(53)状況を聞いたダイヤキング(2)
大陸の伝承と言う形にしてアザヨ町の状況報告を行う事で心労無くロイがどのような判断を行うのか伺い知る事が出来ると思いこのような行動に出ていたダイヤキングは、いよいよ核心的な部分に移行する。
「そこで伝承では神たるお方、神以上のお方に対して無礼を働いたその人物に対して助力をするのが正しいのか問いかけるような形で終わっております。我が主はその後について、どの様にお考えになりますでしょうか?」
普通に考えれば伝承でも何でもない話しをしているだけになっているのだが、ダイヤキングは至極真面目に話しをしているので漸く真意に気が付いたロイ。
彼等カードの部隊がロイの事を説明する時には無駄に神だのなんだの言って来ることは今迄の経験から明らかであり、今回の伝承とは言えない説明の中でも自分について述べていた部分があった。
そこを考慮すると移動中・・・と言うよりも休憩中ハートエースにマッサージをしてもらっている時に絡まれていたような気がするのでその事を言っているのだろうと判断しており、どう考えても今の話しは実話、正に現在進行形で起こっている事なのだと理解した。
何故無駄に伝承と言いながら取り繕うように説明したのかまでは理解する事が出来ないロイだが、そこについては突っ込まずに聞かれた事に対して真剣に考えて回答する。
「その少女の事。それに、その子の為に動こうとしている人物は悪人ではないと考えると、助けられるのであれば助けるのが正しいと思うけど?繰り返しになるけど悪人でないのであれば優しい人だと思うから、その後も出来る範囲で助力してあげても良いのかもしれないね」
「おぉ、流石は我が主!懐が深い!!」
「そ、そうかな?ありがとう?」
カード部隊の面々はロイが何を言っても称賛するのだが、やはりここまで手放しで称賛してくることに慣れていないロイとしては不思議な返し、思わず疑問形になる様な返しをしてしまう。
「では、これにて大陸の伝承についてのお話しは終了とさせて頂きます。また次回、良い話しを仕入れましたら第二回目を開催させて頂きます」
この期に及んでダイヤキングとしては自分の作戦通りにロイに一切の心労を与えずにジンタ町の対応について判断を仰ぐことが出来たと喜んでおり、ロイは状況が良い方向になるだろうと軽い気持ちで就寝する。
もう何度目になるのか分からないのだがロイは同じような失敗を繰り返してしまっている事には気が付いておらず、今はカードの中でダイヤキングを筆頭にアザヨ町についての対応会議が行われている。
「神である我が主が慈愛の心をもってあの男を許された。更に!その後の男の処遇についても、正に神と言える程の懐の深さを示されたのだ!!流石は我が主だ!!」
ロイは今回話題になっている人物がどこで何をしている人物なのか知る由も無く、あくまで大陸に伝わる伝承と言う体で話しを聞いていたのだが、実話であると理解しているのでその後の対応もできる範囲で助力する様に言った。言ってしまった。
この優しすぎる性格の為に幾度となく同じような状況に陥り更にはダイヤキングを筆頭にカード部隊が暴走しているのだが、結果的には悪い方向には向かっていないのでそこまで判断を間違ってはいないはずだと半ば強制的に思う事で得体のしれない不安に対して強制的に蓋をして生活している。
「我が至高の主であれば、我らの考え等全てお見通しの上で発言されていらっしゃることは明白!つまり・・・アザヨ町で万屋として対応する様に仰っているのだ!」
スヤスヤと寝息を立てているロイの意識の外で、全くそのような事は思っていないにも拘わらず異常に盛り上がっているカード状態の者達はダイヤキングが音頭をとって作戦を立案するとアザヨ町で活動している部隊に指示を出す。
「フハハハハ、これでまた万屋の伝説が一つ生まれるのだ!」
今回の依頼は猫を探すと言う依頼なので一般的に認識されている伝説や偉業には程遠いが、ダイヤキングを始めとしたカードの部隊達にとってはその内容は重要ではなく如何にロイの地位や名声が上がるのかに意識が向いており、今回の作戦もそのための一つの階段であると認識している。
事実、彼等にとってみれば古龍の討伐であろうが猫の探索であろうが労力としては大差ないと言う認識なので当然の結果とも言える。
全くこのような状況を知らないアザヨ町のジルとバリアドは、それは必死に少女からの依頼を達成すべく毎日のように猫を探しているが、ダイヤキングが公言した通りに今の所手がかりすらつかめずにいる。
どこにいるのかと言うと・・・丁度通りがかった馬車に飛び乗って降りられなくなり、実はアザヨ町から離れた場所で停泊した際に脱出すると同時に森に迷い込んでしまっていた。
既にカード部隊の庇護下に入っているので怪我はないのだが、通常であればとっくに野生の獣やら魔獣やらの餌になっていただろう。
「爺、何故ここまで何も情報がないのだ」
「ひょっとしたら、最悪の事態もあるのかもしれません」
ここまで見つからなければ死亡している可能性や見つからない可能性について示唆されるのは当然だが、熱い男のジルは少女の為にそのような事を認める訳にはいかない。
「そんな事は許されない!俺はあの少女と約束したのだぞ?何を置いても探し出して見せる!コレは絶対だ!!」
「・・・わかりました。爺もお供しますが、ここまで町中を探索しても良い情報を得ていないので町の外に向かう必要も有ろうかと。なれば、ある程度の準備が必要です」
町の外は大なり小なり危険が伴うのである程度の準備が必要なのは共通認識の為に、町中で猫を探し回っている際に冒険者から聞いていた情報、一気に物資が揃うと言うハートエースにそっくりの人材がいたシンロイに向かう二人。
この動きを掴んでいるアザヨ町の部隊の面々は、やっと状況が動き出すと安堵して今か今かとジルとバリアドの到着を待っていた。
「間もなくですね。ご主人様の為に!」




