第二十三話 恩の定価は幾らぐらい?
連続投稿なり! 時間の都合上、今日中に投稿をすませたかった麻婆豆腐です。
執筆のために過去の話を読みなおすと、誤字だらけで恥ずかしいです……。
優男が目の前で、騎士らしい男に連行されていった。
今日も、やっぱり平和だった、まる。
「ちっ、ったくしょーがねぇな。お偉いさんは要はさっきのなんちゃら商会? が奴隷売買やってたってことをしらねぇんのかもな。」
罪状その二に多少、身に覚えがある以上無視するのも忍びない。
そういえば、買ったばかりの必中の弓が、思わぬところでその真価を発揮するな。
奴隷商人だった、という事実を認めるギルドの証明書と、俺が受けていた依頼と身分証明書を、矢尻を外した矢に括りつけてアッキヌフォートで射出。
目標はもちろん、さっきの騎士。
後はあいつが勝手にするだろ。
「さてと。そこのじゃじゃ馬酔っぱらいさんよ、朝から二回も喧嘩売ってきやがって、何がしたいんだ?」
「それはもしかしなくても私のことか」
ジャキンッ
金属音とともに、奴の手の中に現れた薙刀。
「わかったなら早く事情の説明を」
「お前が窓から飛び降りてきて喧嘩売ってきやがったからだろう?」
「は?」
「あ?」
……数秒の沈黙。
「何時喧嘩売ったのか記憶にないんだが」
「若年性アルツハイマー患者かお前は。バカと記憶障害は魔法でも治せないぞ。あの時着地寸前で、いきなり剣抜いただろう? 当たりはしなかったが髪を一房ほど、切断されたんだが」
「それだけで死合いを始めるのかお前は……」
がっくりと肩が落ちる。
なんというか、分かってしまうとどうしようもなく単純な動機だった。理解はできないが。
★☆★☆事情説明中☆★☆★
魔人の件云々はぼかして、窓から飛び降りた際の着地点に奴がいたこと、激突を避けるために攻撃技を応用したことなどを説明した。
「……」
「……」
それから、既に時計の長針が1800°ほど回ったものの、部屋は奇妙な静けさの中にあった。
怒っているのか? と、何時動きが合っても対処できるように雷切の柄に手は掛けたまま、ルノとジェンナ……だったか? に目を向ける。
どうでもいいが、男が少ないな……と若干の居心地の悪さを感じる。いや、確かに男っぽいのは一人いるが。優男、クラディーだったか? を人身御供にしたことを少し後悔した。
「ジェン、今ここで笑っても問題ないと思う?」
「……多分、問題があったとしてももう手遅れだね」
無邪気な声で尋ねるルノと、やや顔をひきつらせながらこちらを伺うジェンナは少し放置しておくことにした。
「……とりあえず用事がある。もう会うことはないだろうが、もし次に会ったら、俺が何してようと邪魔だけはするなよ。間違えてお前に攻撃するかもしれんからな」
まだ口を開こうとしない奴……サージャ? に少々寒気を覚えたものの、纏めてあった荷物を部屋に取りに帰った俺は、今度こそ窓から飛び降りた。
道中、三人組の気配に注意しながら、捕捉したばかりの敵を追いかける。
宿を出てから数十分が経過し、宿前の道の弁償代を払ってないような気がしたものの、今さら戻る気にもなれずにもう一人の犯人に丸投げすることにした。
別に必中の弓を使えば届けることぐらいはできるだろうが、放物線ではなく地面と平行に障害物を避けて飛んでいく性質上、物凄く目立つ。
一日に何度も路地を曲がる不気味な矢が目撃されれば、噂になることは必至だ。
「って俺は、なんで戦闘前に余計なことを考えているんだ? まだまだ未熟だな……」
遂に射程圏内にその男の気配を捉えたところで余計な考えは頭の中から排除する。
傍らにいるスピカに頼んで自分の気配を消してもらい、キリキリと弓の弦を引き絞る。
対象をしっかり認識できないと追尾効果を発揮しない。という欠点もあり、意外と使い勝手の悪いアッキヌフォートから、上空に向けて大量の雷でできた矢を放つ。
対軍兵器に匹敵するあのナイフを、少々不恰好になったものの矢の先端に取り付けて射出。これでも命中することが分かっているため、あまり気にしない。
もうひと振りの方は鞘に納めて温存しておき、俺は……使える最大級の魔法の構築を始めた。
今近づくのは自滅行為。相手の能力も未知数な以上、遠距離から消耗させられるうちに攻撃はできるだけ済ませたい。
そう思った矢先。
可視範囲ぎりぎりにいたあいつが、不意にこちらを向いた。
――――にやり、と不気味な笑みを浮かべて。
意外とチートではなかった各装備。伏線もろくに回収しませんでしたが……すみません。