(94)<閑話>ダイヤキング
何度目になるのか分からないが、皆さんお待ちかねのダイヤキングだ。
“非常に慈悲深く慈愛溢れる敬愛する我が主”に仕えているカード四部隊の内、頭脳や錬金を主に得意としているダイヤ部隊のトップのダイヤキングで間違いないぞ?
そんな私が、我が主に対して過去に行った事を少しだけ紹介させてもらいたい。
本当は山の様に話したい事があるのだが、何時までも私ばかりが色々と説明してしまっては他の部隊からクレームが来ないとも限らないので自重しておこう。
フフフ。皆さんが既にご承知の通り、私は出来る男だからな!
良し。ではいよいよほんの少しだけで残念だろうが、私の活躍・・・ではないな。
結局は我が主の素晴らしさについてになってしまうのだろうが、少々話しをさせて頂くとしよう。
あれは・・・どこの町だか忘れてしまったが、何時もの様に私達カードの者達によって安全を確保した上で町に入ったのだったな・・・
『ダイヤキング殿。今回我が主は自ら宿を探すとの事』
カードの状態で他の隊員達と我が主の素晴らしさについて何時もの通り熱く語っていると、顕現して我が主の陰に潜り護衛しているスペードキング殿より連絡が来るのだが、内容はいつもの通りではなかった。
我らとしては我が主には相応しい宿にお泊り頂きたいのだが・・・とは言え、我が主の御要望に口を挟む事も不敬であり、我らでは知る事の出来ない深いお考えがあるのは間違いない!と、黙っている事も良くある話しだ。
直接状況を確認できない事が非常に歯がゆいのだが、何かがあればスペードキング殿が対処するなり報告が来るなりするだろう。
その日の夕方に定例報告もあって私を顕現して頂いたのだが、その際にお泊りになられているお部屋を拝見させて頂き、本当に不敬で大失態ではあったのだが思わず眉が少々寄ってしまった。
あまりにも貧相・・・我が主がお泊りするのには貧相すぎた為であり、重ねての不敬になるのだが改善を申し出てしまった。
「我が主。もしよろしければこの部屋の環境を少々改善させて頂きたいのですが。もちろん宿に迷惑をかけるような事は致しません。我らカードの部隊といたしましては、我が主の環境を改善させて頂くのも仕事と認識しております故」
主の為になる事であれば全てがその仕事の範疇に含まれるので、何とか少しでも・・・最低でもお休みになられるそのベッドだけでももう少し真面に休める状況にさせて頂きたいと思い、必死にお願いする。
実は我が主、懇願には非常に弱い事が我らカードの者達の間で周知の事実になっており、悪用するなどできる訳もないが、主自身の環境改善に繋がるのであれば申し訳ないながらも利用させて頂く事にしている。
思惑通りに少々困り顔ながらも改善提案について受け入れてくださると、その状況をスペードキング殿が伝達したのだろう、未だにカード状態の者達、特にハート部隊から顕現させろと矢の催促が来た。
間違いなく癒しの力を過剰に使って、例えばこの布団・・・見た目は貧相ではあるが、能力を使用する事でハート部隊の強力な聖魔法の残留分による癒しが継続して与えられる状況にする等の処置を行うのだろう。
餅は餅屋・・・か。
至高の主であるロイ様の為に動きたいと思うのは当然であり、またその希望を叶えるために行動するのが隊長である者の務め。
冷静に考えればハート部隊の長は別にいるのだが、彼・・・ハートキング殿も何故か顕現させろと騒いでいる内の一人なので、そこは放っておく事にしよう。
付け加えると・・・スペードキング殿などは配下がどこにいるのか把握もせず、只管我が主の為だけに行動している羨まし・・・コホン、素晴らしい存在だ。
っと、いかんいかん。少々本音が出てしまったのだが、先ずは今の状況を改善する為に動かなくてはならないな。
事実癒しに関して言えばハート部隊が最強なのは否定のしようがないので、少々煩くなる可能性があるハートキング殿には遠慮して頂いて他の面々を召喚して頂く事にしよう。
「我が主。ハート部隊の力によって処理すべき事がございますので、数人召喚いただけますでしょうか?」
こう言っておけば私が誰を呼ぶのか選択したわけではないとカードの者達に知らしめる事ができるし、敬愛する我が主の行動を長く見させて頂いているため、基本的にジャック、クィーン、キングは普通の任務では召喚されない事を知っている私の作戦勝ちとなる!
予想通りに一般のカード数体が呼び出され、その後は彼女達が喜々として力を込めて聖魔法を各所に行使していた。
良きかな、良きかな。
と、ここまでが今回のエピソードなのだが、これだけ?と思うだろう?
実際に我らとしては当たり前の事を当たり前のようにしただけなのだが、その後の人族の騒ぎ様が凄かったようなのだ。
聖魔法の残留分によってその物の使用者を回復させる手法をとったのだが、当然の様に我が主ロイ様を想って力がこもってしまい、暫く残留分とは言え相当な力が保持されていたらしく、ロイ様がお使いになった部屋を使う栄誉を賜った一般人が驚愕していたらしい。
その期間は一月ほど続いたらしいのだが副作用として聖魔法残留分の効果が無くなった際のクレームが酷かったようなのだが、申し訳ないがそこまで面倒を見る暇がある訳ではないし我らとしても予期せぬ事態だったので勘弁願いたい。
時間があれば・・・万屋として解決する方法も考えておこうかと思うのだが、今も我が主の事を考える為に忙しいので、別の機会にしておこう。
あれ?よく考えれば、この件に関して私は何もしていない・・・のか?




