(67)ハイス子爵と商会
「ではブライアン殿。助言、ありがとうございます。結果については追ってご報告させて頂きます」
「成果が出る事を祈っております。私の方でも何か策がないか考えておきますので、諦めずに前を向きましょう!ハイス子爵!!」
「ありがとうございます。そうですね、父である私が諦めてはなりませんね。ではまた!」
非常に重要な事なので一旦急ぎ領地に戻って家族に事実を伝えてから行動するか、藁をも掴む気持ちではあるのだがシンロイ商会に向かって万屋に対して願いを言ってみるのか迷い・・・
「一度で願いを聞いて貰えるのか分からない以上、一旦願いを伝えてから戻る方が賢明・・・か」
王都の商会は分散していた商会が一つにまとまっており相当に広い敷地面積を持っているなかで、多数の貴族もご用達にしているのかハイス子爵が店に入っても誰も驚くような事は無く、寧ろどこかで見た事のある高位貴族夫人を見かける事に逆にハイス子爵が驚いていた。
「これだけ大きいと、どこで何を言えば良いのか・・・」
王都の商会を切り盛りしているのは全員がダイヤ部隊所属であり、ダイヤエース、セカンド、サード、そして何も知らない地元の人々が少々働いているのだが、リーンがロイを追って領地から出て行ってしまってからは何があっても対応できるようにスペード部隊を二人子爵家の守りにつかせていた為に領内の屋敷にはスペードセカンドが、そしてハイス子爵本人の陰の中にはスペードフォースが潜んでいる。
今迄の全ての情報は当然のようにスペードフォースに抜かれておりカード状態のダイヤキングに転送され、そこからロイの足元にいるスペードキング、最終的にはロイの耳に入るので、どこで何を願っても叶えるつもりだと万屋として伝えるように指示が出されている。
と同時に、リーンがこの事実を知らないまま解決したとしても何れはどこからか情報が洩れて当人の耳に入り、後で暴れかねないので早い内にリーンには事実を伝えるように指示を出した。
この指示もロイの足元のスペードキングからカードのダイヤキング、そこからハイス子爵の足元にいるスペードフォースや王都の商会にいるダイヤ部隊に転送されるので、やはりカードの者達の緊急会議が開催される運びとなる。
「今回の議題は・・・もう理解できているだろうが、リーン様の事だ。我が主、神である我が主の姉上であるリーン様を、あろうことかあの見た目も性格もどこにも良い所を見出す事が出来ないブタが汚い手で手中に収めようとしている。我が主の悲しみはいかばかりか!絶対に許せる事態ではないと思わないか?」
「ダイヤキング殿、何なら我が行って殲滅してきましょう!あの薄汚い国王とか言う者にも神の鉄槌を下す事が妥当かと思いますが、如何でしょう?」
「おぉ。ジョーカー殿、流石の行動力。しかし、その気持ちは確認せず共皆同じ!なればここは我が主に懇願して全員顕現して頂き、あのブタとその生産者を丸焼きにするのはどうだろうか?」
相当危ない方向に進むのもいつのも流れなのだが、一応ロイにお願いして顕現すると言う関所が出来たおかげで自らの意思で顕現できるジョーカーが単独で暴走する事態を意図せず防いだダイヤキング。
実際に行動に移してはいくら強固な防衛力がある王城内部とは言え有言実行できてしまう実力者しかいないので、ここだけに特化して言えば相当なファインプレーだった。
「我が主。ダイヤキング殿からお話しがあるそうで・・・」
カードの会議で決定した事項を聞いて知っているスペードキングだが、交渉や説明に関してはダイヤキングが最も優れていると知っている為に何時もの様にダイヤキングを召喚するように伝えるに留めており、当然リーンが近くにいるので今この場で顕現する事などできる訳もなくリーンが寝静まった後に顕現させる事にしたロイ。
先行しているスーレシアに追いつかないように敢えて道端の花等について無駄話しをしているので今日は野営になっているのだが、しっかりとリーンが沢山の道具や素材を収納魔法に入れているので非常に快適に過ごす事が出来ていた。
その後スペードキングが完全にリーンが寝ていると判断した後に、ダイヤキングをテントの外で召喚するロイ。
「ダイヤキング!」
「お手数をお掛けして申し訳ありません、我が主。もうお聞きの通りにリーン様が国王とその息子であるブタの目にとまってしまったようです。当然神たる我が主の姉上様であるリーン様が王族になるその一点だけは至極当然なのですが、その伴侶は絶対にあのブタではありません。そもそも領地の経営についての調査の名目が当初の呼び出しの目的であったはずですが、何故かリーン様を不敬にも妾にすると言ってのけたのです。コレは神罰を与えるのが必然ではないでしょうか?」
少々熱くなっているダイヤキングなのでいつも以上に長々と話してしまうのだが、結局は王族を痛めつけると言っている為に何度目になるのか思わず天を仰ぐロイ。
「いやいや、それは極端だよ。それに父さんに対して万屋として接触したんでしょ?その結果が王族を始末するんじゃ、父さんだって気に病んじゃうよ!」
「む、確かに。流石は我が主。このダイヤキング、浅慮に恥じ入るばかりです」
王都のシンロイ商会でリーンについて助けてほしいと呟いたロイの父であるハイス子爵に対して、店を任されている内の一人であるダイヤエースが万屋として天の声により接触して、とりあえずは嫁に行かせる事を防止する策をとる事を確約した上で事実をリーンに伝える様に指示していた。
言われたハイス子爵は周囲にいる者達には天の声が一切聞こえていないようで、正に不思議な力を持つ万屋であればこの難局を乗り越えられる可能性が高いと少々安堵し、万屋と接触する事が出来たと慌てて王城に戻って宰相のブライアンに報告するとともにその後は急ぎ邸宅に戻り指示された通りにリーンに対して飛翔型の魔獣を使って、現状と今後は万屋が対応する事も含めて書き記していた。
つまり父であるヴァイス、母であるテレシア、兄であるルホーク、そして数多くの使用人、更にはロイやダイヤキングですらリーンの激情を完全に把握する事が出来ていなかった。
翌朝に飛翔型の魔獣が魔力の匂いを追ってリーンの元に到着して、足に括り付けている手紙を開封したリーンの表情は一変する。




