第十七話 宴会と殴り込みと
メリークリスマースッ!!良いお年を~!
クラは僕(久本)が書く時だけ主人公補正がかかる不思議な子(笑)。
ジェン(ちゃん)がなんだかんだ言いながらも加わって、そのままのノリでちょっとした飲み会に突入………で、そのままさらに数時間が経った。その間にライト君が、
『お前らは勝手にしてろ。ただし、騒ぎ過ぎるな』
との一言と共に退場。ふむ、酔いつぶれたようにも見えなかったし、何か予定でもあるのかな?
その後も残る4人で飲んでたけど、今度はルノちゃんが、
『じゃあ、寒くなってきたしルノはもう寝るねっ!また明日ねー!!』
と、どこからか持ってきた毛布を全身に巻きつけたまま部屋を後にしていった。……………ん?寒い?風邪………かな?さっきも熱帯夜お構いなしに暖炉に火点けようとしてたし。まあ、それは流石に全力で止めたけれども。
その後も3にn(以下略)といった感じで一人また一人と人が減っていって(といってもサージャちゃんとジェンちゃんだけだけど)、最終的には僕一人に。べ、別に一人でも寂しくなんかないし、第一まだここにいるのだって引っ込むタイミングを逃したとか、決してそんなことがあったりするワケじゃ無いんだよっ!
「…………なんて、誰もいないのに喋ってても虚しいだけかぁ………もう一杯飲もっと」
馬鹿らしくなってきて、かれこれ12本目の酒瓶に手を伸ばす。普段ならさらに10本位は空にしないとしっかり飲んだ気になれない………多い?異常?まあ、鬼だの天狗だの河童だのと仲良くなれば、大抵の人はワイン一樽ぐらい文字通りの朝飯前に飲めるようになるよ………けど、今回はちょっと特別。明日は、ちょーっとばかり用もあるし、ね。
酒を注いだグラスをなんとなく目の高さまで持ち上げ、ガラスの中の液体をじっと見つめる。そのままボーっとしていると、後ろから声が聞こえた。
「……まだ、いたのか?」
ゆっくりと後ろを振り返ると、そこにはサージャちゃんがいた。ちょっと驚いたけど、そこは特に表に出さずに返事する。
「ん、まあね。サージャちゃんこそ、一体どうしたの?」
「別に。……私も、一杯貰っていい?」
「?……そりゃあまあ、別にいいけど。飲み直しでもしに来た?」
そう言うと、無言でグラスを突き出してきた。はいはい、いいから注げ、ってことね。
そのまま、しばらくの間はどちらも喋らずにグラスを傾ける。そうして一瓶空にしたあたりで、いきなり話しかけられた。
「おい」
「何?」
「その、今日の昼のことだが。あの金髪から、大体の話は聞いた」
金髪?ああ、ライト君ね。なんかさっきも二人で話してたからちょっと気になってたけど、なるほど、その話だったんだ。
「だから、お前には一言だけ言っておきたくて。あの一件については、私の勘違いだった」
ああ……そういうことね。多分、他の人がいる前で僕に頭を下げるのに抵抗があった………いや、そうじゃあないだろう。いや、それも少しはあったんだろうけど。まあ、僕にはそんな人の心の中を読んで楽しむような趣味は無い。色々あるんだろう、色々。
「ん。……ありがと」
「ヘ?」
まさか謝って(本人からすればあれでも謝罪のうちに入るんだろう)お礼を言われるとは思っていなかったのか、ちょっと間の抜けたような返事を返してきた。
「いや、僕は別に気にしてなかったんだよ?そりゃまあ怖かったことは否定できな………ゴホン、しないでおくけどさ。だから別にいいのに、わざわざそれを言いに来てくれたんだし」
だから、僕が礼を言うのは当然じゃない?と結ぶ。
「そう、か?クラディー、最初に会った時から思っていたが………」
「ん、なーに?僕がどうしたって?」
「お前は、本当に変なことばかり言うんだな。それだけだ」
ガクッ。全く否定できない所が辛いなぁ………ショボーン。しばらく落ち込んでよっと。
「じゃあ、僕はもう寝るからね~。お休み、サージャちゃん。………あ、それと一つ」
「どうした?」
「僕の名前は、『クラ』だけでいいよ。いちいち『クラディー』なんて言わなくったって」
別に拘りやらなんやらがあるわけじゃないけど、なんとなくこっちで定着してるからね。もう、本人ですらこっちのほうがしっくりくるぐらいだし。
「………そう。わかった、クラ。また明日。………それとだな」
「ん?」
「私のことも、呼び捨てで構わない。下手に敬称を付けられるのは性に合わないからな」
「りょーかい。それじゃ、サージャ」
無言でこっくりと頷き、そのまま背を向けるサージャ。さてと、もう寝るとしますかね。
朝が来た。よし、体調も万全だし、フォーティテュードの状態も問題ない。それじゃあ一丁、やってみますかね………と、その前に。置き手紙ぐらいは残しとかないとね。ということで、そこら辺にあった紙にしばらく出掛けることと、昼過ぎには戻ってくることをメモしておいた。
「これでよし、っと……」
ひっそりと呟き、持ち物の確認―――――といっても、服と剣だけだけど―――――をして、窓を音がしないように開けて、一応誰も見ていないことを確認してから飛び降りる。そのまま、何喰わぬ顔をして歩いていく。
そのまま約20分。朝の市場をくぐり抜け、(朝早いから)静かな住宅地をゆっくりと歩き、……………着いた。昨日スピカと一緒に街をぶらぶらしながら表から裏から手を回してやっと掴んだ一つの住所。僕がこの街に来るきっかけになった元凶。奴隷商人の、ランギルにおける支部。
まず奴隷ってのが気に入らないし、そもそもそんなものに手を貸した(昼寝してただけだけど)自分のことが気に入らない。
うん。僕は今、割と本気で怒ってます。
「それじゃ、景気よく行きますかね………!」
言い放ち、ゆっくりと腕を構える。魔力の集中――――――――――からの、発動っ!!
「頼むよ―――――行け、【アクセルスター】ッッッ!!!」
一瞬の間も無く、言葉と共に飛び出す頼りになる反動。流星のように光る、どこまでも真っ直ぐな光線が飛んでいき、シンプルな見た目の建物に直撃して大きな風穴を開ける――――――――――!!
「よし……」
ちょっとさっぱりした気分で眺めていると、中からぞろぞろとGではじまる某黒光虫のように出てくる目つきの悪いおにーさん達。面白いのでそのまま見ていると、挨拶もなしにいきなり大勢で斬りかかってきた。
「おっと!?」
まあ、負ける気はしないけれども。全員この場で、骨の2~本でもへし折っておこう。自警団達に引き渡す前に、それ位はしておいても罰は当たらないよね?
~クラディー・ウェルの魔法メモ(今回から表示の形式を変えてみました)~
2:【アクセルスター】
威力:高 範囲:単体 魔法属性:光
備考:流れ星をイメージして造られた魔法。単純、明快、豪快、一直線。スピードこそ異様にあるものの動きが単調なので(直線のみ)、意外と避けやすい。そんな弱点こそあるものの、単純ゆえに扱いやすいこともあって彼お気に入りの魔法の一つ………というか、もはや代名詞になっている魔法。『当たらない』という弱点を克服するためにできた、いくつもの亜種や発展形がある。
クラにとっての加速の綺羅星は、アレなんだよ。某かめ〇め波とか、某マスター〇パークとか、某ラス・オブ・ネ〇ス的な立ち位置の。ほぼ代名詞って意味で。