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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(81)王子ミラージュと国王バレント

「・・・と言う事で、報告によればあの商会には時折ハイス子爵家のリーンとロイが出没しているようです」


「確かにリーンは収納魔法を持っている上に他の魔法も使える規格外の存在なのは認めよう。だがロイは同じ収納魔法持ちでも何もできないゴミ。元ではあるが我が王家の恥部とも言える。共に行動しているのであれば相殺されて大した脅威にはならんのではないか?」


 国家として特殊な能力を持っている者、知能を持っている者、そして収納魔法持ちを管理下においているのだが、その中でも特例とも言える存在のリーンとロイがこれから乗り込もうとしているシン()ロイ商会にいると報告を受け、本来万屋に対する警戒をしていたのだが余計な存在の報告を受けて我慢が出来なくなったのか謎理論で問題ないと断じて見せた国王バレント。


 密偵は国王に意見が出来る存在ではないのか、この謎理論を聞かされても表情一つ変えずに黙って次なる命令を待っている。


「良し!時間をかける事で目障りな存在(万屋)が来る可能性も捨てきれん。あのハンブルがダメになった以上、我がソシケ王国存続のために第二王子であるミラージュを担ぐ他ない!即座に連れ戻すぞ!」


 リーン出現と言う新たな問題を聞いた国王はそこに対処する事になっては目的のミラージュを連れ戻す事などできないと判断し、これまでに得た自ら持っている権威がシン()ロイ商会にも有効であると勘違いしたまま強硬策に出る事にした。


 翌日になり朝も早くから大勢の騎士を引き連れて王城を出ると、外壁方面に移動してシン()ロイ商会に到着する。


 ここには他の貴族達も多数いる事から豪華な馬車が来て国王が姿を見せても特段驚くような客はいないし、店員も平然としている。


 周囲の様子が全く変わらずにまさしく普段通りに活動しているように見えた国王バレントは正直面白くないのだが、今は第二王子であるミラージュを連れ戻す事が先決だと意識を切り替える。


「こちらでございます」


 先行していた密偵が休憩所にいるミラージュを捕捉していたようで、国王と護衛の騎士達を先導する。


 相当に広い店舗である為に無駄に広がって歩いても特段他の客の妨げになる事は無く、国王バレントの視界には沢山の椅子と机が存在している休憩所の中でミラージュの姿を確認した。


 正直密偵に教えてもらわなければ顔すらよく覚えていない存在ではあったのだが、信頼できる密偵からの情報である為に小奇麗な状態になっている男が第二王子ミラージュであると判断して近接して行く。


 これだけ大所帯で偉そうな態度をとりつつ行動していればいくら人がいる休憩所とは言え悪目立ちしているので、ミラージュも父であり国王でもあるバレントの存在に気が付くと慌てて席を立って立ち去ろうとしているのは明らかなのだが、密偵のうちの一人がその行動を抑止したらしくいつの間にかミラージュの近くで何かを呟いており、その後ミラージュは暗い表情のまま再び席に座る。


 間違いなく、このまま話しを聞かないのであれば商会に迷惑がかかる事になると伝えていたのだろう。


「フン。何をコソコソしているのか知らんが、情けない。良く聞け!第二王子のミラージュよ。貴様は日和見で弱気であるが故に国家元首に相応しくないと判断されて離れでの生活を行っていた。その生活が貴様を成長させたようで、余も少しだけ感心している所だ。今後貴様を更に高みに向かえるように余が成長させてやる。ついてまいれ」


 一方的に伝えるだけ伝えると返事など聞く必要もないとばかりに踵を返すのだが、当のミラージュは席から動く様子を見せないので密偵の一人が慌てて立ち上がるように促す。


「父上!僕はシン()ロイ商会の一従業員なので、政に興味はありません!今は商会の商品について学ぶ事が最も重要な業務なので、それ以外の事に力を削ぐつもりもありません。失礼します!」


 これだけ矢継ぎ早に告げるとさっさと立ち上がって商会の奥に消えて行ってしまい唖然と見送る事しかできなかった国王と密偵だが、一応百戦錬磨の密偵すら動けなかったのには理由があり、今日の万屋担当であるダイヤセカンドが密偵の動きをしっかりと阻害した上でロイを含めて全ての万屋関係者に情報を展開している。


「あの、姉ちゃん?あっちの休憩所に行ってみない?」


 ダイヤセカンドから流れている情報を聞きながら敢えて国王が未だ呆けている場所に誘導する様にしているロイと、ロイに誘われれば何をおいても付いて行くリーンが休憩場に向かって歩いて行く中でミラージュと遭遇する。


「あら?ロイ君。あれってあの市にいた人じゃない?」

 

 基本リーンはロイを含めた家族以外には興味を示さないのだが、ロイに対して一般的な王侯貴族であれば向けるはずの侮蔑の視線をあの市で向けなかった事からミラージュの事は記憶に残っており、ロイと共に行動できて楽しい気持ちでいた事もあって会話のきっかけとして話題に上る。


「えっと、そうかもしれないね。でもここから見ても少し落ち込んでいるように見えるけど、大丈夫かな?」


 全てを知った上で敢えてここでリーンと会わせるように誘導したのはロイなのだが、何も知らない体で首を突っ込む方向に持って行く。


「ロイ君が気になるのであれば、お姉ちゃんが何とかするよ?待っていて!」


 少し後ろめたい気持ちになっているのだが、ロイの思惑通りにリーンがこの一件に深く入り込む結果に安堵し・・・つまり、何度目になるのか分からない程の油断をしているロイ。


 ミラージュも有り得ない程の救援物資と共に収納袋まで突然くれた別格の存在であるリーンの事を忘れる訳も無く、突然声をかけられて驚きつつも正直に事情を話している。


 事情の中には自らが第二王子である事も含まれているのだが正直リーンにとってはそんな事はどうでも良い範疇に含まれているので態度に一切の変化はなく、逆にミラージュにとってみればその態度だけでとてつもない喜びを覚えていた。


 普通の人であれば王族と聞けば相当遜り距離が出来るし、ある程度の身分であれば今までの自分の待遇を知っているのでやはり距離を取られるのだから。


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