落ちこぼれ冒険者、最強の剣聖になる
空の彼方から巨大な竜が飛来してくる。
その光景を目にした村人達は、恐怖に支配されて逃げ回った。
「竜が出たぞー!」
「逃げろ!」
「助けてくれぇっ!」
「騎士団を呼ぶんだ、急げ!」
竜の吐き出した火炎が村の建物を焼き払う。
人々は必死に逃げ惑うも、既に少なくない被害が出ていた。
そこに遅れてやってきたのは、酒瓶を携えた中年男の冒険者ムッカだった。
ムッカは他人事のようにぼやく。
「あーあ、大惨事だなこりゃ」
ムッカは酒瓶の中身を飲み干すと、腰の剣を抜いた。
そして上空の竜をじっと見つめる。
彼の行動に気付いた村人達がしきりに制止する。
「ムッカ!?」
「おい、正気かよっ!」
「やめろ! お前が敵う相手ではない!」
「ちょっと落ち着けって。俺がちゃちゃっと片付けるからさ……」
会話中、竜が咆哮を上げてムッカを狙って降下してくる。
ムッカは肩をすくめて剣を構えた。
「おいおい、喋る時間くらいくれよ……」
迫る竜が間合いに入った瞬間、ムッカは剣を振るう。
放たれた斬撃は竜を縦断し、その強靭な肉体をあっけなく分断した。
即死した竜の死骸が慣性と重力に従って地面に激突し、臓腑を撒き散らしながら転がっていく。
壮絶かつ予想外の攻防を目の当たりにした村人達は凍り付いていた。
「なっ……!?」
「一撃で竜を倒した!?」
「ムッカは落ちこぼれのはずだろう! 何が起こったんだ!?」
仕事を終えたムッカは、胸を張って笑いながら村人達に要求する。
「はっはっは、お疲れ。ところで酒はあるかい?」
「ムッカ! さっきの力は何なのだ! 説明しろ!」
詰め寄ってきた村長を前に、ムッカは苦笑する。
彼は少し気圧されつつも真相を語り始めた。
「実は昨日、隠しダンジョンを見つけてな。そこで剣術を十億年くらい鍛えてきたんだ。そうしたら強くなっちまった」




