴んで走り続けた。誰かの指が、今よりずっと頼りなかったボクの手首に食い込んだ。ボクらは泣きそうに走り続けた。




「ジェンっ?速くって言ってるじゃん!!走ってよっ!」


ルノの声で我に帰る。


「……ごめん。」


ぼそりと謝り、足を速めたものの、意識は渦巻く思考に飲み込まれていった。





追いかけて、なんとしても追い付かなくてはならなかった。何を追いかけていたのか、誰と追いかけていたのか、どうして追いかけていたのか……。今となっては何も分からない。それがいつのことであったかすら覚えていない。記憶喪失……とは少し違う。あえて表現するならば、どうしても思い出すことの出来ない、夢。断片は嫌というほど鮮明に思い出されるのに、大切なところがそっくり抜け落ちてしまったかのようだ。

 覚えているのは走って走って走って、必死に走っているところ。それから、すっごく怖くなって、絶望。下卑た笑い声。ボクの隣にいた誰かは泣いていて、ボクは何も出来ずに突っ立ってて。叫び声がしたところ。その叫び声は悲鳴だったのか怒号だったのか……。


 でも。その先を思い出そうとすると、目の前が真っ赤に染まる。鮮やかなそのあかはまるで、まるで……。





あ、っと思った次の瞬間、左手に痛みが走った。更に次の瞬間に、やっと自分が転んだことを知った。


「ジェン?大丈夫……?もしかして握りすぎた??」


いや、握りすぎでは転ばないけど……。微妙にリアクションずれている(いつもだけど)ルノ。それにしてもさっきのは……。


「ねー、ジェンんー。早く行かないと駄目なんだよー。クラがなんかやってるんだよー。」


いや、思い出してはいけない。なんとなくそんな気がする。意識の奥へ、奥へと埋没させるんだ。


「ねぇジェンっっっ!!!」


「うるさいっ。」


「でもクラが……。」


もう限界だった。耐えきれなかった。


「クラがどうしたっていうんだよ。別に昨日今日知り合ったようなやつを気遣う必要ないだろ。ボクはあの軽薄男のことを何も知らない。ボクは知らない人の為に尽くせるような奴じゃない。そもそもお前だってボクのことを何も知らないじゃないか。ジェンなんて本名ですらない。仲間でもない奴のことをどうして引っ張り回すんだ。」


勢いに任せて言ってしまう。しばらく前に市場で思ったことは、すっかり忘れ去っていた。あの記憶の断片はボクにそうさせるだけの力があった。しかし……


何言ってるの?(愚問だな)


いつものルノの声、いつもの話し方。しかし、いつにない迫力を伴ってルノは一笑してのけた。それを聞いてボクは、背筋にヒヤリとしたものを感じた。まるで、誰かがルノと共に僕を嘲笑ったかのような。


「仲間じゃないから?知らないから?ジェンは市場で、そういうの無しにして喧嘩止めたんじゃなかったの?何を今更。知らないと気にしちゃ、助けに行っちゃだめなの?ジェンの馬鹿ぁ。馬鹿馬鹿大馬鹿ぁっ!」


「そ‥‥‥それは、その‥・」


そんなに馬鹿って言われても。ルノからは妙な迫力が消え、いつも通りになっていた。


「ほら、行くよっ。早く立ってよ。」


言われてボクは自分がまだ座り込んだままだと気づいた。でも・・・立ち上がりたくない。このまま座り込んで、ルノが、クラが、記憶が遠ざかってゆくのを待っていたい。


暫くして、渋々ながら立ち上がる。


「あっ。」


ルノが何か思いついたようだった。こういう時はまず、いい事なんてない。


「ジェンって本名じゃないんだよね?じゃあ、本名聞いてあげたら来てくれる?」


人が思い悩んでいる時に、また謎な提案だった。しかも聞いてあげたら、だって?


「ね、いい考えじゃないっ?ねぇ、本名教えてよ!それで一緒にクラのところに行こっ。」


「嫌だ。」


「えぇぇー、いいじゃんっ。ジェンも聞いてもらいたいんじゃないの?」


「そんなことは……。」


ない、と言いけれないところが辛い。もしかしたらボクは誰かに聞いてもらいたいのかもしれない。


「うーん、じゃあ当ててあげるっ!えーとね、ジェン……ジーンとか?」


「違う。」


向こうは強硬手段に出たようだ。


「ジェ…ジェニファー。」


「違う。」


「ジェ、ジェー、ジェリンダ。」


「無理やり感あふれてるぞ。」


言いあてられるかと緊張しているのに、普通に答えられてしまう自分が憎い。


「ジェ、、ジェニー。」


「男の名前だ。」


「ジェクシー。」


「結婚情報誌?」


「ジェリール。」


「誰だ?」


「ジェットマン」


「ロケット花火か?」


「うーん、ジェンヌとか、ジェンナとか?」


「違ぁ……。」


わなかった。ついに当てられた。


「あ、あっちに蝶々だっ。」


「え、ちょっと……?」



―――――――――3分後


「みて、ジェン~っ。キレーだよぉ!」


ボクの名前どこ行った。しかもまた蝶。ちなみにボクは蝶があまり得意ではない。


「やめろ。あと今までの話は……?」


「えー?あぁ、まあ、人生はしちてんばっとーで頑張ればいいんだって!」


七転八倒?話の流れが全く見えないし、しかも微妙に用法を間違っている気がする。


「そういえばしちてんばっとーって何のことかな?」


聞かれても困る。こっちが聞きたい。するとルノはなにか思いついたらしい。


「技の名前だね。」


「はぁ?」


これにはさすがに声が出た。なんの技だよ。


「七転抜刀だね、うん。七回前転して抜刀するんだよ。」


「………………。」


「ジェン?怒った?なんか違ったっけ、えぇっ?」


大真面目に言って大真面目に戸惑うルノ。それを見ているとついつい


「くぷっ、ふふふ。あははははは。」


笑ってしまった。


「あははははは、ははっ。くふふふっ。」


「ジェンが壊れた、壊れたよっ!どうしよう。」


ルノが焦る。ボクの笑いは止まらない。別に面白くもなんともない駄洒落だ(本人には洒落を言ったつもりもない)。それでも笑いを止めることはできなかった。なんだか、いろいろとどうでもよくなった。ボクは笑いながらフードを外した。フードに隠されていたボクの長い白銀の髪が、光を受けてキラキラ輝いた。


「ジェンナだよ、ジェンナ。正解だよ。よし、じゃあクラんとこ行こっか!」


「え、えぇっ、誰?いっぱい笑ってるよなんか明るいよあのジェンが。根暗さんが、壊れたよ?」


なかなかに酷い言われようだ。それでも


「ジェンナだよ。ほら、行くよっ。」


ボクは笑いながらもう一度言った。


「うん、なんだかよく分かんないけどいいかっ。よーし、れっつごー。」


ルノはいつもの単純さで、走り出した。



七転抜刀。

ボクもいつか、七回目の転倒を経て、抜刀できる日が来るかもしれない。

なんか、そんな気がする。



ちなみに……



―――――――――――――――――――――――――――――――――――☆


「ねー、ジェンは何転目?」


「ん?秘密ぅ♪」


「♪?誰?」


「だからジェンナって言ってるじゃん。」


「うん、で、何転目なの?」


「えーっと、秘密だけど~、何転目かなぁ♪」


「別人だよね?え、なんで??」




……ジェンナちゃんは、フードを取ると人が変わります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