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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(69)リーンの対応と王城への対応

「ふ~ん、ふふふん、ふ~ん」


 本来は危険があるはずの野営の最中に、二人が同時に風呂に入ると言う愚行を行っていたロイとリーン。


 ロイに関しては全く望んでいなかったのだが、なすがままにされて力なく項垂れていた中でスペードキングが周囲にのみ殺気を飛ばして余計な魔獣が来ないように無駄に力を行使していたおかげか、ロイにとっての地獄の時間は結構長く続いていた。


 互いに大きなタオルを体に巻いていた事だけが、ロイにとって最後の砦となっている。


 ここで小さいながらも魔獣が襲い掛かってくればこの拷問とも言える時間は即座に終了になっていたのだろうが、万屋としてはそうはいかない事情があった。


 あの時・・・


<リーンよ、落ち着くのだ。この万屋、その方の力になろうではないか>


「何?私は今忙しいの。あのブタ野郎を細切れにしなくちゃいけないから、話しかけないでくれるかしら?」


 カードの部隊でも少々腰が引けてしまう程の殺気を撒き散らしながら全力で疾走しているリーンだが、ここで止めなくてはロイに対して顔向けができないので交渉を続ける。


 残念な事に今回の万屋としての交渉も普段からリーンの護衛についているスペードサードが行う羽目になっているのだが、内容についてはカード状態のダイヤキングと打ち合わせをしながら告げている。


 ダイヤキングの判断としては、ここで相当な餌を目の前に出さなければリーンを止める事は出来ないと判断してその旨指示を出した。


<リーンよ。その方の願い、我がある・・・弟との入浴だったか?その欲望(・・)を叶えてやろう>


 この言葉を聞いて何故か突然移動するのをやめて急停止するリーンだが、全力の自分に容易についてこられる事も含めて相当格上なのは間違いない存在に対して平然と容赦のない要求を始める。


「え?それならば話しを聞く価値があるわね。そうねぇ、一回で良いからゆっくりとロイ君と一緒にお風呂に入って語り合いたいわね。できるかしら?ちょっとじゃダメよ?ゆっくりと。わかる?」


 本当に無駄に主張してくるのだが、コレを断れば間違いなく今すぐにでも再び移動を始めて二度と自分達とは交渉しないと言う事は表情から読み取れてしまう。


<わ、わかった。では、その証としてコレを授けよう>


 完全に信頼してもらえるように、ダイヤ部隊特性の大きな風呂桶を顕現させるスペードサード。


 精神的にも肉体的にも落ち着ける効果が付与されており、少しでもロイの心労を減少させようと言う気持ちが込められていた。


「わっ!凄いじゃない。これなら・・・ウフフ、良いわ。じゃあ、ブタ共の対応は任せて良いのよね?万屋さん?」


<そこは抜かりない。任せておいてもらおう>


 この一連の流れが何故か今回リーンが巨大な桶を持っていた事と、踵を返して上機嫌でロイの元に戻ってきた真相だ。


 いくら精神的な疲労を癒す効果があろうがそれ以上の疲労を感じていれば疲れるのは当然であり、何とも言えない気持ちでテントの中で休んでいるロイは横で寝息を立てているリーンを見ながらもダイヤキングの希望通りにハートクィーンを顕現させてから眠りについた。


 もう色々と疲労の限界に来ていたロイはハイス子爵家と王族側の対応についてはダイヤキングに一任して即座に眠っており、一任されたダイヤキングはいつもの通りに無駄に張り切って作業に取り掛かる。


「今回は王城諸共纏めてブタを消滅させると言う事は我が主から却下されたので、多少手間になるが作戦通りに頼んだぞ。ハートクィーン!」


「ご主人様の姉上様、ひいてはご主人様の為に、しっかりと任務を遂行します。では」


 翌朝、何故か風呂に入って疲労したロイを寝ている間にスペードキングが癒してくれていたようで、すっかり体調も万全になりリーンと共に朝食を食べた後に旅を続けている。


―――ピィ~―――


「あら?今度は何かしら?お父さんからね」


 二日連続で飛翔型の魔獣が連絡をよこしてきたのでロイとしては二通目に関して何が起きたのか少々心配になり、手紙を読んでいるリーンの表情を見ながらスペードキングを通してダイヤキングに事情を聞く。


「家に何か問題が起きたのかな?」


「いいえ、全く問題は起きておりません。恐らくあの手紙に関しては昨晩万屋として王族への対応を行いましたので、それに関する情報展開ではないかと。手紙の内容に関しましてはその時にはハイス様の近くにいた者はおりませんので、把握できていなかったようです」


 差し当たり実家に関しては何か危険な状況に陥ったわけではないと理解し、それならば特に問題はないかと思い肩の力を抜くロイ。


 相変わらずダイヤキングの暴走具合を過小評価しているのか今までの惨状に慣れてしまって耐性が付いているのか、万屋として王族に何をしたのかも気にならなくなってしまっていた。


「ぷ、あははははは、流石は万屋さんね!」


 すると突然目の前のリーンがお腹を抱えて笑い出しつつも手紙をロイに差し出してきたので聞いた通りに万屋が王族に向けて対応した事が書いてあるのだろうと判断したのだが、何故ここまでリーンが笑っているのかわからずに漸く少々不安になって来た。


「え?俺も読むの?」


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