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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(80)王都のシンロイ商会

 シン()ロイ商会を任されているダイヤ部隊の三人は密偵が商会の店舗をうろついている事をしっかりと把握しているのだが、現時点ではミラージュとの接触も無ければ他の客に対する問題も無いので監視は継続しつつも放置している。


 巨大な店舗であってもガラガラになる事は無く常に人が多数いるので、いくらダイヤ部隊特性のショーケースがあるとは言え最終的には金銭のやり取りや問い合わせの対応を少人数で行っている以上は忙しく、問題が発生しない限りは特段動くつもりはなかった。


 一般の従業員にはこの情報を共有するわけも無く、彼等、彼女達は日々忙しくも楽しく働いており、まさか王族直下の密偵が店の中に紛れ込んでいるとは夢にも思っていない。


 一方のミラージュは今まで孤独に生活していた事からこの人の多さに戸惑いを見せ、更には店舗のどこに何があるのかを把握するに至っていないので、現時点でも好きに敷地内を散策するように言われている。


「は~、正直に言って甘く見ていたのかもしれませんね。噂には聞いていましたけれど想像するのと体験するのでは大違いですよ。これだけ大きくて商品も多数あるのであれば、種類別に陳列されているとは言っても何がどこにあるのか把握するだけで相当時間がかかりそうです。それにあのショーケース・・・この商会、流石は万屋と繋がっているだけあってとてつもない品ですね」


 ロイやカード達しか分からないが、この商会は万屋であり、万屋がこの商会でもある。


 ミラージュは形上万屋の紹介によってこの商会に身を寄せる事が出来ているので、嫌でも両者は少なくない繋がりがあると把握している為にこのように漏らしているのだが、貴族を含む客達がその事実に気が付いている者は今の所殆ど存在しないが商会で願いを呟けば万屋が叶えてくれると言う噂は出回り始めている。


 広大な敷地を持つ商会であるが故に人も集まるために万屋としても願いを聞き易い環境なのだろうと市井の者達は勝手に思っている中で、実際にその噂を聞いて商品を購入するのではなく藁にも縋る思いで願いを叶えてもらう為に来ている客もいる程だ。


 密偵はその噂も当然耳に入っており、実際に時折数人が勝手な妄想とも言える願いをブツブツ言っている姿を目撃しているのだが、その後の反応は誰しもが著しくない為にここには万屋は存在しないと国王に報告していた。


 ダイヤ部隊の三人はこの願いについても全て把握する必要があるので、相当能力が高いながらもあまりにも敷地が大きすぎるために余計な事が出来ず、少しでも余裕を持てるようにミラージュが戦力になるのを心待ちにしている。


 ロイに迷惑をかける訳にはいかない為にカード部隊ではなく他の人を追加で雇う案も一時期持ち上がったのだが、能力、人柄、その全てを高い基準で満足する人物がそういる訳ではなく、基本的に給金が異常に良いとされているこの商会に腰かけて仕事をしようとしている魂胆の人物が多すぎたために採用業務については打ち切っていた経緯がある。


「ダイヤエース。流石にここまで来てしまうと恥を忍んで今後はご主人様に増員をお願いするか、新たな噂を流して願いを呟く場所を固定した方が良いのかもしれませんね」


 ダイヤセカンドがダイヤエースに近づいてこのような事を呟き、主の手を煩わせるのは如何なものかと思ったダイヤエースの判断で敷地内に多数ある休憩場の一角に顔を覆った形のロイの銅像を作り、その近辺で願いを呟けば場合によっては万屋が現れると言う噂をばらまく事にした。


 銅像程度は直に作れるのだが敢えて顔を覆っているのは神であるロイをそのまま表現してはどう考えても今後の行動の弊害になると知っていたからであり、ダイヤキング程暴走する事は無かった為に、ロイに余計な心労を加えらなかった素晴らしい行動と言える。


 即座にこの案は実行されるのだが、一応配慮しているのか真夜中の人が最も少ない時に全ての休憩所に傷をつける事が出来ない加工を施した銅像を設置し終える。


 客との会話も大切にしている従業員に対して事前に願いの件を世間話しの体で話しておけば自然と噂として流れるだろうと判断し、実際に銅像が突然出来た事も相まって噂はあっという間に広がり、各箇所にある休憩所の一角に人だかりが出来る状態になっていた。


 これだけ人がブツブツと勝手な妄想を垂れ流しているので密偵としても誰が願いを受け入れられたのか分かるはずも無いのだが、管理しているダイヤ部隊としては広大な敷地全ての呟きを拾う必要が無くなったことで相当な余裕が出来ていた。


「はぁ、全く勝手な事ばかりですね」


 今日の万屋担当はダイヤサードであり、密偵がいる事を把握しながら人々の身勝手な欲望を聞かされて嫌気がさしているので今の所は誰の願いにも対応する事は無い。


「まさかあの密偵までもが勝手な願いを呟くとは思ってもいませんでした」


 見かけ上は冒険者の装いだがカードの者達の情報、そして分析能力をもってすれば王家の密偵である事は即座に把握できており、その者が銅像の前で勝手な願いを呟いていたのだ。


 密偵としてもここで願いを叶えてくれれば万屋の存在を自身で確認できる上に益も手に入れられる一石二鳥の作戦だと思い、即座に拒絶される事が無いように作り話として両親が病に倒れてその対応として巨額の費用が必要だと告げていたのだが、表情、汗、呼吸等、普通の人では把握する事の出来ない僅かな動きだけで真実か否かをある程度判別する事も出来てしまうため、鑑定魔法や個別の調査をする事なく放置されていた。


「あからさますぎて、真実か否かを調査する気にもなれませんね」


 結果的に周囲の誰も願いを叶えてもらっている様子が見られない事から密偵は謎の銅像出現はあったものの全く万屋の陰が見えてこないと再度国王に報告していたのだが、目の前の二人の会話を聞いてそれ以外の脅威がある事に今更ながらに気が付いた。


「ねぇ、ロイ君!あれって、ロイ君に何となく似ていない?銅像のタイトルは・・・至高の神だって!センスあるよね?何でもこの場所で願いを呟くと万屋が叶えてくれるんだってさ!お姉ちゃんもロイ君ともっと仲良くなれますようにってお願いしておこうっと!行こっ!ロイ君」


 万屋と接触した事があるリーンなのだがそこについては正直どうでも良く思っており、ロイに何となく似ている銅像が神と称えられている事に興奮している。


「そう言えばこの商会の名前もセンスあるし、やっぱり神であるロイ君を称えているみたいだよね?」


「あ、あはははは、そんなわけないじゃない?姉ちゃん!」


 ここにきて余計な冷や汗が止まらないロイと、一方ではロイと共にいるリーンと言う大きな障害があった事を思い出し慌てて追加の報告をしている密偵だ。


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