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姉として、貴族令嬢として、次期王太子妃として、……婚約者として

掲載日:2026/05/21

「もう少し、かわいく出来ないのか」

「君は真面目すぎる。それでは息が詰まってしまう」

「あの平民の特待生や男爵家の庶子を少し見習ったらどうだ?」


やはり学園など通うべきではなかった、と

そう後悔するには十分な程の叱咤を婚約者が囀る

出来ることと出来ないこと、そしてしてはならないこと。この王太子様はどこまで理解しているのだろう

私は心の中で溜息をつきながら、それでも手を動かし仕事をする

時間がないのだ。そもそもこの仕事は王太子様が任せてきた仕事なのに何故邪魔を承知でここにいるのだろう


「君は姉だろう?妹の為を思えばこそ」

「うん。このアクセサリーは良さそうだ。少し貸りるぞ?」

「ほら、似合う。そう思わないか?」


婚約者が、勝手に私の宝石箱からアクセサリーを持ってくる

妹の笑みが深まった。とても嬉しそうだ

私は表情を殺しながら仕事を続けるが、手が震えてしまう

王太子様が妹と一緒に震える手を見ながらニヤニヤとしている

こちらに向かれると、仕事がし辛い。仕方なしに手を止め婚約者にジト目を向ける


「なんだその目は?淑女らしくないな」

「そんなに見つめられても、私の気持ちは変わらない」

「こんな日に仕事をしている君が悪い」


今日は、我が公爵家の婚約発表のパーティだ

だからこそ、王太子様は私に仕事をさせつつも、こんな所にいるのだろう

私と妹、どちらも欠けてはならないから

御自ら見張りまでするとはご苦労なこと

いえ、愛する妹と一緒にいれるのだから苦ではないのかも

しかしこの仕事が終わならければ私も妹も会場には出れない

だから邪魔しないで、と婚約者に伝えるのだけれど…


「君は私の婚約者だ。次期王太子妃が偉いのではない」

「そもそも、この仕事にこんなに時間をかけるのがおかしい」

「早く二人きりになりたいんだ。君の妹も…そう思っているはずだ」


妹が顔を赤らめ目を背ける

私は今のうちに、と最後の仕上げに入る

この手腕は、王太子様も認めた数少ない私の誇り

だから手放せない、と王太子様は仰る。だが、婚約者としては面白くないらしい

妹を正妃に、私を側妃に、なんて話があったくらいだ

妹を可愛がっている両親も、流石に怒って阻止したそうだ

婚約者を変えてまで両方手元に置こうとは、中々の甲斐性だと変に見直した事件だった


「君はまだ婚約者だ。しかしこのパーティの後そうではなくなる」

「あぁ、すごく楽しみだ。愛しい人よ、待たせたね」

「私の色のネックレス、よく似合っている」

「今日の婚約発表パーティは祝いの嵐が巻き起こるだろう」




◆◆◆◆◆





「王太子の婚約発表と同時に王弟の結婚式もするのだから!」


普通は結婚式の方がメインなんですけどね!?

妹を王太子様の婚約者としてメイキングした後、私は急いでウェディングドレスを着なくてはならない

化粧品の販売を行っている我が公爵家で、私は何度も取り扱っているうちに『魔法の手』と呼ばれるほどメイキング技術が上達した

それは王族の目に留まるほどの技術であったが為、颯爽と囲われた

しかし王太子様は未だ齢13。今年18になる私とは5年前の時点では婚約は難しかった

ので、8歳差のある妹に白羽の矢が立ち私は側妃へ、なんて話が上がったのだ

そこに否を唱えたのが当時16歳の王弟、今の婚約者である

王弟は私に一目惚れだったらしく、また私も同じく一目惚れをした

平民からは『真実の愛』『運命の恋人』として祝福の言葉をよく頂く。筆頭は学園の特待生や庶子の子だ

私は恥ずかしくてよく否定するが、婚約者としては大変不服らしく、見習えと言われ、それだけが婚約者を学園に通わせてまで一緒に居てしまった私の後悔(黒歴史)である


「やはり君の腕は凄い。幼さを感じさせなくしながらもとてもかわいく仕上がっている」

「王太子様もメロメロのようだね。少しかわいくして正解だったよ」

「義妹に皆の目を向けさせて、君は私が独占できそうだ」


「私が贈ったネックレス、宝石箱に大事にしまっていてくれてありがとう」

「次期王太子妃の姉なんだ。これくらいのアクセサリーはつけないとね」

「義妹よ。こんなに美しく飾られた姉はとても誇らしいだろう?」


「すまないが、王族として公爵家も君も手放せない」

「しかし、それ以上に私個人として離れがたい。いや、離せない」

「私が王太子になる道もあったが…君に王太子妃は役不足だ。私は君を捕まえてしまったが、王弟として君の自由を守るよ」


「結婚してくれ」





このプロポーズ劇に耐性のない王宮のメイドや神官様方が卒倒し、私自身も再起動するまで時間がかかり

結局独身最後の仕事は納期を遅らせてしまったと言うのは後の語り草になり

いつしか結婚直前の納期遅延がブームになりかけそれが『婚姻有給制度』のあしがけになったとかどうだとか

頭がパンクしている私の冷静な部分がそんな予言をしていた

冷静な部分(大混乱)

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