第2話 +1本の行方
「スヤスヤスヤスヤ」
あれ?なんかめっちゃ寝起きがいいぞ?もしかして今日はいつもより早く起きてたりしていなかな?
私は気分良く時計を見る。
長針が3。短針が……9。
「なんだ、まだ寝ぼけてるのかな〜」
目をこすってからもう一度時計に目をやる。
長針が3。短針が9。
何回見ても私の目には9時15分に見える。
私の高校の授業開始時間は8時50分。
どこをどう考えても遅刻だ。
昨日言ってしまったことに悶絶して夜遅くまで起きていたからこんなことになってしまった。
「遅刻か〜。じゃあもういつ行っても同じだな。ゆっくり行こう」
こういうとき私はゆっくり行くタイプだ。
なんなら全人類そうだと思うんだけど。
そんな事を考えながら優雅にフレンチトーストを作りに行く。簡単なタイプだから20分くらいでできる。
「おはよう」
「おはようって、もう11時なんだけど」
よしっ。まずは第一関門クリア。あいさつはやっぱ大切だからね。
昨日悶絶している間に考えていた彼を落とす計画。その第一関門があいさつ。その次に世間話。まずはこの二本でやっていくつもり。
まあ今まで話したことほとんどなかったのに挨拶されたらちょっと不自然かもしれないが、そこは御愛嬌てことで。
「理君ってやっぱり数学好きなの?」
私は彼が手に持っている数学の参考書を指しながらそう聞く。
「うん。数学って答えが決まってるから」
彼の口角が少し上がるところに心臓を射抜かれながらも、いい感じに返事をする。
私は数学が大っ嫌いだからそこはよくわからないが、これを期に少し勉強してみようと思う。
私はこれ以上は心臓が耐えられないと判断し、自分に席に座る。私の心臓には、二百六十七の傷と、百五十二の矢が刺さっている。
けど一切の逃げ傷は作らなかった。
今はそれどころじゃないけど。
(うわあああああ!大丈夫だったかな?不自然じゃなかったよね?)
私は顔だけは冷静という表情を作り、バッグの中から本を取り出す。
『✙角館の殺人』
この本はもう、一回読んでしまったがそれでも面白い。やっぱ犯人が意外すぎるんだよな。
そうしてる間にチャイムがなり授業が始まる。
次の時間は数学だ。さっき心で思ったことは1回忘れて、私は睡眠学習に力を入れることにする。
キーンコーンカーンコーン
ちょうどいい時間にチャイムが鳴ってくれた。
センセイが私の近くに来そうだったからね。
「やった。もうお昼の時間だ」
私はバッグの中からお弁当を取り出す。
今日のメニューはフレンチトーストと、白米。あとブロッコリーと唐揚げ。
え?食べ過ぎだって?
うるさい。食べ盛りなんだからこれくらい食べないといけないんだよ?
私はものの十分くらいで完食し、彼の席を監視する。
5分が経とうとしたとき、彼が立ち上がって何処かへ行こうとした。
私も慌ててついていくと、彼は自動販売機でエナジードリンクを買っていた。
燃料補給かな?
これは行けるのでは?第二関門。世間話行けるのでは?
思い立ったが吉日と言うし、私はタックルするレベルの熱量で、彼に向かっていった。
「ねえ、理く」
「ね〜理く〜ん。な〜に買ってるの〜?」
私の発した言葉を遮るように、誰かが言葉を発した。
あの時の、甘ったるい、ふざけたような声が。




