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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(6)能力の発現

「ロイ・・・知っていたのか。でも、何も気にする事はないぞ?我がハイス子爵家の一員、大切な私達の子供であるお前を守るのは親として、家族として当然の行動だ」


「そうですよ。リーンちゃんもロイ君のお姉ちゃんとして当然のことをしているだけですからね?きっとすぐに目を覚まして、いつも通りにロイ君にべったりになるわよ?」


 ロイを励ましつつもやはり未だに目を覚ます素振りの無いリーンが心配なのか、ベッドに寝かされているリーンの頭を優しく撫でながら話しているテレシア。


「そうだぞ、ロイ。父さんと母さんの言う通りだ。それに、俺だってロイの事を守る立場のお兄ちゃんなんだからな!リーンだけじゃなく俺にも頼ってほしいと思っていた所だ」


 何処までも優しい家族なので余計に申し訳ない気持ちで一杯になりつつ・・・最早隠す事はないと幾つか質問する事にしたロイ。


「俺、ハイス子爵家の現状を知っているんです。色々な無理難題を国王(・・)から言われる挙句に報酬も無い。他の貴族連中も国王の言いなりなのか何なのか、好き勝手に行動して場を荒らす。本当は姉ちゃんだって、冒険者として活動せずに生活できたはずです!それに・・・今だって兄ちゃんは必要のない鑑定をさせられているでしょう?」


 ロイにある程度は気が付かれた事は把握していたが、まさか現在進行形の事象まで明確になっているとは思っていなかったハイス子爵家の面々。


「・・・ロイ。確かにその通りだが、だから何だと言うのだ?我がハイス子爵家は一致団結してロイを、家族を守る。これが我が子爵家の矜持だ。いや、本当は当たり前の事なのだが理解できない存在がいる事も事実だけど、ウチは違うぞ!」


 自分で言って少々恥ずかしくなったのか、ポリポリと頬を書いているヴァイス・ハイス。


「さっ。リーンの事はこちらに任せて、ロイはもう休みなさい」


 その後、半ば強制的に使用人に自分の部屋に連れていかれてしまったロイはかつてない程に実父である国王やその家族、そしてその取り巻きに対する怒りと、何も現状を改善できない自分自身に対する怒りが抑えきれなかった。


「そもそも俺の能力が真面に発動できていれば優しいこの家の人達を巻き込む事は無かったんだ!なんで俺には力が無いんだ!!今だって回復する力や現状を打破する知能、あいつ等の弱みを握れる諜報能力、迎撃できる攻撃能力、何でも良い!何か力があればこの家の優しい人達を守れるんだ!!」


 王族として生活をしながら必死に能力発動を試していた頃も含め、ここまで心底能力を渇望し、力の内容を具体的に口にしたことが無かったロイ。


 それほど切羽詰まってしまったとも言えるのだが、明確に能力を示したこの魂の咆哮がロイの能力を覚醒させる。


 丁度心臓の当たりに何やら不思議な温かみを感じたと思った次の瞬間、本能で収納の能力が覚醒した事を知る。


「い、今更・・・」


 正直このような環境に陥った状態で収納の能力が覚醒しても収納の中身は何も入っていないはずなので、リーンやルホーク、ヴァイスやテレシアを助ける事は出来ないと思っている。


 しかし漸く発現した能力なので万に一つの期待もあって何故か理解できる能力発動を実行すると、手に現れたのは小さい箱。


「あれ?姉ちゃんや鑑定をした人の話しでは、何かを入れない限り何も入っていないって言っていたはずだけど?」


 箱の蓋を開けると日本で言う所のトランプが見えており・・・何の気なしに一番上のカードを手に取ってひっくり返してみる。


 正にトランプで図柄はジョーカーだったのだが、その絵を見た瞬間にこれまた本能的にこのジョーカー・・・そして箱の中に入っているカードが具現化できると理解する。


 何が何だか理解が追い付いていないのだがロイはジョーカーを顕現する様に念じると、姿が朧げになっている存在が一体目の前に現れて跪いている。


「ロイ様。能力覚醒・・・誠におめでとうございます。本来我らカードの部隊の代表者はダイヤキングではございますが顕現して頂きました我、ジョーカーが僭越ながらご挨拶申し上げます」


 目の前の不思議な存在が自らの能力が生み出した者である事は理解できるのだが、何故収納の能力でこのようになるのかは未だに理解できない。


「ロイ様。差し出がましいのですが、ロイ様の置かれている現状はある程度ではありますが把握させて頂いております。宜しければリーン様の回復、ルホーク様の鑑定、更にはハイス子爵家の財政状況についても改善が可能ですが、如何致しましょうか?」


 ロイが混乱しているのは理解できているジョーカーだが、置かれた状況、ロイの望みも理解できているので、先ずは不安要素を改善できると告げている。


「ほ、本当に?お願いするよ。できるんだよね?」


 心底渇望していた事だが現実的には不可能だと諦めていた所、それを事も無げに実行可能だと告げた目の前のジョーカーに期待してしまうロイ。


「お任せください、ロイ様。ですがロイ様のお力は強大な為、このような悪行を行える国家に居を構えている以上は秘匿された方がよろしいかと具申致します」


「そ、そうだよね・・・わかった。じゃあ、一刻も早く姉ちゃんを治してあげて!」


「承知いたしました。ルホーク様の鑑定は全ての品に結果を記載したメモを張り付けておきますし、財務状況についてはこの屋敷の地下に価値ある品々を準備いたします。それでは失礼いたします」


 音も無くジョーカーが消えた後、ロイはリーンが気になりカードを収納に戻すとすぐに部屋から出てリーンの部屋に向かう。


 移動中にヴァイス、テレシア、ルホーク、更には使用人達の喜ぶ声が聞こえた事から、ジョーカーが自らの願いを実行してくれたのだと確信する。


 極限まで弱り切り回復薬を使用しても後遺症が残る可能性が高いリーンを癒せる能力を持つ人など本来この世界に存在しないのだが、喜びの感情が大きく誰も気にならなかった。


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