第十四話(*) 黒髪優男捜索の旅
冬眠したいと日々思ってる、玖龍です。
ガチで冬眠したい……!そして英語小テスト乙。。
……こんなところで愚痴っていても始まりませんね(汗)
「いやぁ……ちょっと通せないかな、うーん」
ところ変わって、サージャはカディムより西にあり、大商業都市ランギルを抱える、サロベイユという国へ入国しようとしていた。
いつも通り、無表情の仏頂面なサージャは、いつも通り目の前に立つ人物をじーっと見ていた。
隣の国へ行くだけでも、入国審査というのが行われる。
目的は多々あるが、とにかく不審な人物は入れないように、というスパンダム大陸全土の国で決められている、いわゆる国際法だ。
入国には、まず身分証明書が必要だ。
国籍やら、プライバシーやらを記した、ちょっとした証明書があれば、大体通してもらえる。
今や、認証システムも格段に進歩したので、偽造されたものはすぐに見破られ、御用となる。
「ね、お嬢さん。こういうのがないとサロベイユへは行けないよ?」
役人風の男が手元から1枚の紙切れ――――国際法で定められた規程の証明書を取り出す。
「ふん。そんなものがどうした。ただの色がついた紙切れじゃないか……金の無駄だ」
サージャが男に向かって吐き捨てる。
もちろん……サージャがそんなものを持っているはずがなかった。
元々、ここに来る予定はなかったのだし、まず、家にもない。ルノーラなら持ってるかもしれないが……。
(ルノーラと来ればよかったかもな……うるさいけど)
サージャがそんなことを思っていたとき、彼は若干眉を顰める。
「あのねぇ……!さっきから無駄だ無駄だって言うけどさぁ、これって立派な犯罪防止なんだよ?だからやってるわけ」
「私がそんな重大な犯罪を犯すように見えるのか?詳しく言ってみろ……何時間でも付き合ってやるぞ」
「いやさぁ……そんなこと言ったらおしまいだよね」
それに、とサージャは口を開く。
「おまえたちの管轄ではないが、易々と奴隷商人を入国させているくせに、私を入国させないとは一体どういう料簡だ?」
「なんだって!?」
男は軽く悲鳴を上げる。
奴隷商人の存在は後を絶たない。
これも国際法で定められているものの一つで、全国家に納められている、国際規程書に『人々を強制的に拘束・服従させることはできない』とある。
そういうわけで特に厳しく取り締まっているはずの奴隷商人の入国を見逃してしまった同僚に軽い失望と、奴隷商人に怒りを感じたのだった。
「まぁ、安心しろ。どこかのギルドが1件は未然に食い止めた。もう既に拘束されていた人々は解放されたようだ」
「なんで知ってるんだ……?」
「まぁ、ちょっとね……ところで入国させてもらえるかい?」
サージャは表情を変えずに言う。すると男ははぁーっとため息をついた。
「まぁ……有益な情報はありがたく受け取っておくよ……だけどそれとこれとは話が別だ」
そういうと男は引き出しからゴソゴソと何かを取り出した。
そして胸元からペンを引き抜くと、さらさらっと文字を書いていった。
「……?」
「これ……話を聴いていると、どうやら君はこれを持っていないようだね。今回は特別さ……それに君はランギルに行くんだろう?これがないとあそこは入れないからね」
そして、ペンを手渡すとここに名前を書くよう、と言った。サージャはそれに従う。
「これで、晴れて正式に入国することができるよ。ようこそ、サロベイユへ!良い旅を」
何が面白いのか、超笑顔で彼はサージャへ手を振った。
彼女は無表情のまま一応頭を15度ほど下げ、後ろを振り返らずにすたすたと歩いて行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あの役人が速攻で作ってくれた通行所のおかげで、サージャは難なくランギルへと入ることができた。
――—―ここにあの黒髪優男がいる、はず。
サージャは周囲に気を配りながら、中心部へと進んでいく。
あの男の気を捕えられたわけではないが、目を凝らし、耳を澄ませ、集中すればわかるはずだ。
「えへへ、スピカは可愛いなぁ……あの男とは違って」
「?」
少し離れたところから、何やら変なセリフが聞こえてきた。街中で、しかもここは商業都市にもかかわらず、路上でいちゃつくカップルもいるのか……
そう思い、サージャは声の方に首を巡らす……そこには一角獣がいた。否、正確には、一角獣と戯れる、あの黒髪優男がいた。
「あ」
思わず声を漏らす……そしてクククと内心で笑った。
「さぁて……どう料理しようか」
一瞬、口角が持ち上がる。そしてすぐに元に戻る。
じぃーっとその男の動向を見ていると、突然彼が振り返った。そして周囲をキョロキョロしている。
「チッ」
サージャは身を翻す。
こんなところで大騒ぎされたら困る……!
