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歯医者へ行こう

作者: WAIai
掲載日:2026/09/01

歯科医院には、色んな人間が集まってくる。

虫歯の患者がいれば、定期検診の人間まで、理由はそれぞれ違う。

「こんにちは」

花村は歯科衛生士で、まだ2年目だった。

それでも最初に比べると、慣れてきたほうだった。

「今日は定期検診でいいですか?」

聞くと、患者は緊張気味に「はい」と答える。

30代くらいだろうか。

かっこいい顔をしており、花村も緊張してくる。

ー彼女、いるんだろうな。

そんなことを思いつつ、笑顔を作る。

「じゃあ見てみますね。椅子を倒します」

花村が優しく言うと、男性ー関口はうなずく。

かすかに煙草の香りがするが、口の中は肛門よりも菌が多いので、できれば歯磨きしてきて欲しかった。

「口を開けてください」

側にもう1人、歯科衛生士がやって来て、歯を見ていく。

ついでに歯肉が下がっていないか、調べていく。

「1が3、2が2」

患者的には呪いのように聞こえるかもしれないが、大事なことだった。

関口はその間、じっとしており、天井を見ているのだった。

ーこの人、歯が綺麗だわ。

煙草を吸っていても、どこかで歯磨きの仕方を習ったのか、歯肉からの出血が少なかった。

花村は全部の歯を見ると、関口に柔らかく言う。

「大丈夫ですよ。虫歯はなさそうです。一応、レントゲンを撮りましょう」

「は、はい」

別の部屋に移動し、レントゲンの用意をする。

関口はそんな花村に聞いてくる。

「眼鏡はとらなくていいんですか?」

「大丈夫です。じゃあ撮りますね。はい、口を開けて」

関口の口の中に撮影用の物体を入れると、レントゲンを撮り始める。

関口は喉を鳴らしたが、花村は気にならなかった。

「…はい、終わりです。お疲れ様でした」

そう言うと、元の部屋へ戻るように促す。

関口は真面目なタイプのようで、言われるまま従う。

歯科医院には他にも見ている最中の患者がおり、関口はちらりと見ながら部屋に戻る。

ー矯正していないのね。歯根がばらばらだわ。

レントゲンの結果を機械でさっと見たが、やはり虫歯はないようだった。

すぐにその画面を、関口に見せる。

「関口さんの口の中を見たのですが、虫歯はないようです。ただ奥歯が磨きづらいのか、血が出たのて、意識して磨いてください」

「あ、あの…」

「はい? 何でしょうか?」

「磨くと言っても、どんな力で磨けばいいのでしょうか?」

「そうですね。ちょっと待ってください」

花村は部屋を離れると、ハブラシとフロスを取りに行ってくる。

それから関口に手を出してもらい、ハブラシを当てる。

「力はこんなものでしょうか。痛いと思ったら、歯肉にダメージがくるので、やめてください。歯磨きは1cm以上動かさないこと。分かりましたか?」

「分かりました。歯磨き粉は?」

「使ってください、ただし、粒粒が入ったものは、避けてください」

「はい。…それでフロスは?」

「フロスは失礼ですが、奥の歯ができていないので、一緒にやってみましょうか」

「詰め物があって、怖いんですけど。何か取れそうで」

「それなら私達が見ますから。ーこれを持って」

フロスを渡すと、花村は関口の手を掴み、少しどきりとする。

ー大きな手。いいな、男の人は力もあるし。

羨ましく思ったのは、ピアノやギターを弾く時に、花村は手が小さいので、上手くいかないのだった。

だからやめてしまったのだが、こんな大きな手があれば良かったなと思ってしまう。

「ゆっくり、ゆっくり。そうです。そこはそのまま入れて、あ、血が出ましたね」

花村は褒めたり、事実を伝えたりしながら、歯磨き講習をしていく。

ーこの人、飲み込みが早い。

患者の中には分からないという人も多いのだが、花村はやり方を聞いただけで、できる人は珍しかった。

「全部の歯をやりましたね。それじゃあ、スケーリングをしましょう」

「スケーリング?」

「あの、歯の表面を機械で綺麗にしていく作業です。綺麗にしないと、歯茎が下がってしまうので」

「あー。お願いします」

「はい」

関口は静かに答えると、一度、うがいをさせた。

ハンカチで口を拭うと、スケーリングをしていく。

音波で歯を綺麗にしていく掃除機みたいなものだが、花村は今日は上の歯だけにすることにした。

「痛くないですか? 緊張しないでいいですよ」

「はい。お願いします」

花村は機械を操作すると、前歯から綺麗にしていく。

途中、先生が来て「どう?」と聞いてきたので、「大丈夫です」と答える。

「ちょっと見せてくださいね、関口さん」

「はい」

先生が代わりに機械を持ち、作業を進めていく。

花村はじっとそれを見、勉強していくのだった。

「なるべく際まで綺麗にして」

「はい、分かりました」

「あとは奥歯に気をつけて」

「分かりました。気をつけます」

そう言うと、先生と交代し、口の中を綺麗にしていく。

関口は何も言わず、スムーズに進んでいく。

ー全部の患者さんが、そうだったらいいんだけど…。

抵抗する人や、しつこく聞いてくる人など、花村も疲れる時は疲れるのだった。

「ーはい。お疲れ様でした。上の歯は終わったので、次は下の歯をやりましょう」

椅子を直すと、花村は関口にしたエプロンをとる。

「ありがとうございました」

「はい。また次、来てくださいね」

そう言うと、関口が荷物を持って去っていく。

ほっと一息つくと、お腹がぐうとなった。

照れたようにさすると、花村は

「よし、次だ」

と呟く。

患者はまあまあ多く、忙しいのだった。

「えっと次はー奥田さん、どうぞ!!」

名前を呼ぶと、花村は張り切り出したのだった。

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