第十二話 ランギル漫遊
久本です。
ちょっと今回は自分でもよく分からない話に(笑)。
まあ、クラは楽しそうなんで(基本いつもですが)それでよしとしてやって下さい(←何を!?)
それでは、どうぞ。
「んっ・・・・・・・朝ですよ、っと・・・・」
軽く伸びをして、ベッドの上で起き上がる。あー、やっぱちゃんとした布団ってのは柔らかいな~。ふかふかしてて、なんていうかもう贅沢っ!て感じがして。
でも、寝てばっかいるわけにはいかないよね。今日は、ちょっとばかり忙しくなりそうだし。
軽く顔を洗ってから着替えをし、下に降りて行くともうマスターが起きていた。
「あ、おはようござ「おはようございます、お客様」・・・・・・・おはようございます」
やっぱり掴みどころの無い人だよなぁ・・・・・決して嫌いではないけれども。
「お客様、朝食はどう致しますか?不要であればその分の代金はお返ししますが」
「あ、あれって朝食こみだったんですか!?随分安いですよね!?」
「それが、経営方針ですので。・・・・・・それで、どう致しますか?」
「あ、今日は結構です。一日中外に居る予定ですので」
「さようでございますか。それでは、お気を付けて」
「はい!それじゃ、失礼しますね!」
外に出て、さて、まずどこから当たってみるべきか・・・・。と、そこで微かな嘶きが聞こえてきた。ん?馬でもいるのかな?えっと、確かこっちの方から・・・・・
「え!?」
思わず声が漏れた。そこにいたのは馬によく似た、でも馬とは決定的に違う生き物。魔獣、妖獣、幻獣・・・・・色々な呼び名があるが、とにかくそこにいたのはただの動物ではない。
「――――――――――ゆ、一角獣・・・・・・」
信じられない・・・・・その魔力や体力もさることながら、とにかく出会いにくいと言う一点で有名な幻獣が、商業の街とはいえ街中に・・・・ってあれ?あの子、もしかして野生じゃないのかな?うん、野生じゃない。だとしたら、あのマスターか、それとも隣の人かな?どっちも一癖も二癖もあったから一角獣を連れてたとしても違和感がまるでなくて特定できない・・・なぁ・・・。
まあ、いいか。どっちだとしても、後で事後承諾だけ貰っとけば。
という結論に落ち着き、そっと真っ白な頭に手を伸ばす・・・・・・けど途中で、絶対に人を寄せ付けないような目を見て手を引っ込めた。うーん、どうしたらこの子と友達になれるかな?
「う~ん・・・・君、多分僕の言ってることは分かるんだよね?じゃあちょっとでいいから話がしたいんだけど・・・・」
そこまで言うと、初めて興味を示したようにこっちの方をちょっと見た。
「あ、話は聞いてくれるの?ありがとね♪えーっと、それじゃあ、まず僕と目を合わせてくれる?・・・・・いや、別に何もしないから大丈夫だってば。ほら、落ち着いて落ち着いて」
ちょっぴり嫌がるそぶりをしながらも、目はちゃんと合わせてくれた。うん、なかなか素直な子だ。
「じゃ、そのままじっとしてて・・・・・ん、もうちょっと・・・・よし、完了っと」
その瞬間、その一角獣の思考がざっくりしたイメージとなって頭の中に流れ込んできた。
「あ、君やっぱりお隣の・・・・へえ、ライトっていうの?そこのスピカ?」
そう聞くと、軽くうなずいて返した。もうその目にも敵意はなく、落ち着いて澄んだ光を放っている。
と、その中に一つ、気になるイメージを見つけた。これは・・・・なんだ、あの屑は昨日のうちにライト君が消してたのか。なら、僕が動く理由もない・・・・自分の手で始末が付けられなかったのは残念だけど、しょうがないか。え、考えてたことが黒いって?僕は結構こんなもんだよ?
まあ今日のところは、街の散策でもしてみよう。
「スピカ、ね。もう分かってるとは思うけど、僕はクラディー・・・まあクラでいいよ。よろしくねっ!あ、ねえねえ、ちょっと撫でてみてもいいかな?」
図々しいかと思ったけど、むしろ自分から頭を下げて撫でやすいようにしてくれた。なんか嬉しい。
「ヘヘヘ・・・・あ、そうだ!僕さ、これからこの街見物に行くんだけど、もしよかったらスピカも一緒に来る?」
試しにそう聞いてみると、少し迷った後で結局首を横に振った。うーん、もしかして主人のことを気にしてんのかな?まあ、確かに無断で連れ回したりしたら僕も怒られるだろうしね・・・・・。
「そうだ!ちょっと待っててね、手紙書いてくるから」
軽く首を傾げるスピカ。
「断っておけば問題ない、でしょ?」
軽くウインクして言うと、明らかな笑い顔・・・・・もうちょっと正確に言うとイタズラを思いついた子供の様な笑い顔をしてきた。間違いない、僕と同じだ。
「君とは気が合いそうだよ」
頭をポンポン、と撫でてから立ち上がると、僕は紙とペンを借りに宿へ引き返した。
「これでよし、と・・・・・じゃあ行こっか、スピカ!」
一応書置きも残したし、後はどうにでもなるだろう。とりあえず、しゅっぱーつ!
はぁ、遊んだ遊んだ・・・・。一日かけて街中歩き回ると、さすがに疲れるもんだ。え?スピカに乗せてもらわなかったのかって?うん、一角獣って生き物には、ある有名(?)な種族としての特性があるんだよ・・・・・・・曰く、
乙女しかその背に乗せない。
乙女しかその背に乗せない。
これホント。大事なことなんでリピート。僕の場合男だから、撫でるまでは良くても載せてもらうのはダメ。全く、ライト君はどうにかして乗せて貰ってるのかな?それとも、実はライト『ちゃん』だったとか・・・・。
と、そんな馬鹿なことを考えていると、わりととげとげしい視線・・・・というか敵意とか殺意むき出しの視線を感じた。
「!?」
反射的に振り向くと、人ごみの中からこっちを睨む、一人の女の子と目があった。はて、誰だろう?っていうか、こんなパターン昨日もあったような・・・・。
「(スピカ、スピカ)」
声を落として、口をなるべく動かさないようにしてそっと呼びかける。
「(ちょっとごめん、今から街の外行ってくるから。先に戻ってていいよ)」
軽く、かすかに首を横に降るスピカ。どうやらついてくるつもりらしい。
「(・・・・・・ん、わかった。それじゃ行こっか)」
後ろに警戒しながらもあくまでゆっくり、街の外に出る。
「今から外出かい?夜になったらこの門も今日は閉めるから、それまでに帰ってくんだよ~!」
「はーい、わかりました~!」
門番の忠告を背中に聞き、ランギルの外に出た。さて、ついて来てるかん・・・・っていないし!うわ、気付かなかった!ついて来てると思ったのに、なんか裏切られた気分!
「う~ん・・・・・しょうがない、帰ろっかスピカ・・・・」
なんか虚しい気分と共に引き返そうとした矢先に、声が聞こえてきた。今度は誰だろう?
ちなみにこれが投稿される十一月五日の午後七時って、僕の誕生日でもあったりします♪
・・・・・・え、知らん?どうでもいい?はい・・・・・・