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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
91/93

(90)圧倒的

 黙して語らない真っ白な覆面のクラーブことクラブキングと、やる気満々の姿勢を崩していないエックス。


「クラーブ。お前の獲物はどうした?まさかこの俺に対して素手で相手をするなどと思いあがっているわけではないだろうな?いや、表情を読めないように覆面を被っている所から見ると暗器使いか?」


 理にかなっている事を言っており、表情や視線から暗器の動きを予想される事を嫌う者は多い。


 そもそも暗器を使うような人材は極秘任務に就く事が多いので素顔を晒す事は略無いため、必然的に今のクラブキングの様に覆面やらフードやらで顔を隠している事が多くなっている。


 首輪の仲間にもそのような存在がいる事から目の前のクラブキングもそう言った類いの者なのだろうと判断したエックスは、これ以上何かを話しても大して反応されないだろうと口を閉じて剣を持つ両手に力を籠め始める。


「では、ハイス子爵家とミュール男爵家の戦い。はじめ!」


 敢えて貴族と貴族の戦いと念を押している中で開始の宣言がなされ、同時にエックスは砂塵を撒き上げながら突進して全力で重量のある双剣を使って攻撃する。


 決して油断せずに全力で叩き潰す事だけに意識を持って行っており、例え大惨事になろうが構わないと思って行動したのだが・・・何故か連撃を行う為に振り下ろした剣を持ち上げようとしても全く動かす事が出来ない。


 観客も砂塵が舞ったせいで多少視界が悪化したが、直ぐに硬直状態が見えて来る。


「お前・・・何者だ!」


 既に両剣ともクラブキングによって平然と摘まれている状況で体格の良いエックスが両剣を全力で下に振り下ろすように力を入れており、それを同じく両手で夫々軽々と受け止めているクラブキングと言う図が出来上がっている。


 エックスの両手の筋肉はこれ以上ない程に膨張して震えまで出ているのだが、表情は分からないながらもクラブキングの腕に震えなどは無く余裕があるように見える。


 相当な力が加えられている事だけは確実で、クラブキングの姿勢にブレは一切ないのだが闘技場の方はエックスが加えている力に耐えられないようでクラブキングの足元の石畳にひびが入り始める。


「コレは、有り得ない程の戦いになってきました!」


 動きはないが相当な戦いである事をアピールしているアナウンスの直後、クラブキングの声が聞こえる。


「む?これでは今後の試合に差し障るな」


 対戦に関する話しではなく今後についての心配をしている声であり、その後・・・エックスを剣ごと容易に振り回して見せ、完全に見た目上想像できる事とは真逆、屈強な筋肉質の男が細身に見える男に振り回されている状態になる。


 散々振り回されていると必死に握っていた剣からもやがて手が離れて壁に向かって吹き飛ばされるエックスだが、一瞬で姿勢を整えて壁に背中から激突するような事は無い。


 相当な動きを見せたエックスなのだが、そのエックスを吹き飛ばして見せたクラブキングはエックス本人には全く興味なさげに未だに手にしている大きな剣を見つめている。


「お前・・・俺の武器を使うつもりか?見た目以上に力が有るようだが、お前程度に使いこなせる武器ではないぞ?」


 幼い頃から首輪付きとなり厳しい修練を行って使いこなせるようになった剣なので、見た目通りと油断するわけにはいかないが自分と比べて相当貧相なクラブキングに使える訳がないと思っているエックス。


「この程度ならば、いくらでもできるが?」


 ここで初めてエックスの言葉に反応すると同時に刃の部分を持っていた二つの剣を放り投げて半回転させ、柄をしっかりと握り直して見せたクラブキング。


 普通の人では相当な重みがあるので、このような芸当ができる訳も無い。


「で、コレを軽く振る・・・と」


 試合前の威圧としてエックスが行った行動をまねて見せたクラブキングなので、その対面側にいた観客の荷物が激しく吹き飛ぶ。


 クラブキングとしてはそう力を入れたわけではなく観客の体まで浮き上がって悲鳴が上がってしまったのはご愛敬と言いたい所なのだが、さり気なく確認したところロイから少々呆れた視線を向けられている事に気が付き、初めて慌てる。


「こ、このような不出来な武器は無い方が良いな!」


 呆れた視線を向けられるに至って動揺したのか、元凶を破壊するのが吉と考えたクラブキングにより二つの屈強な剣は拳によって容赦なく粉々にされる。


 相当な力を持つエックスの攻撃に耐えられる武器なので簡単に壊せるような物ではなく、当然エックス自身も拳で壊せる様な剣ではないと認識しており、何らかの暗器が使用されたと判断する。


 慎重かつ大胆に直接的に攻撃すべく、その体躯からは考えられない程の速度で移動して背後に回り思い切り吹き飛ばしてやるつもりで殴り掛かるのだが・・・


―――パシッ―――


 まるで子供の拳を受け止めるかのように即座に反応されて、片手で防がれる。


 その後は・・・再びそのまま振り回されて壁に吹き飛ばされ・・・を繰り返し、全ての攻撃が通じないと理解してしまったエックスは、やがて放り投げられた際の受け身も取れなくなりついには動けなくなる。


「しょ、勝者は・・・謎の覆面クラーブ!」


 圧倒的な勝利だが、ここまでくると圧倒的すぎるので尚早引かれている中での勝利宣言が行われた。


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