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RAINBOW!~wanders of comet~  作者: 七須木雨人
集まる虹、揃う虹~商業都市ランギル~
14/28

第十三話 ランギル売買

こんにちわ、おはようからお休みまで登場しない真野優です。


特に語ることもないので、第十三話、お楽しみください。

 翌朝、オリジナルの目覚まし時計で気持ち良く目覚められた俺は、何時もならあるはずの気配がないことにすぐに気がついた。


 ユニコーンである俺の相棒、スピカは人に触られるのを嫌がるため、普段は厩舎に預けたり、宿の従業員に面倒を見てもらったりはしないんだが、その代わりに戦闘時ぐらいでしか気配は消したりしない。

 色々な魔法を使えるスピカは、「大気通信(エアテレパス)」の回路を俺や、数少ない彼女が心を許した相手に繋ぐことで、距離が離れていてもさほど消耗することなく、会話することができる。  

 ただ、この魔法は、『普段認識できる、音の正体である空気の振動を減衰させることなく、特定の相手にのみ届くよう収束させ、コントロールする』という効果なため、「声を出さずに」や「水の中でも」というようなわけにはいかない。

 途中で結界でも張られていれば届かない上、そもそも相当緻密な操作精度と精神力がなければまともに発動すらしない。


 話が逸れたが、スピカの気配がないということは、どこかで戦闘状態に入っているか、寝ているか、あるいは……なにか悪戯をたくらんでいる時か。


 普段は俺よりもずっと早起きなスピカが、特に激しい戦闘も行っていないのに寝坊するのは珍しい。

 だがまあ、可能性は零ではない。知らないうちに疲れが溜まってたのかもしれないしな。とりあえず俺の持つ精神感応系魔法「念話(テレパス)」でスピカにモーニングコールを送ってみる。


『おい、朝だぞ。お疲れのところ悪いがそろそろ起きたらどうだ? 』


 何の変哲もないモーニングコール。

 そしてなぜか返信がない。


「どうしたんだ?まあなにはともあれまずは朝食か」


 首をかしげながらも、服を着替え終わった俺は、自分の部屋を後にした。

 そしてその瞬間、目に入る一枚の紙切れ。拾い上げる間もなく内容は読めてしまった。


「なんというか、スピカになつかれちゃったし、僕も楽しいしで、彼女を一日お借りするよ、ごめんね♪」

「……あの(自粛)……上等じゃねえか……!」

 

 ちらりともう一度紙切れを睨み付ける。

 魔力を込めた一瞥に耐えられるほどの紙ではなく、一瞬で燃え尽きた。


 だがスピカが悪戯で「わざと」気配を消しているなら見つけるのは困難だ。あのハ(自粛)の方も、スピカが隠してるだろうから、探すだけ時間の無駄だ。


「買い物にでも行くしかない、か。運よく見つけられれば……突然、晴れ渡った空から降ってきた雷に当たることになるだろうな、あいつは。よしそれでいこう」


 ばったりすれ違った人が何やら怖いものを見るような目つきで、こちらを見てきたがなぜだろう。そんなに黒い顔をしてたのか?


