ほ:ホーリーナイト
僕は最前列で
いつも何故か誉められるソプラノで
聖なる夜を唄う
今世界に存在する全ての生けるものに神の祝福を
平等な神の愛を
そして 神に感謝のキスを
僕らの仲間達が 火を灯した燭台を手に
一人一人静かに部屋に入って来る
神に選ばれた法衣を身にまとって
着飾った村人達のパレード
舞い散る紙吹雪
笑う 顔 顔 顔
牧師様の手が肩に掛かって
僕は洩れそうになる声を必死で飲み込んだ
近付く顔を
――僕らの仲間達の手にした蝋燭を 一つ僕にくれないか?
燃える炎を僕は
悪魔の顔を隠した牧師様の口の中に突っ込んでやるんだ
ここぞとばかりに大層に並べられた 目に色鮮やかな料理たち
どのお皿に毒を盛ってやれば
僕達の下らない讃美歌よりも美しい 阿鼻叫喚が聴けるかな?
神に感謝を
神にキスを
ただれきった牧師様に 呪いと怨みの口付けを
スカーフで首を締め上げて
ワインボトルで割れるほど頭を殴りつけて
自分の歌に酔う合唱団の少女達を ステージから蹴り落として
全てのシャンデリアが落ちてくればいいのに……
ホーリーナイト
僕は囚われたまま
笑う唇から 僕の尊厳が流れて消えていく
ホーリーナイト 全ての人にいと等しく
〝神に仕える者の これはいわば義務と言うものだよ〟
それは『生け贄になれ』と同義語
お休み 愛しい妹
永遠の別れを
……ホーリーナイト




