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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(89)いよいよ出番

「さぁ~、皆様楽しんで頂けておりますでしょうか?ソシケ王国主催のこの大会、盛り上がってまいりました。今迄の戦いでも相当な実力者揃いである事が証明されておりますので、今後も楽しみです!」


 会場を盛り上げるためのアナウンスが流れており、幾つかの試合は既に終了している状態だ。


「リーン。仮にリーンが出場していたとして、今までの出場者には勝てそうかい?」


 周辺の人達にも持ち込んだ食事を分け与えつつ観戦しているハイス子爵家。


 しっかりと試合は見ていたようで、子爵家当主のヴァイス・ハイス子爵が娘のリーンに何気なく問いかける。


「もっちろんよ、お父さん。全員纏めてでも瞬殺よ♪」


 空恐ろしい事を言っているのだが、カードの者達によって無駄に底上げされてしまった今のリーンの力であれば有言実行できてしまうのだろうな・・・と、この会話を黙って聞いているロイ。


 同時にリーン自身が出場すべきか問い合わせてきた時に、出場を断念させる方向に持って行けて良かったと安堵していた。


「いよいよ次の試合です。何故か冒険者として名高い娘のリーンを出場させずに謎のクラーブなる者を子爵家の代表として派遣していたハイス子爵家の刺客。どのような戦いをするのか非常に楽しみです!」


 敢えて子爵の代表と大々的に公表しているのは国王バレントの指示があったからであり、こうしておけば情けない敗戦時には確実に子爵家のメンツは潰れるとの思惑からの命令だった。


 忠実に命令をこなして見せたのだが、一方だけを具体的に紹介するのはバランスがおかしいので対戦相手も許される範囲で具体的に紹介する。


「対戦相手は・・・同じくソシケ王国の貴族、ミュール男爵家所属のエックス!」


 大げさに言ってしまえば貴族としての進退がかかっていると言っても過言ではない状況になっているのだが、相変らずハイス子爵家の態度には一切の変化がなくまるで全く関係のない普通の一試合を楽しげに観戦する様子に見える。


 紹介された二人は闘技場に上っており、クラーブは素顔を晒さないように少し前に椅子を準備した時のフードとは異なって会場周辺の出店で購入したのか不思議な覆面を被っている。


 実在しないミュール男爵家のエックスと呼ばれた首輪付きは、屈強な体を見せつけるように上半身裸の状態で両手に通常よりも重厚な剣を持って闘技場に上がる。


「おいおい、スゲーなあいつ。エックスだったか?俺があの剣一本持つだけでも相当力が必要になりそうだがな」


 観戦している冒険者が勝手に感想を言い合っているのだが、この言葉通りに普通では持つ事だけでも難しい剣を双剣として使いこなせるほどの戦闘力を持っているエックス。


 残念な事にエックスと言う名も偽名ではあるのだが、そもそも所属の男爵家も実在しないのだから当然ではある。


「で、ハイス子爵家は何故リーン様じゃなくあんな・・・得体のしれない覆面を被った奴が出場しているんだ?誰だアイツは?クラーブ?ハイス様の所属にいたか?」


 対戦相手であるクラブキングについても口々に感想を述べているのだが、見かけだけではどう見てもエックスの方に圧倒的な軍配が上がっているので今更ながらリーンが出場しておけばと言う声が数多く聞こえている。


「クラーブと言ったか?俺は、主の命でお前を完膚なきまで叩き潰す」


 闘技場に上っているエックスが重厚な剣の片方を軽くその場で振ると相当な練度の身体強化を使っているのか、そもそも普段から体を鍛えている事も相まってか風圧によって対面側にいた観客の荷物が多数吹き飛ばされる。


「コレはハイス様には申し訳ないが、どう考えても勝負あり・・・だな」


 誰しもがエックスの勝利を確信しているのだが、エックスの有り得ない程のパフォーマンスを見させられて尚ハイス子爵家の態度は変わらない。


「ロイ君!お姉ちゃんもあの程度(・・・・)は簡単にできるよ?」


「そ、そうだよね。凄いね」


 何故か無駄に張り合っているリーンの相手をする羽目になっているロイだけは少々疲れているのだが、そのロイも対戦相手のクラブキングが負ける等とは爪の先程も思っていないながらも節度ある行動をしてくれるように心底願っている。


 クラブキングは真っ白な覆面を被っておりその表情を伺い知る事は出来ないが、対戦相手の無駄なパフォーマンスに対して対抗したり余計な感想を伝えたりする事はせずに黙って試合開始の合図を待っていた。


 エックスは表立っては言えないが絶対の主である国王バレントの命によってハイス子爵側の人材を全力で容赦なく叩きつぶすように命令されている事から、このパフォーマンスによって少しでも相手が恐怖して動きが疎外される事を目的として行動していた。


 一見自分の力を誇示するような行動ではあったのだが流石に国から管理されてしまう程の能力を持っているだけあって、その行為が有効かどうかは別にしてしっかりと目的があったのだ。


 一方のクラブキングも、ダイヤキングから圧倒的な力の差を理解させる形で勝利する様にと指示を受けている。


 本気を出せばカードの者達を除き誰の目にも止まらない状態で瞬殺してその存在すら完全に塵も残さず抹消できるのだが、それでは後々あらぬ言いがかりをつけられる可能性が高く、力のない人族でも認識できるような形で絶対的な勝利をロイに捧げるようにとカードの総意を伝えられている。


 この大会の出場を巡ってはカードの者達の壮絶な争いがあったのだが、圧倒的な勝利と言う部分を確実に遂行できるのは表立った戦闘を最も得意とするクラブの部隊長である為、個人の感情よりもロイに対する事が何よりも優先されるカード達の総意としてロイの為になるのであれば・・・と、満場一致で選出されていた。


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