急いで物陰に隠れて、あの男を再度観察。
すると、彼は門を出て行ってしまった!
「しまった!!」
サージャはあわてて飛び出す。もう既に彼の姿は見えない。
「……(イラッ)」
一瞬顔をしかめた後、ダッシュで彼を追いかけた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おいおーい。もう2人目だぞ?夜になるまでには戻っておいで」
「(無視)」
門番の忠告を無視してサージャは走る。
「う~ん……しょうがない、帰ろっかスピカ……」
「!!」
あの男の声だ――――しかも近くにいる!
サージャはそぅっと近くの木に身を隠す――――そして位置を確認。
――――すぐそこだ
足を忍ばせ、彼の背後まで移動。
「……火の精、サラマンダーよ。我に“永遠”の光を、輝きを」
ボソッと呟くと、どこからともなく薙刀が現れる――――サージャの愛用する武器だ。
すぅっと息を吸う。そして――――彼の首元目がけて、刃を滑らす。
「動くな」
「はいっ!?」
その男は見事なまでに竦んでいた。
ニヤッとすると、言葉を続ける。
「抵抗するな……動くとおまえの首は地面とキスすることになるぞ」
「えー……どっちもやだ……」
そろそろと彼は両手――――降参という意味で上げる。
「き、君って、ランギルで僕のことすっごい睨んでた子だよね?」
「人違いだ。おまえなんて睨んでない」
「嘘だぁ」
そう言われると、薙刀の刃をさらに首に近づける。
「おまえに発言権はない……おまえは何者だ?」
「はい?そ、そういう貴女こそ何者?」
「……発言権は?」
「……あ、ありません」
優男はシュンとなる。
サージャは首に刃を当てたまま、彼の前まで移動する。
「で、おまえは何者なのだ?奴隷運びの手伝いをしていたと見えるが、どうみても商人じゃないだろう?何がした」
そのときだった。
優男の傍で大人しく侍っていた、スピカ――――一角獣が突然立ち上がり、ひらりと向こうへと走って行った。
「あ、スピ」
男は手を伸ばす――――と同時に、彼のすぐ横の木の幹に光の矢が突き刺さった。
「!?」
彼はそのままの姿勢で飛び上る。
「あ、スピカ。こんなところにいたのか!よしよし……いい子だな!……で、覚悟はできてるんだろうな、このハゲが……?あ?誰だ、おまえ?」
現れた黒ずくめの男が、鼻を摺り寄せてくるスピカを撫でながら言った。
「あ!!ら、ライト!!」
ハゲと言われた優男が叫ぶ。するとライトは顔をしかめた。
「あ?なんで俺の名前を知ってるんだよ?……スピカが教えたのか?おいー……賢いなぁ、おまえは」
さらになでなで……
「で、そこの女。おまえは誰だ?まさかこいつの同僚か?そうなりゃ……2人まとめて滅するしかないがな」
「……あいにく、おまえにこいつは渡せない……ライトとかいうおまえこそ何者だ?」
「あ、あはは……2人とも目がマジだよ……」
サージャとライトの間には見えない火花が散り、それを見つめる優男の表情はひきつったままだ。
――—―ランギルでの初日はどうやら平穏には済みそうになかった、主にサージャのせいで。
サージャは常に武器を持ってるわけではありません。
運ぶのが面倒だから、自分たちの守護神的存在の【火の精 サラマンダー】に預けていて、必要なときに取り出します。