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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(60)集落の住民達

「お、おいおい、なんだよこれ?女性の願いを叶えたと聞こえたが、誰の願いだ?」


 集落住民の全員に聞こえた声によれば、女性の願いを叶えたとだけ言っているので誰の願いなのかは良く分かっていない。


「あ、私がここにいる旅人から噂話を聞いて、何でも願いを叶えてくれると言う万屋にお願いしてみたけど・・・まさか本当にこんな一瞬で建物が出来るなんて、って、そうだよ、中を見てみないと!」


 迷ってこの集落に辿り着いたふりをしているジョーカーに食事を与えていた女性、名をミルハと言うのだが、彼女は驚きつつも期待に満ち溢れた表情で建屋に近づいて行く。


「そっか、ミルさんがお願いしたのか。で、具体的にどんなお願いをしたの?」


「実は、せめてお風呂に入れる環境があればいいなって思ったんだよねぇ」


 集落の人々が纏めて建屋に向かう中で同性の一人と楽しそうに話しをしながら、未だに夢の中にいるかのような不思議な気持ちで中に入ると・・・


「うわっ!」


 誰の声かは分からないが、大きな空間の中には所々に適度な距離を保たれた状態でゆっくりできる各種椅子、ソファーが準備されており、照明も温かみを感じる絶妙な明るさになっている。


 最早その動力源や物資がどこから来たのか等の疑問を口にできる状態ではなく、広い廊下を進み所々にある部屋を開けては驚き、やがて男、女と書かれた暖簾の有る場所に到着する。


 性別によって分けられていると言う事は誰の目から見ても明らかなので、それぞれ分かれて中に入ると広い脱衣所があり、更にその先にはミルハが願っていた通りの大浴場にしっかりとお湯が張られて湯気が上がっている状態で存在していた。


 実は女性だけではなく男性もさっぱりしたいと言う気持ちがあるのは当然で、今すぐにでも入れる状態の風呂を前にしてこれ以上調査をするよりも早く入りたいと言う気持ちが大きくなっていた為、全員揃って湯船に入る。


 この集落から出た事がない者が殆どなのだが、王都の情報を伝え聞いている物もいるために最低限体の汚れを落としてから湯に入る知識を教えられ、各自が喜々としてその作業を行った後には彼方此方から「ふぃ~」だの「あぁ~」だのと言った力が抜ける声が聞こえてきた。


 何故か相当疲れも取れてさっぱりした集落の人々は誰ともなくこの建屋に入ってすぐの場所、椅子やらソファーやらが多数置いてある場所で寛ぎ始める。


「万屋・・・か。これだけの事が出来るのだから、正に人知を超えた存在なのだろうな」


 この呟きに異を唱える者は誰一人としておらずに同意しており、この様子を直接視認しているジョーカーの一体は非常に満足げだ。


 その日の夕方・・・


「ミルハさん、お世話になりました。自分は旅を続けようと思います。万屋の噂が事実であった事を他の町や村にも伝える楽しみも出来ました。短い時間でしたけれど、本当に有難うございました」


「もう行くのかい?そろそろ暗くなるから、遠慮なんかしないで泊って行けば良いと思うけどねぇ?危ないよ?」


「大丈夫です。自慢できる話しではありませんが、こう見えて相当長い期間森をさまよっていましたから。それに比べれば街道を移動するのは危険でも何でもありません。っと、そうでした!万屋の声は私にも聞こえましたが、おもてなしは重要ですよ?ミルハさん達であれば大丈夫だとは思いますが、そこだけは注意した方が良いと思います。あれだけの建屋を即作れると言う事は無くす事も可能だと言う事ですからね」


「!?そうだね。確かに願いを叶えてくれた時にもてなしについては念を押されていたねぇ。あれだけ良い風呂を経験してしまうと、無くなったと考えるだけでも震えそうだねぇ。忠告、肝に銘じておくよ」


 未だ風呂でゆっくりしている人が多数いる中で、日も落ち始めている状態で出立するジョーカーをしっかりと見送りに来てくれるミルハ。


「では、お世話になりました」


「気を付けるんだよ!」


 こうしてジョーカーの一体は集落から出て行き、ミルハが最後まで見送ってくれる視線が切れたと確認した瞬間にカードに戻る。


「ダイヤキング殿、作戦は完璧に遂行されたと見て良いのではないでしょうか?」


「流石はジョーカー殿!文句の付け所がない。残念ながら民には建屋の入り口にある万屋の看板は目に入らなかった事だけは惜しまれるが、やがてしっかりと認知して感激してくれるはずである!フハハハハ、これで我が主の裏の顔もこの辺境とも言える集落にすら広がったのだ。素晴らしい、素晴らしすぎる!!」


 カードの面々は今回の作戦とも言えない力技であり得ない設備を勝手に集落に作った事で、ロイを裏から称えるべく組織、万屋の名声が広がったと確信して盛り上がる。


 一方のロイはリーンがいるので疲れた際に良く利用しているカード部隊に運んでもらう事が出来ずに、移動速度は今までとは比べようもない程遅くなっているのだが・・・そこは陰に潜っているスペードキングが気を遣い、陰からロイを直接的にサポートする事で体重を支え、さり気なく追い風を与え、と、リーンに気が付かれないまま各種サポートをした結果、何とか日が落ちた頃に集落に到着する。


 本来はしっかりとした街道を進んでいたので集落に辿り着ける事は無いはずなのだが、既にジョーカー達によって草に覆われていたこの集落に続く街道は整備されており、この街道の方が立派に見えたので迷わずこちらを選択したリーンとロイ。


 スペードキングとしても仮に異なった方向に進んだ場合はロイに連絡するつもりでいたのだが、その心配は杞憂であった為に安堵していた。


 そして到着した二人が見たモノは・・・集落に一つだけ不思議な存在感を醸し出しつつ、何故か“万屋より”と書かれている看板がライトアップされている大きな建屋だった。


 まさかこのような事が起きているとはわからないロイは、頭痛が抑えられなかった。


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