 と、思ってから先の思考が口から洩れてたことに気付いたが、何とか平静を保てたと思う。




 しばらく歩くと、ひときわ賑やかな大通りに出た。

 ここはランギルの中でも随一のでかさと質のいい店が出回っていることで有名だ。


 ちょうど反対側にある、通称「闇市場」とは真逆の存在である。


「おいそこの綺麗な金髪の坊主、なんか買ってくか?」


 この街には金髪なんてあまりいない。基本赤と黒で構成され、その色素が混ざって出来た茶髪の人も存在する。


 もちろん白髪や銀髪等もいるが、緑や青などはまだお目にかかったことがない。


 よって、呼ばれたのは俺だろうと、一応は声の主の方を振り返る。


「何を売ってるんだ?」


 そこにいたのは、いかにも「気前とガタイのいい武器屋のおやじ」だった。見に纏う雰囲気通り、営業している店は武器屋だった。


「見ての通り、武器屋なんだがな。今日はいい品物が入ったんだ。お前さん見たところ刀剣使いだろ?」

「まあそうだな。で? 続きを頼む」

「ハハッ、そうせかすなって。品物ってのは二種類あってな。一つは投擲用ナイフだ。それもただのナイフじゃなく、魔力付加に特化しててなぁ。どんな属性の魔力だろうが、本体の切れ味と投げた時の加速度が増し、しかも属性のダメージ、相手の防具の貫通力まで上がるそうだ。まあそこまで魔力を込められる奴もまずいねぇだろうが、極限まで魔力付加したナイフを刃先を地面に向けて肩の高さから落とす、ただそれだけで深さ五メートル、長さ百メートル、横幅も五メートルの地割れが起きたらしい。しかもその中心でナイフは無事に転がってたってんだからすごいよな。あ、勘違いしないでくれ、その実験は本当に誰かが落としたんじゃなく、ロープとか使って離れたところから安全にやったやつだからな。『そんなもんやった本人や目撃者も死んでるだろ、つまり嘘だなこらッ』とか言う目線でこっち見るのはやめてくれ」


……アホみたいなナイフだな。矢から矢尻を外して代わりにそれをくくりつけて、バリスタで飛ばせば……一撃で何処の城でも落とせるだろうな。


「おっさん、それ実物を見せてくれないか? 一応魔力は持ってるから、一度付加させてくれ。前向きに購入を検討中だ」

「それはうれしいねぇ。買わなくてもいいぞ、タダで切れ味上げてくれるってんなら儲けもんだ。今はだれも魔力付加してないから、属性による相克も心配がない。ほらよ、受け取れ。ただし持ち逃げしようとするなよ?」


 にやりと笑う店主だが、その眼が笑っていない。

 鞘におさめられたナイフは、質素で何の装飾も施されていない。実用性を高めたナイフだ。

 黒塗りの鞘から抜き、銀色に輝く刀身に、軽く魔力を流し込んでみる。

 すると一切抵抗を感じずに充填されてゆき、黄金色に少し光りだした。心なしか、前よりも刃の部分が鋭くなっている気がする。


「おお、お前さん雷の属性持ちか。こりゃあいいエンチャンター候補だな。ついでだから、後二本も頼む」


 何やら喜ぶおやじに頼まれて、ナイフにすべて魔力を流し込む。ある程度発行させたところで止めて渡した。


「で、おいくらなんだ?」

「なんとびっくりの99998ルドだ」

「……微妙なお得感がなんとも言えない金額設定だな」


 今の相場だと、10ルドあれば人が一日生活できるだけの金額。1ルド=100トセンで、俺の今泊っている宿が5ルド。飯なんかも含めればまあだいたいそれぐらいの金額には成る。

 次に通常の投擲ナイフが一振りで150ルドもしない所を考えると、ぼったくりでしかない気がする。

 最後に今の俺の所持金だが、あまり金を使って来なかったため、五十万ルドはある。

 硬貨は統一されているが、ルドは銀貨が500まで、金貨になると一万ルドのものがある。


「さておやじ……値下げ交渉と行こうじゃないか」

「望むところだぞ坊主。もう一つの製品も後で紹介してやるから、懐に金は残しておけよ?」


 そして壮絶な争いが幕を開けた。そして十分後、俺たちは店頭でがっちりと握手を交わしていた。


 結ばれた契約は、「さっきとは違い、俺が限界までナイフやその他の店内の武器に魔力付加を施すこと」で、五万ルドまで値下げしてもらい、二本のナイフを購入することになった。

