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第1話 開戦

読んでいただきありがとうございます。

今回から文ちゃんの恋愛譚が始まりますね。


「……であるからして夏目漱石はI love youを月がきれいと訳したのです」

月がきれい…か、一度は言われてみたいな。

私は空に浮かんだギラギラと降り注ぐ太陽を薄眼で見ながらそうつぶやく。


私は愛嬢あいじょう ふみ。鞄の中には常に文庫本が二冊。片方は必ず夏目漱石。趣味は読書というなんとも地味な趣味を持っている。

今時のJKというのは、もっとキャピキャピしてスタバとかにいくのだろうが、私は家に直行し、坊ちゃんを読むという日々。

我ながら地味過ぎて泣けてくるね。

そして同じクラスの彼、ことわり 化科かとが彼が私の好きな…人である。

初恋の人は芥川龍之介。スタバにはいかない。友達もいない私にも好きな人ができた。

彼はかなりイケメンだしクール系でかっこいい。クラス人気もかなりあると思う。

それでも私は恋をしてしまった。

どうやら私は、心理学でいう“単純接触効果”の犠牲者らしい。

彼とは、中三から高2までが同じクラスなのである。高1の後半あたりから好意を持ち始めて早半年。ずっと彼のことを目で追いかけてしまう。

これまでで分かった情報によると、彼はザ・理系って感じ。私とは相いれないかもしれない。けど、それでもアタックすることに意味があると信じて玉砕覚悟で。今日、彼に話しかけてみようと思う。

(夏目様…どうか私に勇気を。坊ちゃんと同じくらいの!…あれはどっちかっていうと無鉄砲か…)

私は彼の席に少し足早に駆け出す。

「ねえ!理君!」

やばい。この後の言葉を考えていなかった。どうしよう。このままじゃ話しかけたのに帰っていく不審者じゃん!

「なに」

彼がけだるそうな顔でこちらを見てくる。手には数学の参考書。

(勉強をしてたのかもしれないな。邪魔したら悪いかな?いやいや、今日私は話しかけるって決めたんだから!)

(けど、なんて話すか決めてなかったーーーーー私のバカ!さすがにこのまま帰れないって)

テンパって頭の中で同じことが回り続ける。

その時口から出た一つの言葉は、私の想像の斜め上を言っていた。

このことを生涯で忘れることはできないくらいに。

「私に『月がきれいですね』と言って!」

「は?」

(ちょっと待って、なんか斜め上の言葉が出てきたんだけど?終わった。もう終わったね。)

(転校?もう転校しかないの?)

隅からクスクスと女子たちの笑い声が聞こえる。実際、クラスでも地味な方の私がクラス内イケメンランキング1位の人に公開告白なんて、自分でも笑える自信がある。それもおなかを抱えて。

「今日、夕方から曇りだけど…」

「え?」

びっくりして声が出てしまった。それにしても彼、もしかして知らない?夏目漱石の名言であるこの言葉を?今授業でやっていたこの言葉を?

そういえば、さっきの授業寝てた気がする。

そうと決まれば

「いや、何でもない。ただ覚悟しておいてね。」

困惑する彼をおいて、私は昇降口へ向かっていった。

ここから卒業までに、彼に意味を教えて、言わせてやる。

ここからが私の戦いだ。


果たして言わせることはできるのか?

今後に期待ってやつですね

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