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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(87)大会

 武術大会に出場させる別格の力を持つ者で国王の制御下にある存在は首輪付きやら首輪やら首輪の者やらと言われているのだが、早い段階で制御する必要があると認識されていた者達のその力が“とてつもない”事だけは疑いようはない。


 そう言った者達を直接的に王城に全員住まわせる事などできる訳も無く、子飼いの貴族の元に出したり形だけ爵位を与えている実在しない貴族を作ったりと、余計な事には努力を惜しまなかった国王バレント。


 実はミュール男爵と言う者も実在しない存在で形だけ爵位を持ち王都に邸宅を構えている存在で、その邸宅内部では首輪の者達が何不自由なく生活していた。


 そのうちの一人が王城で密偵と国王の会話の中で出てきたバミュータと言う男であり、実は国王バレントの隠し子だ。


 バミュータは戦闘力がある訳ではないが相当な練度で鑑定魔法を行える上に高速思考もできるので正しくその力を使えばソシケ王国が繁栄する事は間違いなかったのだが、妾の子である事やあまりにも有能である為に自らの地位を脅かす可能性に思い至った国王バレントによって真面な教育すら受ける事なくミュール男爵と言う実在しない爵位を持っている存在の邸宅で生活していた。


 隠し子である為に王族として認知していないのだが立場上相当な護衛をつける必要があるので、そこは首輪をつけている存在も同居させて護衛の任に就かせている。


 最終的に現時点で国王バレントが決断した事は隠し子であるバミュータに王位継承権を与え、更には大会で万が一にも敗北したとしても仮初のミュール男爵を潰してしまえば良いので王家、ひいては国家の名声に傷がつかない以上はそこに存在している首輪付きを大会に出場させると言う事だ。


 貴族社会とは見栄やメンツを最重要視する世界である為に、家臣である貴族を完全に取り潰せばその家臣が何をしたとしても王族としてのメンツが保たれる事になる。


 今回の様に実在しない者であれば何のダメージもないが、本来は自分を支える忠臣の一人を完全に切って捨てると言う行為になるために相当な覚悟を求められる行為であるのが一般的だ。


 武術大会で敗北した程度で罰を与えるとなれば第三者から見れば相当な覚悟を持って対処した事になり、逆に国王としての威厳を示す事に繋がる事さえある。


 ここを踏まえて国王と密偵の判断に繋がるのだが、仮想の貴族がどうなろうと痛くも痒くもないので手順としてはバミュータを継承権一位として王族に迎え入れ、今まで護衛として生活させていた首輪付きを武術大会に出場させる手はずを整える。


 正直、相当放置していたバミュータを王位につける事に全く抵抗がないかと言えばそのような事は無いのだが、自らの血を引き王位を継がせる事が出来そうな存在がもう他にはいないのでやむを得ないと言う気持ちが大半を占めている。


 国王側としては敗北時の対応も万全だとの思いのままハイス子爵家のメンツを潰すべく大会開催に向けて動き続けているのだが、ハイス子爵家側としては万屋が出場すると言い切っているのでまるで観劇でも行くかのように盛り上がっている。


 今回の一連の流れで巻き込まれた感は否めないながらもロイが相当主体的に動いてしまっていた為に、最終的にロイからの指示を待たずに万屋が出場するような提案の形をとってはいたが、この行動についてその後ロイから感謝の意を示されていたカード達なので何時もの通り少々暴走気味だ。


 王族は万全の準備を、ハイス子爵家は観戦の準備を、そしてカードの者達は誰が出場するのかの激しい争いを繰り広げている中でその日はやってくる。


 しっかりと時間をかけて準備していた事もあって正式に招待状を出した聖国ロナ以外の国の面々もソシケ王国に到着しており、闘技場周辺は大賑わいだ。


 各国の腕自慢もこぞって参加しており、中には冒険者だけではなく騎士までいる。


 当然騎士として出場すると敗北時にメンツの問題が出て来る面倒な世界なので、騎士ではなく一個人として出場しており、他国で自分の力がどの程度通用するのかを見定めようとしている。


「ふむ、想像以上の賑わいだな。何故か出場者もこれだけいるとはな。この時点でソシケ王国の国力を示す事が出来ておるのではないか?」


 正式に招待している聖国ロナの聖主ロマニューレや招待はしていないが自ら訪問の意を示して来訪している近隣国家の国王達に挨拶をすると、貴賓席の中央に準備している自らの席にドカッと腰を落として騎士から手渡された出場者一覧を見て呟く国王バレント。


 隣の席までは相当距離があるので、この呟きが他国の者達に聞こえる事は無いと理解した上でこのように伝えている。


「仰せの通りです!」


 正直国王としては出場者一覧には名前だけが書かれている為にどの国家所属かやどの様な立場の者かわかるはずもないが、相当数の名前が記入されている資料を見て上機嫌になっている。


「む?やはりハイスの所はリーンではないようだな。誰が出ておるのだ?」


「こちらの・・・クラーブと言う不思議な名の者が、ハイス子爵家の代表と聞き及んでおります」


 シン()ロイ商会では本名を晒しているカード達なのだが、裏の組織である万屋として出場した以上、一応(・・)本名は隠している。


「ちなみにですが、陛下。こちらのハワードと言う者は聖国ロナからの出場になります。調査の結果、聖国所属の騎士のようです」


「はっ・・・優勝の報酬に目がくらんだか?流石は強欲ババァよな」


 互いの距離が有る中で隣に座っている異国の国主に対しての暴言なのだが、教会を通して癒しの全てを制御されてしまっているのでどこの国からも良く思われていない聖国ロナなので、実は国王バレントの前の席に座っている者にはその言葉は聞こえてしまっていたのだがその人物は内心でその言葉に同意するだけで何も反応する事は無かった。


「他国からの訪問者、一般人も含めて多数入国している為に収益も上々の滑り出しです。では、私はこれにて失礼いたします」


 最後に騎士はこれだけ告げると、国王バレントと近くに座っているバミュータに対して頭を下げて去って行った。


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