 ちなみに、俺の魔力付加の限界よりも、ナイフの極限が先に来たらしく、ナイフがまぶしく発光を始め、これ以上魔力を流し込もうとしても押し返される感覚があるだけだった。


「おやじ……間違っても鞘から抜いた状態で落とすなよ?」

 鞘はナイフのスイッチのようなものらしく、中に収めている時は落とそうがぶつけようが反応しない、普通のナイフ。

 抜いた状態で、一メートル以上の距離を誰も触れない状態で移動した後、着弾時に魔力を一気に解放する。とこういうことらしい。

 だから投擲用でもあるが、極限までキレ味を上げたナイフだ。普通に近接戦や素材部位剥ぎ取りの際にも使える。


 これはいい買い物をした、ということでバックに収納し若干浮かれ気味の俺は、まだ話は終わってないとばかりに、それからも親父に拘束されていた。


 その後、見せてもらったのは弓。弓をメインに扱っていた店がつぶれたらしく、そこに流通するはずだった品が流れてきたらしい。三品あり、『シェキナーの弓』『アッキヌフォート(無駄なしの弓)』『虹色と雷光の弓矢(これには名前が付いていないらしく、扱えるのも雷の属性持ちだけなため、ただで譲ると言ってくれた。ただし、前記二つのうちどちらかを買えば、だが)』だ。


 俺は弓の事は詳しくは分からないが、用は物凄い古い時代から残る、如何にも何か強そうな力持ってます私的な主張をしている弓と、狙った獲物には必ず当たる弓だ。


 どちらもお値段は三十万ルド。それでも大分安いが、これ以上値上げしてもこの地域では買う者がいない。

 どこかの貴族のお飾りに使われるよりは、実際に誰かが武器として真価を発揮している方がいいんだそうな。

 そこまでなら格好いいセリフも、どのみち原価は十万ルドだったからぼったくりだがなぁ。などと余計なことを言ったために、ただの守銭奴のおっさんに早変わりした。


 今度マジックアイテムの、空間拡張収納用バックを買うか作るかしないといけないな、と思いながらも、アッキヌフォートと虹色と雷光の弓矢をいただいた。

 本来、食料を買いに来たはずなのに……。等と少し後悔もしたが、それに見合わないぐらいの上等な武器を手に入れただけましだろう。

 

 なんでも、近々どこかで戦争が起きそうな気配なんだとか。

 俺達傭兵はどうなるか分からないが、武器を手に入れておいて損は無い。

 

 とりあえず、人間を気絶させられる程度の雷を、「虹色と雷光の弓矢」の機能で矢に変換し、それをアッキヌフォートで発射した。

 必中の弓が追って行ったのはもちろん、あのハg(自粛)だ。


 あいつが帰還した時に話を聞けば、この二つの機能が正しく働いていること、だまされたわけではないことが確かめられるだろう。

 場合によっては、お仕置きもできて、能力の実験もできて、誰にとってもハッピーな一石二鳥の結果になるだろう。

 

 後は宿にいったん戻って武器を置き、盗難防止の魔法をかけた後、保存のきく食材を購入しに行った。

 

 そして再度宿に戻ってきたときには、財布の中身がほぼすっからかんになっていたのは、語るべきではないことだと俺は思う。

ミニ講座!


アッキヌフォート:ケルト神話に出てくる弓の名称をお借りしました。

虹色と雷光の弓矢:アフリカのとある民族の伝承にでてくるそうです。


なんだかいきなりライト君が強くなったような気がしますが、初期設定と違い雷以外の攻撃系魔法が使えないようになっている上、腰に二本の刀と剣を持っているときは、弓なんて背負ってられないので、遠距離主体か近距離主体のどちらかの装備になりますね。


ちなみに必中の弓だからとはいえ、当たったところで死ななかったり、貫通力が足りなくて鎧で弾かれたりはします。


久本&クラからの追記

※クラは別にハg(自粛)ではありません。んな設定付けた覚えはさらっさらないので、間違えないようお願いしますね。

追記

意外と金銭感覚のない、そして語彙の貧弱なライト君でした。

禿げてなかろうが「ハゲ」と言ってしまうのは現代でもよくあることですねw

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