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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(5)初の行動

 リーンと共に行動すると告げるのだが敢えて自らの経験の為と言う姿勢を貫いているロイなので、それならばと許可が出た。


「ロイ君!一緒に出掛けられるなんてお姉ちゃん嬉しいな!」


 王都から少し出た先の平原に溜まってしまったゴミ掃除の依頼を受けたリーンに同行しているロイは、本当に嬉しそうに話しかけてくれるリーンに申し訳ない気持ちになりながらも実情は知らない事になっているのでグッと堪えて笑顔で対応する。


「実は掃除が得意だから、少しは俺にも掃除をさせてくれる?」


「え?本当に??じゃあ、一緒にお掃除しようか?」


 リーンはロイと共に行動できることが嬉しく、ロイはリーンが自らの申し出を受け入れてくれた事に安堵しながら目的地に到着する。


「うわっ、予想以上に汚いわね」


 通常であればこの平原は寝転んでゆっくりできるほどに綺麗な場所なのだが、リーンがギルドの依頼を受けて小銭を稼いでいると知っている王家からの嫌がらせであり得ない量の生活ゴミが散乱している。


「それで、この袋に入れるんだっけ?」


 リーンの能力である収納を使えば比較的楽に作業できるのだが、敢えてゴミを入れる袋を指定されている以上は手作業で袋にゴミを詰めなくてはならない。


 その後に袋を収納する事は問題ないのだが、そこに至る迄は全て手作業になるので非常に時間がかかるし体力も必要になる。


「これもあの国王の手が回っているのか・・・」


 ボソッと呟きながらもリーンから半ば強引に袋を取り、作業を始めているロイ。


「ロイ君。無理しないでね?お姉ちゃんが受けた依頼だから、少しでも疲れたら休むんだよ?」


 何処までも優しい本当の家族になっている人物の言葉を聞き、本来血の繋がっている家族に対する黒い感情が出てきてしまう。


「大丈夫だよ。ありがとう、姉ちゃん!!」


 こうして作業を行うのだが、ゴミは広範囲に散らばっているので二人が集中して作業を行っていると互いに距離が開いてしまう。


「ふぅ、次の袋・・・か」


 ロイは何度目になるのか分からないが、袋が一杯になったので次の袋を貰う為にリーンを探すと・・・少し遠い場所で倒れている姿を見て一気に血の気が引く。


 袋を放り投げて慌ててリーンの元に走り、激しく揺すりたい気持ちを必死に抑え込んで慎重に様子を確認する。


「こ、呼吸は・・・良し。脈は・・・良し」


 必死に心を落ち着かせながら過去に王族として得た知識を頼りにリーンの無事を祈って行動しているのだが、その途中でリーンが痙攣してしまう。


 王都に戻って助けを呼ぼうにも時間が必要であり、周囲を見回しても人は見えずに焦り始める。


「姉ちゃん!姉ちゃん!!」


 リーンの上体を起こして抱きしめ、冷静になれずに大声で叫びながら泣き出してしまう。


 どう考えても過労、そして栄養不足が原因であり、自分のせいで・・・自分の元家族のせいでこうなってしまった事実がロイに襲い掛かり冷静さを完全に失っていた。


 いくら騒いでも周囲に人は存在しないので助けが来るわけも無く、回復薬も持っていないロイでは現状が改善できずに寧ろ悪化する。


 大声で叫んでしまった事で、余計な存在を呼び寄せてしまったのだ。


 もとよりこの場所にはゴミなど散乱している訳も無い環境だったのだが、人為的にまかれた大量のゴミが怪しい匂いを発して周囲の魔獣の意識を少なからず集めていた所にロイの叫び声が聞こえたのだから、興味をそそられて数体がこの場に来ている。


 幸運だったのは、興味本位で来ているだけで食料取得や外敵排除の意図が無かった為に命の危険はなさそうな所だろうか。


 この場の様子を見に来ている獣、魔獣としては、どう考えても脅威とならない存在がいるので警戒態勢にもならずに、気配も消す必要が無いと思いガサガサと音を立ててロイ達に近接する。


 その体躯が大きいので移動時の音も大きい為に嫌でも何かが近接している事に気が付いたロイは、これも王族時代の知識から猶予はないと涙も拭かずにリーンを抱えて近接してくる存在を刺激しない様に走らずに・・・しかしなるべく早くこの場から離脱できるように移動する。


 仮にこの場で走っていたら、魔獣側に攻撃する意図がなかったとしても本能が刺激されて容赦なく襲われていただろう。


 過剰な体力がある訳でもなく特殊な能力・・・は未だ発動のそぶりを見せない収納の能力だけなので、震え始めている足を動かしながら王都に入りハイス子爵邸に到着するロイ。


「お父さん、お母さん、兄ちゃん!姉ちゃんが・・・姉ちゃんが!!」


 使用人もロイの必死な声を聞いてすぐに集まり、リーンは部屋に移される。


「ロイ・・・良くやってくれた。今日は平原での依頼と聞いているが、そこで何かあったのだろう?そんな所からリーンを抱えてきてくれた。合っているか?」


「お父さん・・・全部俺のせいです。俺、知っているんです。俺のせいでこの家が苦しんでいる事を・・・」


 まさかロイに現状を把握されているとは思っていなかったので、子爵一家は息をのむ。


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